6話
暫く進むと、たくさんの椅子が規則正しく並んだ広い場所に着いた。
「ここ、どこかなぁ?」
景兎が辺りを見回して呟く。ペンライト照らされた先にカウンターがあり『受付』と書いてあるプレートが置かれている。
「きゃあああああ!」
急に凛々が甲高い悲鳴をあげる。驚いて一斉に彼女を見ると、椅子の下を指差し身体を震わせていた。
そこには、椅子の下に潜み此方を見ているなにか。
「やっとお出ましか!」
景兎がペロッと舌舐めずりをし、銃を構える。すると、カサカサカサと潜んでいた何かが這うように姿を現した。
四つん這いになり、首を左右に振り乱しながらでてくる大きな赤黒い塊。そのグロテスクな姿に皆、鳥肌が立つ。
パーンーー。
景兎が弾を放つと、見事に頭を貫通した。血飛沫が飛び、ゾンビはグチャと嫌な音を立てて床に倒れ込む。
「むふ、さすが私!」
得意げに銃をクルクルと回しながら笑顔で言う景兎。
「うわ、気持ち悪りぃな……」
薫は未だ床に倒れているゾンビを見つめ顔を歪めると、憂己がため息を尽きながら言った。
「それにしてもリアルに造り過ぎ、あーあ銃にすれば良かった。服、血塗れになるでしょ絶対……」
「こんなのがたくさん出てくるなんて凛々、耐えられない……」
凛々がその場に蹲ると、憂己は頭を撫でながら優しく言う。
「よしよし。僕も服汚れるの嫌だし、一緒に外で待つ?」
凛々は激しく頷くと、安堵した表情で立ち上がり、憂己は「二人で楽しんで」と薫の肩を叩いた。
「かおると二人とか嫌だぁー」
「それは良かった。じゃあ俺も憂己と一緒に出るから景兎ちゃんはゆっくり楽しんで来なさい」
不満そうな顔で愚痴を零す景兎に、薫は意地悪く言う。彼女は少し泣きそうな顔をした後、腕を組み強い口調で言った。
「どうしてもって言うなら、一緒に周ってあげてもいいよ?」
「へぇー俺はどっちかって言うともう出たいんだけどなぁ」
薫の返答に慌てて「嫌だ!」と腕を掴む景兎。
ーー結局、憂己達は早々と『脱出口』へ引き返す。
「ちょっと凛々ちゃん。歩き辛い」
腕に強く抱き着き怖がる凛々に憂己は呆れながら廊下を歩き、扉まで着くとドアノブを捻ったーー。
「ねぇ、開かないんだけど……」
「にぃ! 怖がらせないで!」
凛々は憂己の手を跳ね除けると、ノブを引く。ガチャガチャと何度も何度も開けようとするがびくともしない 。
「なんで、なんで開かないの?」
「ここはダミーかもしれないね……趣味悪いなぁ」
泣きそうな凛々を撫でながら憂己は呟く。凛々は扉を叩き「出して下さい!」と声を上げるも人が来る気配もない。
「とりあえず次の出口探そう?ね?」
しょうがなく諦め、薫達に合流しようと再び暗い廊下を進む。突然、進行方向から誰かが走ってくる音が聞こえて凛々と憂己は身構える。
それは、真っ青な顔で走ってくる景兎と薫だった。