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RE:quiem  作者: 愛咲りょう
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1話

「きゃあぁ!ラッピーが居るよぉ!ミミィちゃんもー!」


景兎は入場ゲートを潜ると真っ先にウサギの着ぐるみの元へ駆け出し、ぴょんと飛び付く。

「ラッピー!会いたかったよぉ!」


大きな着ぐるみに抱きつき頬擦りをして幸せそうな景兎に薫は苦笑する。


「体だけじゃなく、中身も成長してないんだな……」


「ラッピーと親子みたいだねー」


憂己の〝親子みたい〟という言葉に薫は吹き出した。

ラッピーと戯れるのに飽きたのか、景兎は小走りで薫達の元に帰ってくる。


「凛々ー!あのラッピー臭かったぁー!」


「当たり前でしょ?あの中身おじさんだもの、どうせ着ぐるみも洗ってないわ」


凛々が園内マップを広げながら涼しい顔で言う。


「凛々ちゃんのアホ!ラッピーはきっとお風呂に入れて貰えてないだけだもん!」


「はいはい、頭の弱い子は放っておいてアレ乗ろ!」


凛々が指をぴんっと指した方を見ると、ドリームランドの目玉の一つのジェットコースター。

凛々はこう見えて絶叫物に目がない。


「むりむりむりー」


景兎は薫の腕にしがみ付いて嫌々と勢い良く首を振る。


「無理なんて言わせません!乗らないなら景兎、絶交!」


凛々はふんっとそっぽを向き、景兎は泣きそうになりながら救いを求めるように薫を見つめている。


「まぁ、しょうがないよな?」


景兎に諦めろと頭を撫でると、ガブリと腕に噛みつかれた。


「薫の薄情者!租チン野郎!」


大声で景兎に叫ばれて周りの視線が痛い。


「あはは、可哀想にねぇ」


憂己が憐れみを込めて薫の肩をポンポンと叩く。

四人でジェットコースターの乗り場に向かうと、長い列が出来ていた。


「只今四十五分待ちでーす」


係りのお姉さんが笑顔で列を整えている。


「ねぇねぇ、こんなに並んでるよ?並ぶの嫌だよね?辞めよ?」


泣きそうな顔で凛々のスカートを引っ張る景兎を無視して目を輝かせながら言う。


「このジェットコースター日本一怖いって言われてるの!高さも速さも凄いんだから!」


頭上から風を裂いて走るアトラクションの轟音と共に聞こえる絶叫。

凛々の言葉通り下から見上げても凄い迫力がある。


「ふぇぇ」


景兎が小刻みに小柄な身体を震わせて今にも泣きそうだ。


ふと、凛々を見ると彼女の身体も震えているように見える。

やっぱり女の子だ。絶叫物が好きと言ってもいざ目の当たりにすると流石に怖いらしい。


「にぃ!凛々、久々に興奮してる!試合以来だわ!」


「凛々さん?少し落ち着こう、気持ちは分かるけどね」


ただの薫の思い込みだった様だ。

興奮の余り少し落ち着きのない凛々を憂己が呆れた顔で宥める。


「凛々の気が変わりますよーに、故障で運転停止になりますよーに……」


真っ青な顔で、ブツブツと念仏を唱える様に繰り返し呟く景兎。


気付けばあっと言う間に、自分達の順番だ。

係りのお姉さんが笑顔で出迎えてくれる。


「かおるぅ……漏らしたらパンツ買ってきてね……」


安全バーでしっかりと固定されて景兎は諦めたのか、か細い声で呟く。


「では発進しまーす」


いってらっしゃい、と言う声と共に車両がゆっくりと動き出す。


「死ぬ……死んだら凛々にとり憑いて呪ってやるんだから!」


景兎は前の座席ではしゃいでいる兄妹を睨み付けた。

ゆっくりと発進した車両はガタガタと嫌な音を立てて、急なレールを登り始める。


「結構、登るんだな……」


薫は周りを見回すと、地上に居る人達が米粒くらいのサイズでギョッとする。

ガタン、と一瞬停止した音と共に一気に急降下。


「いやあぁああぁあ」


景兎の恐怖で言葉にならない叫び。


「きゃあああああ」


凛々の歓喜の声。


猛スピードで急上昇、急降下を何度か繰り返した後、停止した。


「うげぇ気持ち悪」


「ふぇぇ、ちょっと漏れたぁ」


やっとのことで外のベンチに辿り着き、腰掛けて頭を抱える薫と、薫にもたれ掛かり号泣している景兎。


「ヘタレ達は放って置いて……にぃ!もう一回!」と、凛々達兄妹は、目を輝かせながら行ってしまった。

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