プロローグ
「かーおーるー! いつまで寝てるの?」
目を開けると、神流景兎が呆れた様子で見ている。
「こんな時間まで寝てるなんて、信じらんない! マックが激おこだったよ?」
マックとは美浪薫達の担任だ。まだ若いのに髪の毛が前髪からM型に衰退して居る事から生徒に〝マック〟と言う愛称で呼ばれている。
薫が『いま何時だ?』と壁に掛かっている時計を見ると短い針が十二を差している。薫は「ちょっと寝過ぎたな……」と苦笑いする。
「一時間目からずーっと寝てるし、何度起こしても起きないんだもん。とうとう逝ったのかと思ったよぉ」
景兎が悪戯っぽい笑顔で笑いながら「早くお昼ー」と薫の腕を引っ張る。
薫は鞄に入っている弁当箱を持つと景兎と共に教室を出る。
「遅いー!」
屋上へ着くと、篠宮憂己と篠宮凛々が待っていた。
凛々と憂己は双子の兄妹だ。薫と景兎とは幼稚園からの幼馴染だ。四人はいつも一緒。お昼は屋上で食べるのが日課だ。
「あ、薫!」
景兎がタコさんウィンナーをモグモグ食べながら話す。
「おいおい、タコさん食い終わってからにしろよ」
「ゾンビハザードの新作! 昨日届いたんだよねぇー」
景兎が嬉しそうに言う。『ゾンビハザード』とは景兎が大好きなシューティングアクションゲームの事だ。
「帰り景兎ん家にやりに来てよぉ」
薫に拒否権がないのは知っている。
毎回新作が出るたびに付き合わされており「嫌だ」と言った所で景兎に喚かれ行かざるを得ないのは学習済みだ。
凛々や憂己を道連れにしようと、薫は二人を見る。
「僕たち今日部活行くから」
憂己は満面の笑みで言い、凛々も「残念やわ〜」とワザとらしく肩を落とす。
二人は剣道部で、揃って凄い腕前。一度、兄妹喧嘩をして「にぃが居る部活なんてクソ喰らえ」と凛々が辞めそうになった時には顧問が泣きながら必死に引き止める程だ。
薫は何時もと変わらない四人との昼飯、気怠い授業を終え、景兎と帰路に着く。
「んふふ〜ん♪」
景兎は鼻歌を歌いながら楽しそうに薫の横を歩く。
「今作のやばいらしーよ?」
「はいはい」
「満足するまで付き合って貰うからね?」
「はいはい」
薫は重い足取りで景兎の部屋に入る。景兎の部屋に二人きり。テンションが上がる筈もなく、テレビの前にため息混じりに腰を降ろす。
「くっそ! 薫もっとシャキッとしなさいよ!」
「援護も出来ないなんて本当ダメ男!」
「○△※□……!!!!」
景兎は数々の罵声を浴びせ、しまいには発狂し薫からコントローラを取り上げ壁に投げ付ける。
「薫いい加減にして! もう一人の方がマシ!」
何時もの事だ。薫は『やれやれ』と横になると、ぼーっと画面を見つめる。
画面に現れる大量のゾンビ達。それを華麗なコントローラ捌きで次々と頭を撃ち抜き倒す。たまに反撃されると「苦しんで死ぬがいい!」とゾンビの股間を攻撃しつつ進む夢中な景兎。
RPGではフィールドで迷子になり投げ出す景兎だが、何故かシューティングゲームとなると才能を発揮し腕前はかなりのものだ。
駅前のゲームセンターに設置してあるシューティングゲームも景兎が断トツのスコアでトップに君臨している。
薫もゲームは得意な方でそこそこの腕前なのだが、景兎には全く歯が立たない。邪魔者扱いだ。
『そろそろ帰りたいなぁ』と、ため息を吐く。すると、突然、携帯電話が鳴った。
「もしもし……」
「あ、薫くん?僕だよ僕」
「憂己、どうしたんだよ?」
「凛々ちゃんと明日どこか出かけようって話してて……薫くん達も行ける?」
「俺は予定ないし大丈夫だけど。あ、景兎に聞いてみる」
薫は未だにゾンビに夢中な景兎に声を掛ける。
「憂己が明日、どこか出かけようだって」
「行く行く行く! ドリームランドがいーな」
景兎はチラリと此方を振り返りながら大声で言うと、すぐに画面に視線を戻す。
「憂己? 景兎も行くって」
「うん、ドリームランド良いね」
景兎の案が通ったらしく、ドリームランドに決定する。
ドリームランドとは隣町にある遊園地。ファンタジーな独特な世界観で規模もかなり大きい。全国的にも有名で年中混み合っている。
「時間決まったらまた連絡するよ」
ーー四人の何時もと違う日常はここから始まった。
文章力が無く、読みずらいにも関わらず読んで頂きありがとうございました。
〝完結〟させるのが目標です!!
少しずつ頑張ります。