生憎それは認めません
たくさんの方に読んでいただいて、大変恐縮です。
下手な表現力と、稚拙な文章力ですが、此れからも宜しくお願い致しますm(__)m
「ちょっと待て。おまえの言う神魔とやらも、俺自身のことも、もう少し詳しい説明を求める」
言っていることに頭が追いつかず、サキに問いかけた。
しかし、彼はそれをさらりと流し、逆に問いかけてきた。
「私は“おまえ”ではありません。先ほど、サキと呼んでくださるように申し上げたと思いますが。それに、私の質問に答えていただいていません。私にばかり質問をして、ご自分はお答えくださらないのですか」
淡々と、しかしキッパリと思いがけない反撃を受け、暁は言葉に詰まった。思わず視線を彷徨わせ
(……俺は、何を聞かれたのだったか)
聞かれたことを忘れてしまった暁は、懸命に思い出そうと頭をひねったが、見かねたサキが溜め息混じりで言った。
「……名前、前世の名前を教えていただけませんかと申し上げたはずですが」
「……あぁ、そういえばそうだったな」
確かにそう聞かれたといった顔をした暁を、サキは適当に流して答えを促した。
「俺は暁。神城暁という名前だったんだ」
いつもならなぜ言わなければいけないのかと食ってかかっていたかもしれないが、なんとなくサキにはそんな気持ちがおきなかった。
答えた暁に、サキはその無表情のなかに、微かに驚きの表情を混ぜた。
「……カミシロアキラ、ですか?随分と珍しい、聞いたことのない不思議な発音ですね」
そう言いつつサキは姿勢を正し、折り目正しく礼をした。
「ロキ様、もといアキラ様。私、サキヴェルシアは、この命に代えても貴方様を守り、一生を捧げます。そして、アキラ様に永遠の忠誠を」
そう言うサキの言葉からは、ルビアスと同じ強い力を感じ、同時に、これが言霊であること直感で悟った。これのために名を聞いたのだということも………しかし
「……悪いが、その言葉は受け取れない」
びくりと微かにサキの肩が揺れた。ゆっくりとあげた顔は血の気が引いていて、先ほどまでの無表情が嘘だったかのように、とても頼りない顔をしていた。
その言葉を、暁が喜んで受け入れるとでも思っていたのだろうか。
「……なぜ、ですか………」
その言葉は掠れていて、やっとのことで絞り出した様な声だった。
それが腑に落ちず、暁は当然だといわんばかりに、じっとサキを見つめていた。
「アキラ、様………」
そう弱々しい声でサキが呼ぶと、暁は目をつり上げながらサキに言った。
「俺はおまえに……サキに、命に代えても守って欲しいなどと思ってはいない。おまえは、自分の命をなんだと思っている」
「アキラ、様」
「自分の命の簡単に投げ出せるようなものは、俺にはいらない。今後、俺には近づくな。関わるな。自分の命を簡単に捨てられるものにかける情など、生憎と俺は持ち合わせてはいない」
はっとサキが目を見開く。それにお構いなしに暁は話を続ける。
「俺は、そんなことを一切求めていない。俺に一生なんぞ捧げる必要なんてないし、忠誠も不要だ」
と不貞腐れた顔で、そう言った。
予想外だった。そんなことを言われるなど、思ってもみなかった。そんな顔をするサキに、なぜそのような思考になるのか意味がわからないと暁は唸る。
「……では、どうすればいいのですか」
サキが、覇気のない、弱々しい声でそう言った。
「私たちは、主のためにあれと……そうして育ってきたのです。なのに」
彼らのように、神と魔の者の間に生まれた狭間の子は生まれたときから力の強さが決まっていた。そして、弱い者は棄てられ強いものは力の使い方を覚えさせられて上位の神や魔の者に従者という名の奴隷として献上される。もしくは、自分で主を探すのだ。
神魔は、魔の者の血を引くため神に蔑まれ、神の血を引くため魔の者に疎まれる。ゆえに、そうして生きていくしかほかに道がない。異端の彼らを受け入れてくれる者も、場所も、この世には存在しないのだ。
そしてサキは暁を少々試し、主として認めた。だから真名も教えたし、忠誠を誓おうとした。
それなのに━━━━
「主たる貴方様に要らないと言われてしまえば、私はこれからどうすればいいのですか………」
迷子になったような、寄る辺のない子供のような顔をして、サキは暁に縋るような目を向けていた。
読んでいただいて、本当にありがとうございましたm(__)m