納得いかずモヤモヤと
申し訳ありません。ただいま、迷走しております。
光鳥が暁の火焔によって消滅したあと、暁はティルカのもとへ行き、頬を軽く叩いた。
「ティルカ……おいティルカ。さっさと起きろ。こっちは疲れているんだ。まったく、あまり世話を焼かすな」
極度に疲れているからだろうか、口調が少し荒い。
「ちょっと待ったぁぁぁ!」
「……なんだ」
ティルカを起こそうとしていた暁は、アカネの待ったに面倒くさそうに応じて振り返った。
アカネは暁の両肩をがっしりと掴み、がくがくと揺さぶる。
「なんだ、じゃありませんて!なんですかいまのは!あんた火焔の使い手なんですよね!?なのに、なんであんたの焔がものを凍らかせるんですか!?焔が燃やすんじゃなくて凍らかせるところなんて、いままで見たこともありませんし、聞いたこともないですよ!ちょっと説明してください!」
動揺しまくりのアカネは、暁が嫌そうな顔をするのにも構わず問い詰めた。しかし、暁が面倒くさそうに
「……知らん」
と言った。アカネがしかめっ面で言い募る。
「知らんてなんだ!?たったいま、凍らかせたでしょうが!?」
「そうなのか」
「そうなのかって……」
「俺からは見えなかったし、そんなの知らん」
「……はぁぁ」
暁とのやり取りでひとりで大騒ぎする自分が馬鹿らしくなってきたアカネは、がっくりと肩を落としてサキを見る。暁の側近であるサキならば何か知っているかもしれないと思い、サキに希望を持つことにした。
アカネが押し黙ると、暁は再びティルカを起こしにかかる。
「ティルカ、起きろ……寝太りするぞ」
ぼそっと最後に言葉を付け足す。あまり効果は得られないと思っていたが、暁のデリカシーの欠片もない言葉に、ティルカはびくりと反応して飛び起きた。暁が僅かに感心する。
「あ、起きた。次からはこれで起こすか」
「へえっ?あ、アキラさん。ど、どうして私、こんなところで寝転がって……というかアキラさん、さっき何か言いましたか?」
「いや、何も」
遠回しに暁の発言に怒っているのかと思ったが、そうではないらしい。首を傾げて、不思議そうな顔をして暁を見ていた。その様子を見て、言うのはやめようと思った。
「それよりひとつ、話がある」
「え……な、なんですか。改まって」
わりかし真面目な顔をして暁が言った。ティルカがおどおどしながら聞くと、暁はしかつめらしい顔をして言った。
「さっき、お前から溢れでた光から形作られた鳳凰みたいな鳥と対戦したんだが」
「ほうおう?」
「そこはいい。言いたいことはひとつ……神力切れだ」
「……はい?」
「……あまり詳しくは覚えていないが、ロキに身体を乗っ取られていた際に何かに大量の力を消費させていた。それに続いて戦闘までしたから、神力が底をついてしまったようだ。ギリギリ体力は残っているが」
真面目な顔して何を言うのかと思えば、神力切れだという。自分のことについてあれこれ詮索されると思っていたティルカは、少々肩すかしをくらった気分だった。
「そう、なんですか……私、てっきり自分のことについて聞かれるかと思って……」
「大まかなことはそこのアカネに聞いた。前に、ユリナディスにも詳しいことはおまえに聞けと言われたが、俺は無理におまえから聞き出すつもりはない。おまえが話したくなったら話せばいい」
「……はい」
淡々とした口調で、しかし柔らかな声音でそう言った暁は、ティルカの頭を軽くぽんぽんと叩いた。思わずティルカの顔が赤くなる。
そんなティルカの様子には気づかず、暁はサキも起こそうとしてサキに近づいた。しかし
「……申し訳ありません。私は既に起きております」
気まずげに身体を起こしたサキは、顔を俯かせながら答えた。暁はただでさえ鋭い瞳を更に鋭くさせてサキを見る。ティルカは顔を強ばらせ、アカネは興味なさげにサキを見た。
「……いつから起きていた」
「アキラ様が、闘っておられるときに。身体を地面に強く打ち付けられたのを感じて、目を覚ましました」
「あ、そういえば重かったんで、ポイってしたんでした。すみませんねぇ~痛かったですか?」
しょぼしょぼと答えるサキに、アカネがあっけからんと言い、まったく悪びれた様子もなく謝った。サキは、アカネに、誰?といった視線を向けたが、表情を引き締めていいえと答えた。
「なぜ、狸寝入りをしていた」
「たぬきねいり?」
「……寝たふりをしていた」
ティルカが訝しげな顔をして言うと、暁は軽く咳払いをして言い直した。サキは、暁の言葉に益々顔を俯かせて言った。
「……私は、アキラ様に仕えると決めたつもりでいました。ですが、ロキに言われてアキラ様に不満を抱いていた自分。そして、自分のなかにあるものに気がついたのです」
サキの言葉に何か言おうとした暁を遮るように、それだけではありません、と悔いるように言った。そして顔をあげ、暁を真っ直ぐな瞳で見ながら言った。
「きっと、私は貴方を害する界となる。貴方を狂わす災禍となる。私は今回のことで、自分を制御することが叶わないと感じました。ですから、アキラ様。もし私のことを少しでも信頼してくださっていたときがあったなら、どうか━━━━」
サキは両手を膝の上で握り締め、決意固くこう紡いだ。
「どうか━━━━私を、殺してはくださいませんか」




