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人生そんなに甘くない

今回ものすごく短いです。





「……なんか、長かったような呆気なかったような……といった微妙な感じですねぇ」



「……そう、だな」




ある意味、簡単に片付いたな、と思ったふたりだった。がしかし、そうは問屋が卸さなかった。




「っ、あああああああああああああ!」



「何!?」




突然、ティルカの叫び声が辺りに響き渡った。何事かと暁とアカネが振り向くと、洪水のような光を全身から流出しているティルカの姿があった。その顔は、苦悶で歪んでいる。



アカネが、チッと舌打ちをした。




「世の中そう甘くない、ってことですかねえ。まったく」



「おい、まさかとは思うが、ティルカは……」



「おまえじゃないでーす、アカネでーす。と、それはさておき。当たりですよ、力の暴走です。恐らく、使い慣れていないんでしょうね。このまま放っておけば、姫さんの身体は木っ端微塵。破裂します」




忌々しげな顔をしながらも、飄々とした口調で返す。その口調に微妙な顔になりながらも、暁はアカネの重い言葉にひやりとした。




(……破裂、だと?そんなこと、させるものか!)




血が出るほど強く唇を噛み締める暁を一瞥すると、アカネは胸が空になるくらい深く溜め息をついた。




「はぁ~、揃いも揃って実直というかなんというか。取り敢えず、不完全な力の暴走を止めるには、その元となる姫さんを気絶させるのが一番……!?」




アカネが言葉を呑む。愕然とした様子で空を見上げるアカネに続いて暁も空を見上げると、空一面を黒い靄のようなものが覆っているのが見てとれた。



暁が警戒するような顔をすると、アカネが驚愕した様子でうわ言のように言った。




「……あれは、呪いか?姫さんの光によって、この世界に蔓延していた呪いを地から空へと押し出したと?だが、あの靄からは大した力を感じない。あの程度の呪いに、妖精どもが冒されるわけがない。一体どうなっている?」




神妙な顔つきで顎に手を当てて考え込むアカネに、暁がどういうことかと問いかける。アカネは、そういえば感じないんでしたっけ、とひとを食ったような物言いで応対した。暁のこめかみが僅かに動く。




「オレは少々特殊なのでね。ああいった類いのものを感知できるんですよ。ま、この力にありがたみを感じたことは一度たりともありませんがね……あ」



「……どうした」




思い出した!というような晴れやかな顔になるアカネに、暁は何だ、と胡乱気な顔をした。




「確か、アヴィス族の光には闇を浄化する力もあったはずです。このままにしておけば、姫さんの身体が危ないだけではなく、ユスティーアという女性も永遠に昏がりから抜け出せなくなりますよ。光と闇は一心同体。本来ならば光と同じくらいまで浄化させる闇を、姫さんの暴走した力では完全に浄化してしまうことになります。つまりそれは、無理やり己れの半身を引きちぎられるも同然ですので、現世には抜け殻のような身体が残り、昏がりには光たる魂が残されるってわけです!」



「それを早く言え━━━!」




すっきりとした様子で満面の笑みを浮かべるアカネとは逆に、暁は苛立った様子で額に青筋をたてていた。




(この男は、一体どういった神経をしてるんだ!)




心の中で叫ぶ暁を嘲笑うかのように、アカネは一瞬だけ歪んだ笑みを浮かべた。しかし、暁からはちょうど死角となっていたため、それに暁が気づくことはなかった。

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