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乞うものと乞われるもの

すみません。急いで投稿したので、文がおかしいところや誤字、脱字があると思います


ちょこちょこ修正していくと思うので、ご了承ください





「ティルカ」



「……アキラ、さん……本当に、すみませんでした」




ティルカは暁のほうを向き目をあわせると、深々と頭を下げた。震える声が、暁の耳に響く。先ほどとは違って弱々しく、後悔に満ちた声だった。




「……何がだ」



「えっ」



「言葉が抜けている。おまえは、何に対して謝罪している」




暁の苛烈で真っ直ぐな瞳がティルカの弱い心を射ぬく。鋭い瞳に気圧されたティルカは、顔面を蒼白にして身体を震わせた。



暁はそれに気づいたが、別段気遣うこともなく、更に言葉を重ねた。




「俺はおまえを責めているわけじゃない。もう少しはっきり言えと言っている。おまえは俺に何を謝罪しているんだ」



「わ、たし……アキラさんとアズールさんに対して、ひどいことを言ってしまったと凄く後悔して…申し訳なくて…だから、その、酷いことを言ってしまって、すみませんでした」



「それで」




暁は懸命に言葉を紡ぐティルカから視線を逸らさず、じっと何かを見定めような目で見つめていた。



当のティルカは、暁の意図がわからず困惑しておろおろとしている。




「え、えっと……」



「申し訳なく思った。そこまではわかった。それで、おまえは結局のところ何が言いたい。おまえが言ってくれなければ、俺には伝わらないし理解できない」




鋭い眼差しをそのままに暁がティルカにも分かりやすいようにと言葉にして言ってくれたが、ティルカには暁がどんな答えを求めているのかがわからない。"申し訳なかったと後悔している"、"すみませんでした"。これが、ティルカが暁に伝えようとしていたことだったからだ。



ティルカがか細い声で、どういう意味ですか、と恐る恐る聞くと、暁は顔色ひとつ変えずに言った。




「そのすみませんでしたというのは、おまえが俺たちに対してひどいことを言ったからというだけではないんだろう。俺が言ったことに関して当てはまることがあった。自分が間違っていたということに気づいたということだろう」



「……間違っ、た?」



「そうだ」




ティルカが声を振り絞って言うと、暁はこくりと頷いた。




「謝る、ということは、おまえの考えや行動と俺の考えもしくは言葉に生じた何かしらの齟齬を理解したということだ。だから、それは何かと言っている」




暁の言っていることは難しく、ティルカは全てを理解することはできなかった。しかし、言わなければいけないこと、暁が聞きたいと思っていることが何なのかはうっすらとわかった。ティルカはユスティーアのことを頭に浮かべ、苦しげな表情で身体を震わせながら言った。




「私は、アキラさんが妖精さんたちのことをどうして助けてあげようとは思わないんだろう、なんて酷いんだろうって思っていました。でも、アキラさんは何も考えずにそんなことを言ったわけじゃなくて、私のことを心配して言ってくださったんですよね。それなのに私は考えなしに簡単にあんなことを言って……」



「……何があった」




ティルカのただならぬ様子に、暁は鋭い美貌に険をのせて言った。ティルカは蒼白になった顔をくしゃくしゃに歪め、泣きそうになりながらユスティーアのことを話した。



ティルカの話を全て聞いた暁は、そういうことかと頷いた。そして、面倒なことになったなと唸った。



機嫌が明らかに悪くなった暁の顔をおずおずと見上げ、ティルカはしょんぼりとしながら言った。




「……本当に、すみませんでした。私のせいで、アキラさんたちにもご迷惑をおかけすることになってしまって。もっと、アキラさんやアズールさんのことも考えて行動するべきでした」



「……相手のことを考えていなかったのは、俺も同じだ。おまえの身のことを考えてああ言ったが、代わりにおまえの気持ちを慮ってやることができなかった。俺たちはおまえの麾下にあるもの。おまえが俺たちに対して命令を下すことは間違ったことではない。俺は、おまえの麾下にあることをきちんと理解できていなかった。主の意思に逆らったのだからな。だが、これだけは覚えておいてくれ。例え麾下であるとはいえ、俺たちは心のある、生きている存在ものだということを」



「は、はい。も、勿論です!」




ティルカが慌てて返事をする。しかし、焦っていたせいか、声が少しうわずっていた。



暁はその事についてはなにも触れず、妖精たちに対する心象が悪くなっているであろう主の心情に触れた。




「……ティルカ、妖精たちに対する憤りはわかる。だが、先入観に囚われることはあまり良くない。噂を含めて話というのは、その者の感情や主観が入る。だから、何事も己れ自身が見たものを信じろ。他人の主観や感情が入っていない真実そのものを見て、おまえ自身が判断しろ。決して、他人の言葉に惑わされるな」




深く重みのある言葉に、ティルカは暫し言葉を失った。しかし、暁が言いたいことを理解して、こくりと静かに頷いた。



それを見て暁は軽く頷くと、視線を前に向けた。




「……にしても、貴様、よく邪魔をしなかったな。何か、興を引くことでもあったか」




暁の言葉にティルカがはっとして暁が見ているほうへと視線を向けた。するとそこには、サキの身体で器用に足を組み右手の甲に顎をのせたバーディアが面白そうな顔をしてこちらを見ていた。その顔が、怪しげに耀く。



……彼は、ティルカたちの話をすべて聞いていたのだ




「なかなか、興味深い話を聞かせてもらったな。そうか、闇の奥まで入り込めたとは。やはり、面白い」




そう言ってくくく、と愉快げに笑うバーディアを見てティルカは何か引っ掛かるものを覚えた。そうして、ふと何かに気がついたのか顔を上げる。




「……貴方は、ユスティーア様たちの事情に関係しているんですか?」



「……どういうことだ」




ティルカの言葉に暁が反応する。しかし当のバーディアは興味深げにティルカのことをじっと見つめているだけで、何も言ってはこなかった。それを、ティルカは肯定と捉える。



そんなバーディアを一瞥すると、ティルカはバーディアを気にしながらも暁に向かって話し始めた。




「……バーディアはいま、人体実験のことについては何も言いませんでしたし、驚いた様子もありませんでした。それなのに、私が闇に入り込んだことに関しては反応した。それは、バーディアが人体実験のことについて既に知っていたか、関係していたということの証拠だと思うんです。それに、邪神である彼は兄であるルビアスと同じように魔界から出ることは簡単には叶いません。となると召喚で喚び出すことしか有り得ないんです。同胞を助けることを理由に私たちを召喚した妖精です。人体実験を理由に、狂気に呑まれた邪神バーディアを喚び出したといっても不思議はありません」



「……一理ある」




ティルカの言葉に神妙な顔をして頷く暁に、バーディアは視線を向けた。そして




「つまらぬ話しはそれくらいにしてほしいのだが。知りたければ己れ自身で答えを探し出せばいい。さしもの私も待ちくたびれた。さあ、我が兄の眷属。手合わせ願おうか」



「……そうか」




ぎらり、と目を耀かせるバーディアに対し暁は冷静に対応した。バーディアは倒さなければならない、しかし、サキの身体を傷つけるわけにはいかない。暁の心と頭は、それでいっぱいいっぱいだった。

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