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闇の闘将と謎の影





「貴様は━━━━━」



「なんじゃ、名を問うておるのか?随分と傲慢なわらしじゃのう。じゃが、生憎、名乗らぬものに名乗る名は持たぬわえ」




砂煙から現れたのは、ティルカだった。しかし、姿こそティルカではあったが、話し方や纏う気配はまったく異なるものであった。



ティルカの黒曜のような髪には、うっすらと紫色の煌めきが。藍色の瞳には赤とも金ともとれる不思議な色合いが透けて出ていた。



白い肌には、淡い、光で描かれたような神秘的な紋様が紡がれており、神々しいまでの力と美に溢れていた。




「……ふん、貴様ごときの名など興味はない。女、貴様は一体何者だ。なぜ、殺したはずの小娘の身体から湧き出てきた」



「はっ、言うてくれるのう。わらわのことを虫けらのように言ったのは、ぬしが初めてじゃ。じゃが、それに答えてやる義理はないわえ?妾はいまとても気分が良いのじゃ。主ごときに折角の気分を台無しにされとうないわ」



「……ほぉ?」



「思えばあの時から、リィハは妾のことを恐れて呼ばなくなってしまったのじゃ。妾が少々理性をなくしてやり過ぎてしまったからの……封じられてしまい、もう二度と会うことは叶わぬだろうと思っておったが、まさか、可愛い妾のリィハに再びまみえることが叶うとは!と、感激のあまり心を踊らせていたのじゃが……」




頬を赤く染めて嬉しそうに語っていたティルカの姿をした女は、突然、その顔を憎らしげに歪めてロキを鋭く見据えた。




「どうやら、たかが邪神の眷属風情が妾のリィハのことを傷つけたようじゃの?可愛いリィハが、妾に向かって『自分はどうなっても構わないから』などとバカげたことを言いおったわ!妾のリィハにそのようなくだらぬ自己犠牲をさせるような状況にまで追いやった主らを、決して赦しはせぬ!さっさと、あのアキラとやらに戻ってもらうわえ!」




怒りのままに言葉を捲し立てた女は、殺気を迸らせロキに向かって掌サイズの光の球を投げつけた。涼しい顔をして避けようとしていたロキは、本能が警告を発するのを感じてギリギリで避けた。



光の球は、その大きさからは想像もつかないような凄まじい威力を発揮し、辺り一帯を一気に吹き飛ばした。



女が勝ち誇ったような笑みを浮かべていると、すぐさま燃え盛る炎が迸り、女を襲う。



女がその攻撃と入れ替わるように氷の礫をロキの足元に飛ばしたが、ロキの取り巻く炎によって水と化した。




「ふ、たかがこの程度で図に乗るなよ女」




ロキが女を見下すようにして見ながら言うと。




「女、女と煩いわらしじゃ。勘が良いのは認めるが、所詮、力ばかりの無粋な男でしかないことには変わらぬ。少々殺気だたせただけで乗ってくるとは、浅はか極まりないの」




そう返して、にいっ、と笑った女に、さしものロキも一瞬だけびくりとした。すると




「な、んだ……女、貴様、この俺に何をした!」



「ふん、生憎と妾は主に付きおうてやる暇がない。言うたであろう?早く、アキラとやらに戻ってもらうとの!さあ、そろそろ終わりにするわえ」




ロキの足元から黒い茨が次々と生え、ロキを拘束した。黙って突っ立っていたサキにも同様に巻き付いている。




「さっき、氷の礫を飛ばしたであろう?あれには、中に火に耐性のある黒暗茨こくあんしの種を仕込んでおいたのじゃ。あれは外界の空気に触れることで、一定の時間後に芽生えて繁殖する。近くのものを養分とする特性ゆえに、その植物の周りには他の植物は生えていないという。ちなみに、いまのそやつらの養分は主らの神力じゃ。多ければ多いほど繁殖するスピードも量も段違いになるのじゃ」




ロキの耳には、既に女の言葉は入っていなかった。サキなどは身体が崩れ落ち、茨が皮膚に突き刺さって出血が多かった。



そんなサキの様子には気を向けず、女は『仕上げといくかの』と言いながらロキの額に手を当てて目を閉じた。





















(……………暗い……ここは、暗くて………静か、だ……)




深い、深い闇の中。暁は何かに包まれているような、そんな錯覚を抱いていた。



誰もいない、暗くて寂しい闇。光すら届かないとさえ思う、漆黒に包まれた世界。



曖昧な意識が、闇の中をたゆたうようにして揺れている。なぜ自分がここに居るのかすらも考えなかった。



微睡むような意識の中、突然、凄まじい光が暁を焼きつくさんとばかりに鮮明に耀いた。闇の隅々までも照らし出すかのような、強烈な光。



暁が手を翳しながら光が発せられている方を見ると、その光はぎゅっと凝縮されてひとつの形を作り出した。



顔の両方から一房ずつ、腰の辺りまである縦ロールの横髪と綺麗な巻き毛の後ろ髪。紫色をした髪は小さな顔を縁取り、瞳は赤とも金ともとれる不思議な色合いをしていた。



雪のように白い肌には、淡い、光で描かれたような神秘的な紋様が紡がれていた。そして、その女は神々しいまでの力と美に溢れていた。



白い右手を豊かな胸の上に置き、左手を無駄なく絞られたくびれた腰に当てて、女は神懸かった美貌を思い切り歪めた。




「お主、いつまでこのようなところにいるのじゃ!全く、負の気に囚われて、このよう簡単に意識を乗っ取られるなど良い恥さらしじゃ!よいか、今後決してこのような失敗をするでないぞ。妾の可愛いリィハに苦労を掛けるようであれば、即刻、首をはねるゆえ気を引き締めるのじゃぞ!さあ、早く戻れ。さもなくば、闇に押し潰されて戻れなくなるぞ」




折角の美貌が台無し……いや、戻れなくなるのは困る。




色々とツッコミたいことや聞きたいことはあったが、目の前の美女の様子から早く戻ったほうがいいという思いのほうが強くなり、軽く礼をして戻ろうと……




「……悪い、どうやって戻れば良いか教えてもらえるとありがたいんだが」




暁が礼儀をもって問うと、女はこめかみに青筋をたて




「そ、ん、な、こ、と、も、わからぬのかーーー!」




その麗しい美貌が台無し……いや、もはや何も言うまい。




粗方怒鳴り散らした女は気が済んだのか、ふぅ、と一息つくと急に真面目な顔をした。




「━━━お主は、どこに戻らねばならぬと思う」



「それは━━━」




何かを言いかけて、しかし口を閉ざす暁に女は優しく言った




「主の居場所はどこじゃ?主が━━━在りたいと思う場所は」




その柔らかな声音に促されたかのように、暁の頭の中にひとつの答えが浮かび上がった。




「……い」



「うむ?」



「俺の居場所は、わからない……だが」




暁の瞳に、強い光が宿る




「俺は、サキやティルカと共に在りたいのだと思う。よく、わからないが……ふたりがいて、共に過ごす一時ひとときと共に在りたいのだ。と思う」




前世では中々に衝撃的な死にかたをした。この世界に転生して、前の世界では見られなかったものをたくさん見た。それゆえに、喧嘩して、仲直りして。共に笑いあったり、励まし合ったりといった平凡でありふれた日常の有り難さを知った。




(……俺も、少し言い過ぎた。ティルカにも、謝らなければ)




しんみりとした雰囲気を纏う暁に、女は改まって言った。




「━━━再び問おう。主は、どこに戻らなければならぬと思う」



「無論、俺が在りたいと願う場所。そして、行かなくてはならない━━ティルカの傍へ」




暁がきっぱりと言うと、その姿が急に光に包まれ粒子となって消えていった。




「……戻ったか」




女がぽつりと呟く。そして、薄く笑うと瞳を閉じて語りかけるような声で言った。




「リィハ、聞こえておるじゃろう?そなたも、そろそろ戻らねばならぬ。覚えおけ。妾はそなたの味方じゃということを。そして、もう二度と己れを犠牲にするような馬鹿なことはするでない。妾はそのようなことを望んではおらぬのだから」




女は閉じていた瞳を開き、上を見上げながら言った。




「妾が掬い上げることができるのはあやつのみじゃ。あの神魔とあの女たちを掬い上げることは、妾にはできぬ。さて、これからが難題じゃな」




そう呟くと、女の姿は蜃気楼のように揺らめき消えていった。闇の中に、再び静寂が戻った。

な、名前……名前が決まらない゜゜(´O`)°゜


だ……誰かーーーーー(´・ω・。`)

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