表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/52

こんな私にできること





「はぁ……はぁっ、はぁ……」




ティルカは、ただひたすらに足を動かした。後ろから凄まじい殺気と、力と力のぶつかりを感じて身震いがした。しかし、それ以上に涙が止まらなかった。




(私が、アカネさんを巻き込んでしまった━━━)




恐怖よりも、その事に対する後悔のほうが強かった。しかも、巻き込んでしまったにも拘わらず、アカネはティルカに対して何ひとつ批難の言葉を言わなかった。その場を引き受けてくれたうえに、ティルカに目的を果たすよう促したのだ。




(ごめ、なさい……ごめんなさいっ……)




アカネにも目的があったはずなのに、ティルカのせいで後回しにさせてしまったのだ。



ぐだぐだと後悔ばかり積もらせながら一心不乱に走っていると、ドン、と何かに頭から強くぶつかった。



そのまま後ろに倒れそうになったとき、腕がのびてきてティルカの身体を支えた。それによって、ティルカはひとにぶつかってしまったのだとわかった。




「す、すみません!ぶつかってしまったうえに、支えてもらっ……え…………?」




慌てて涙を拭って支えてもらった相手を見上げると、ティルカは瞬時に硬直した。ティルカを支えていたのは━━━




「アズール……さん…?」




疑問形になってしまったのは仕方ないことだと思う。なぜなら、ティルカの目の前にいるサキは、理性の光を失い、虚ろな瞳をした……まるで、サキの姿を模した人形のようだったからだ




「え、あの……アズールさん?わ、たし…ずっとふたりに謝らないといけないって思ってて……えっと、アキラさんはどこに……」



「興醒めだ、小娘。俺を退屈させた罪は重い」




意思を感じさせない虚ろな瞳を向けてくるサキにティルカが懸命に話しかけていると、ティルカの後ろから聞き覚えのある、しかし、記憶にあるものとは違う、嘲りにも似た響きを有する声が聞こえた。




「!え、あ……アキラ、さん………?」




そう呼ぶティルカの声が僅かにぶれた。そして、ティルカの本能が否と激しく告げていた。



これは、誰だ━━━━?



目の前の彼は、暁の姿をしている。だが、違う。ティルカの知る暁は、こんな冷たい瞳をしていない。禍々しい気も纏っていない。そして何より、あの邪神のような歪んだ笑みを浮かべない━━━




(歪んだ、笑み?…あの、邪神のような…って……!)




自分の思考に、ティルカはまさかと思った。そして、暁から聞いた話を思い出す。その時は創造主がルビアスだということに気をとられていたが、大事なところはそこではない。



……邪神たるルビアスによって造られた眷属で、本来ならば彼の邪神に従属するはずだった暁の、今生いまの名前━━━




「10魔将の、ひとり……闘将、ロキ……?」



「ほぉ?……思ったよりも、考える力はあるようだ」




半ば呆然としたティルカが出した答えに、ロキは満足そうに言った。そして




「ならば小娘、俺がいま何を為そうとしているか……わかるな?」




優しげにさえ聞こえる玲瓏とした響きの声を発したロキを、ティルカは再び溢れでた涙を拭うこともせずに見上げた。先ほど、ロキが言った言葉を思い出す━━━━つまり




「死ね、小娘━━━━」




ロキの腕が、ティルカの鳩尾を貫いた。鋭く伸びた爪が、ティルカの肉を抉る。



ぐふっ、と僅かに声を漏らしたティルカは己れを貫くものを無関心に見つめながら、ゆっくりと瞳を翳らせていった。



そのままぐったりと力尽きるティルカから腕を引き抜いたロキは、くずおれるティルカを無感動に見つめた。そして、あまりにもの呆気なさに、軽く鼻を鳴らす。



ティルカが完全に動かなくなったのを見届けると、もはや興味はないと言うように踵を返し、サキと共に立ち去ろうとした━━━━しかし




「……っ!」




ロキが咄嗟にその場を飛びずさった。そして、先ほどまでロキが居たところは、深く抉られていた……いや、穿たれていた、といったほうが正しいかもしれない。



砂煙が舞うなか、ロキが鋭い視線をある一点に向けていた。




「……貴様、何者だ」




ロキが低い声で問いかける。しかし、くすりと小さな笑い声が返ってきただけだった。



やがて砂煙が収まり、ひとつの姿が現れた。ロキは鋭い美貌を歪め、言った。




「貴様は━━━━━」





















(私には、手に負えない━━━)




優し気にさえ聞こえる玲瓏とした響きの声を聞いたとき、ティルカはそう思った。そして、ある決意をした。




(……私は関係のないひとを巻き込んだ。たくさんの想いを託された。大切なひとたちを傷つけた。迷うことなんて、何もない。だって私は━━━既に、罪で穢れているから!)




手段は選ばない。自分のために狂わされたひとたちがいるのだから。我が身惜しさに迷ってなんかいられない!



ティルカの心が精神世界に沈んでいく。暗く、深い闇がティルカの視界を覆い尽くす。この闇を見ていると思う。アカネやユスティーアは、この自分のどこに強い光があると言ったのだろうかと。



自嘲めいた顔をし、ティルカは言った。




『お願い━━━━━助けて』




目的さえ達成できれば……私はどうなっても構わないから。



ロキの腕が、ティルカの鳩尾を貫いた……封印紋が施されている鳩尾を。



途端、闇の世界で、ふたつの光がまるで瞼を開くようにして現れ、耀き、瞬いた。



にやり、と薄く笑う唇を朧気な意識で捉えたティルカは、そのまま意識を手放した。

……ティルカ、すまん!


そして、ティルカの中の奴の名前どうしよう


名前を考えるのが、一番、悩みます(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ