我ながら単純すぎですか?
「ひゃあっ!」
「話は最後まで聞くものですよ!なんですか、大丈夫ですからって!私自身の問題でもあるのでって!オレ、なかなか姫さんに協力していると思うんですがね!ここで切り捨てるなんてあんまりじゃないですか!?」
そう言ってひとひとり殺せそうなほど凄んでみせるアカネにティルカは顔面蒼白になり、そのまま凍りついてしまった。一瞬、息をすることを忘れたくらいだ。
それからティルカはしょんぼりと俯き、もそもそと口を動かしていたが言葉にはならなかった。
そんなティルカを睨めつけていたアカネは、深々と溜め息をつき、さらに言い募った。
「大体ですね、姫さんには判断力と思考能力というものが足りないんですよ!学習能力なんて欠如しているんじゃないですか!?もう少し成長しましょうよ!」
さすがにそこまで言われると、ティルカとてカチンとくる。それまで大人しく聞いていたティルカだったが、あまりの言い分に、むくむくと反抗心が芽生えてきた。
「そこまで言わなくてもいいじゃないですか!しかも私の先ほどの言葉となんの関連性もないですし。それに、アカネさんこそ、もっといろいろ話してください。そもそも、アカネさんが自分には関係ないって会ったばかりの頃に言ったんじゃないですか!いま思えばアカネさんは私達のことをいろいろと知ってるのにこっちはアカネさんのことをちっとも知らないなんて不公平です!」
感情のままに自分でも支離滅裂だと思いながらアカネに突っ掛かると、アカネはとぼけたような顔をしてしれっと言った。
「えー、姫さんてオレの個人情報が知りたいんですかー?残念ですね、さすがのオレでもそこまでは教えられません」
「アカネさんの個人情報なんてどうでもいいです!私が知りたいのは……って、もう!」
(……なんだろう、凄くバカバカしくなってきた……)
そう思うのは、アカネの巧みなおとぼけ話術のせいなのだろうか。それとも、いちいち突っ掛かってしまう幼稚な己れ自身に対する呆れからだろうか。
兎に角、こうしている時間が勿体ないと思い、ティルカはアカネに向かって言った。
「……もう、いいです。アカネさんはアカネさんで好きにしてください。私も私で好きにしますから!」
前に暁に同じことを言われた気がするし、なぜかアカネに負けたような気がしながらも、ティルカは最優先事項がなんであるかをしっかり頭に刻み込んで行動に移そうとした、が。
「へぇ~、姫さんも成長しましたねー。それじゃあ、姫さんの物分かりが良くなったところで行きましょうか!」
「へ?…て、ちょっ、まっ……」
アカネが言い終わるか終わらないかで突然ティルカを抱き上げたのだ。そして
「さあ!しっかり掴まっててくださいね!」
「え、いや、あの……きゃああああああああ!」
突如アカネの真下に魔法陣が現れたかと思うと、魔法陣から溢れでた光に包まれてふたりは忽然と姿を消した。
「いやぁぁぁぁあああああああああ」
「こんなことは言いたくないんですがね……姫さん、とてつもなく煩いです!オレの耳許でそんなに大きい声で叫ばないでください!」
魔法陣の中を、ぐるぐると回りながらティルカは絶叫を響かせ、アカネは叫ぶように声を出した。
そしてティルカは、この魔法陣は前にサキが使った転送陣と同じものなのだろうかと思った。しかし、それにしてはあまりにもお粗末すぎる。転送過程が荒過ぎるのだ。サキの転送陣は一瞬だった。
荒い転送に激しいまでの吐き気と目眩に襲われながらも、ティルカはアカネの服の裾を決して離すことはなかった。正直な話、その事に関しては自分でも褒めてやりたいくらいだったと後に思ったという。
そして、永遠のように感じられた(実際は三分しか経っていない)苦痛の刻が過ぎ、アカネとティルカは見知らぬ場所に無事に着地したのだった。
見るからに都心だと思われる場所だ。緑豊かで水源も豊富。そして何より、美しく優雅な建物があちこちに見られる。
しかし、辺りにはどす黒い靄が漂っており、街の大半は腐敗しかけていた。魔法陣での影響もあり、正直、気分が悪かった。
「うっ、ぐすっ、ううっ、吐きそう……」
「えぇっ!こんなとこで吐かないでくださいよ!?」
「まったくだ。そのようなことをすれば、赦さぬぞ?」
ほっとしたのも束の間。聞き覚えのある声にふたりが同時に顔を上げた瞬間、アカネは臨戦態勢をとり、ティルカは顔を大きく強ばらせ掠れた声を出した。
「あ…なた、は……」
……この話の主人公って、誰だったかな
稚拙な文章のせいで全く進まない……いや、進めることのできないクズな作者ですみません
主人公、早くカモン!