何故かお気に召されてしまった
決してBLではありませんので、悪しからず
━━━━ばかばかしい
及び腰になっている自分に腹が立ち、己を奮い立たせる為にも相手を睨みつけた。
それから三分は経っただろうか。ナル男、もとい邪神がふっと表情を和らげ、またクツクツと笑った。
もう何がなんだかわからない。
じろりと睨むと、片手をあげ「暫し待て」というと、本格的に笑い始めた。
邪神がひと通り笑うと、ひと言『悪気は無い。だが、すまぬ』と不機嫌な顔をした暁に言った。
「邪神が悪気はないと言っても、信憑性が全くないんだが」
面白くなさそうに言う。
「ふむ、それもそうか」
そうあっさりと返され、再び話を始めた。
「しかし、あの問いはまったくの嘘ではない。我はお主らを造ったとき、闘争本能と心核を入れた。ほかの奴らに理性と人格は無いわけではないが、少なくともお主のようにまともに話せるようなものはいなかった。まぁ、喧嘩っぱやい奴らゆえ、落ち着いて話ができなかっただけでもあるが」
そう言うと、邪神が少し警戒の混じった眼で暁を見つめた。
「お主は、同胞たる他の魔将たちとは少しばかり異なるようだ………10魔将がひとり、煉獄の炎を司る闘神ロキよ。お主の創造者たる邪神、ルビアスが問う。お主は如何なるものだ。何故そのように強い意思を持ち、我を畏れず従わぬのか」
強い瞳と力の篭った声で告げられる。それが言霊であり、偽りを言うことが赦されないことを本能で悟った。
暁は姿勢を正し、邪神━━ルビアスを真っ直ぐに見据えると、心のままに告げる。
「なぜかは俺も知らない。ただ、俺には前世の記憶がある。それが関係しているかもしれないが、俺にとってはどうでもいいことだ。それに、俺とて恐れはある。ただ、意地でそれを拒絶した……それだけだ」
きっぱりと告げ、ルビアスの反応を窺う。
暁の答えを聞き、暫く考え込んでいたルビアスは、先ほどとはまったく異なる邪神に相応しい邪悪な笑みを浮かべると、物騒なことを言い始めた。
「……そうか、ならばお主の中から前世の記憶とやらを消すか、魂と心を闇で染め上げればいいということか」
そういうと、眼が一瞬きらりと光り、ゆらりゆらりと近づいてくる。
「ちょっと待て。なぜそうなる」
「案ずるな、痛みは感じぬ………我はお主の創造者ぞ。逆らうことは赦さぬ。本来ならば主たる我の名を眷属風情が呼ぶことは赦さぬのだが、お主を気に入ったがゆえに特別に赦してやろう。さぁ、我が慈悲に感謝し忠誠を誓え」
もはや狂ってるとしか思えないような笑みに変わっている。しかし、ここで素直に従うほど暁は物分かりはよくない。すぐさま地を蹴り、ルビアスから距離をとる。
それを見たルビアスは、途端に冷たい笑みを浮かべ淡々と話しかける。
「何をしている?こちらに来い、ロキ。痛みはないと言ったであろう」
そういうと、またこちらに向かって歩を進める。
「痛い痛くないの問題じゃない。俺は俺だ。おまえに忠誠を誓う気もなければ、記憶を消される謂れもない。俺の人生は俺が決める」
すると、ルビアスは歩みを止め、冷酷な眼で暁を見据えると冷え冷えと告げる。
「愚かな………我から離れて暮らせるとでも?そのような勝手がまかり通ると思ったか」
「俺の人生は俺のものだ。勝手でもなんでもない!」
怒りのままにそう告げ、また距離をとろうとした……しかし。
「そう何度も同じ手が通用するわけがなかろうが」
一瞬で距離を詰めると、暁の首を片手で掴み、高く持ち上げる。
「かは………っ」
気管が圧迫され、まともに呼吸が出来ない。苦しくはあったが、負けてたまるかと生来の負けず嫌いが発揮され、顔を歪めながらも手を外そうともがきながらもその視線は鋭くルビアスを射貫く。
しかし、当の本人はそれがお気に召したようで、嬉しそうな顔で暁の頬をもう片方の手で触れる……変態か、気色悪い。
「あぁ、そうだ。その眼だ………その眼を我は気に入ったのだ。ロキよ、考え直せ。お主が望むのであれば、なんでも好きなものを与えてやるぞ?金か?名誉か?それとも女か?」
ルビアスが上機嫌に検討違いなことをつらつらと言い並べていく。生憎そんなものは欲しくないし、第一こいつは根本的なところで間違っている。
「……俺…は……そ、なもの……欲して…ない……欲しい…もの……は…自分……で……手に入れるもの…だ……」
息も切れ切れにそういう暁に、面白いものを見るような眼を向ける。
「ほう、面白い。しかし、いまの時点で我から逃れることのできぬお主に、一体何ができる?」
クツクツと笑うルビアスに暁はにやりと笑みを浮かべて見せた。
怪訝な顔をしたその時、一瞬隙ができたのを暁は見逃さなかった。
脚の膝でルビアスの顎を蹴りあげ、手が離れた隙に直感に従い、近くに幾つかあった魔法陣のなかのひとつに立った。すると、あっという間に魔法陣に吸い込まれていった。
空いた手を無感動に見つめながら、思案していたルビアスはあることに思い至り、不機嫌そうに言った。
「………忘れていた。魔将たちにはそれぞれの手足となる従者をあてがっていたな。幾ら魔将といえど、他とは異なるあれが魔法陣を作れることも使えることを知っているとは思えぬ………やはり奴の従者の仕業か」
魔将に仕える従者は、魔将の命令しか聞かない。普通の魔将はルビアスに従っているため、このようなことにはならないが暁の場合は別だった。
「さて、これからどうしたものか」
どうやって取り戻そうかと、ルビアスは頭のなかで策を張り巡らせ続けていた。
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