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いい加減に怒りました

お久し振りです


いつも読んでくださり、ありがとうございますm(__)m





『どうしよう』




ガクリと肩を落としている暁から、そんな声が聞こえてきた。しかし。




(本当にわかっておられない)




サキは、この上なく歯痒い思いで暁を見つめていた。力とは、本人の意思でどうにでもなるもので、暁はきちんと力を使いこなしていた……ただ本人が理解していないだけであって。



ティルカと契約を結んで人界に留まることができれば、ルビアスたちも容易には手出しができない。だから力を使いこなせるようになるための修行ができる。といったのは、半分でまかせだ。



何せ、本人は無自覚だが力をコントロールできているのだから。



ゆえに、本当の目的は自信をつけることと経験を積むことだ。経験は積んでおいて損はないし、いざというときに役に立つだろう。主な理由は、どちらかと言えば自信をつけることだ。



暁は前世での記憶があるという。どんな世界だったのかは知らないが、暁を見ていれば随分と平和なところだというのは理解できた。自分の力を恐れていたからだ。



しかし、この世界は暁がいた世界とは違う。戦争なんてザラにある。現にいまは魔界と人界で争いがあり、お互いに憎しみあっている。白ローブの反応がいい例である。



暁の優しさをサキは好ましく思うと同時に、歯痒く思っていた。



暁がサキに向ける優しさは、サキがいままで受けたことがないものだったので、とてもくすぐったくて心地よいものだった。しかし、先ほどサキの前に立った暁の、ひどく神々しい姿に心が強く惹かれた。



いつも控えめな姿勢の暁が見せた毅然きぜんとした態度に、サキは自然と畏敬の念を抱いた。そして、やはり暁こそが自分の主なのだと強く思った。



あの鋭い瞳も、纏う空気も、覇者のようなあの立ち振舞いも、何もかもが完璧だった。そして、暁はもっと己れに自信を持つべきだと。



そのためにどうしたらいいか実のところサキはわからなかった。何せ、サキにとって暁は予測不可能な存在なのだ。そう簡単にわかれば、苦労はしない。



すっかり自分の世界に入り込んでしまったサキに、暁の頬はかなりひきつっていた。




(っ、サキ!)




逆ギレといっても過言ではないのでサキには向けず、自分の心のなかで盛大に怒鳴っていた。サキが暁のことについて深く考えてこんでいるなど、露ほども思っていなかった。




「ア、アキラさん……ど、どうしたんですか」



「アキラ殿?どうかなさいましたか」



「……」




ティルカのおどおどした声も、モリアスの期待に満ちた笑顔も、サキの無反応も…すべてが暁の癇に障って仕方がなかった。



………本来、暁は短気なほうだ。しかし、精一杯平和的に解決できるように努力してきたつもりだ。前世の二の舞を踏むまいと。




『暁は直情的だから、凄く自分勝手に見える。少し控えないと、いろいろと勘違いされてるぞ。話しかただって冷たいし、それで泣いてる子もいるんだぜ』




昔、幼馴染みに言われた言葉だ。それを言われるまで俺は気づかなかった……周りのクラスメイトが俺を怯えた…もしくは嫌そうな目で見ていることを。



俺は父親似で、直情径行だった。けれど、それが周りを嫌な気持ちにさせていることに全然気づかなかった。だから、気づいてからはできるだけ自分を抑えるように心がけた。我慢して周りに合わせるようにした。



ここに来てからも、できるだけ周りを気遣うように感情を抑え、できるだけ控えめに話したし、感情のまま怒鳴り散らしたり……少しした。すまん。






それなのに━━━━━━━━






(おまえらのせいで、我慢してる俺がばかばかしくなってきただろうが)




言葉遣いが荒くなり、沸々と怒りが湧いてくる。顔がどんどん不機嫌になっていく暁に(ようやく)気づいたサキは、無害な顔で。




「アキラ様、如何なされましたか?お顔が怖いことになっていますよ」




と、爆弾を落とした。








……………………ぷつん








何かが切れる音がした。と思った瞬間━━━━






「っっっ、ふざけるな━━━っ!」






暁の叫び声と共に、凄まじい炎が部屋の中を荒れ狂った。しかし、それもすぐに収まる。




「っ!これは……」




モリアスが驚愕の声をあげ、何かを言おうとしたが「おい」という暁の声が遮った。




「さっきから好き放題やりやがって……俺が我慢しているのがばかばかしくなってきた。だからもう俺も遠慮はしない。そっちはそっちで好きにすればいい、俺は俺で勝手にする」




そういって身を翻して、行くぞ。とサキに声をかけて、傲然と歩きだす。




「ア、アキラさん。どこかに行くのなら、私も…」




行きます、と言おうとしたティルカに「要らん」と暁が答えた。




「俺がどこに行こうと俺の勝手だ。ついてくる必要はない。用があれば喚び出せばいいだけの話だろうが」



「で、でも、アズールさんは……」




「サキは俺の側近であり、従者だ。ついてくる義務があるし、どこにいようと追ってくる。地獄の果てまでもついて行くと俺に言ったからな。だから連れていく」




それに、と暁は呟いてティルカとほうを振り返った。暁の目は、ひどく鋭い。




「それ以上に俺は、サキを信頼している」




己れの感情を偽らずに暁に接し、助けになってくれているサキに、暁は好感をもつと同時に頼もしく思っていた。それに、サキが真名を告げたときに言った言葉をきちんと受け止めて自分で考えて答えを出した。




「サキもお前と同じで今日知り合ったばかりだ。だが、勘違いするな。俺の中ではサキとお前は対等じゃない」




びくっとティルカの身体が小さく跳ねる。直情径行と呼ばれる暁の話し方は、結構キツイ。この話し方で女子に泣かれたこともあったが、それでも構わないと暁は敢えて言葉遣いを丁寧にしなかった。暁は深く息を吸い、真っ直ぐにティルカを見つめる。そして。




「言いたいことがあるなら、どもらずにはっきり言え。でないと、周りには伝わらない。お前はどうしたいんだ。一体、何がしたい」




サキに言ったときと同じように、本人ティルカに必要なことを問いかける。自分に跳ね返ってこようと、知ったことか。



暁の言葉に、ティルカは押し黙る。しばらくして、ギュッと握りしめた両手を離し、暁の顔を強く見返す。




「わ、私も行きます!連れていってください!置いていかないでっ」




それは、いままでティルカから聞いたこともないような大きな声だった。




「それは命令か」




冷ややかな声で問いかける。そう、命令であるのなら暁に断るすべはない。



しかし、ティルカは首を振り━━━━━




「っ、いいえ!私自身の意思です。命令ではありません!」



「……ただ少し町のほうを見てまわるだけだ。それでも来るのか」




暁が幾ばくか柔らかな声で問いかけた。ティルカはその問いに対して、はっきりと「行きます!」と答えた。



暁が再び歩きだす。ティルカは無言でそれに続き、サキは「終わったら追いかけます」と声をかけた。



教室を出るときのティルカは、クラスメイトでさえ見たこともないような強い顔つきをしていた。そして暁も、妙にスッキリとした顔をしていた。




「やはり、あの方の考えていることはよくわかりませんね」




サキがボソリと呟いた。なぜか、サキが望んでいた暁になっていた。あの流れで暁の心境に、一体どんな変化があったのか、サッパリわからない……けれど。




(恐らく、これでよかったんでしょうね)




サキはしみじみと暁のことを思い、さっさと終わらせて暁のあとを追おうとモリアスのほうを振り返ったのであった。

ありがとうございました。


……これでいいのだろうか。自分で書きながらおかしくないか不安になる今日この頃


誤字脱字等があれば、ご指摘のほど宜しくお願い致しますm(__)m

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