全員揃って、戯け者!
ありがとうございました!( ̄- ̄)ゞ
…………はぁぁ
暁が軽く溜め息をついた。
すると、それが合図であったかのようにティルカのクラスメイトたち(らしい)が次々に呪文を唱えて攻撃を仕掛けてきた。
「アヴィウェリア!」
「アースクライック!」
「ヴェンリアノーズ!」
ちなみに一番上から順に、火、水、風の魔法である。そこそこ威力が強く、暁はふと思ったことを口に出した。
「……おい、ここは室内だろう。そんな威力の魔法を使えば……」
建物が崩れ落ちて、周りに被害が出るかもしれないだろう。と言おうとしたが、ティルカのクラスメイト(らしい)ひとりがその言葉を遮った。
「黙れ!クロスヴェルムを人質にとった卑怯で汚らわしい悪魔風情が!」
…………ブチッ
堪忍袋の緒が切れた。ひとの話をまったく聞かず、好き放題言われて大人しくしていられるほど寛容ではない。
「ほう?図星であったからといってこちらにあたられても困るのですが。いえ、まさかそのような歳になって己れの非を素直に認めることもできないとは……まだまだ、子供ですね」
……堪忍袋の緒が切れたのは暁ではなくサキだった。というかサキ、目が笑ってないから。それに、生徒たちも怒りを募らせているというより殺気だっているような……
「この、魔物風情がぁぁぁぁ!」
ほら見ろ。事態が悪化してるだろうが。煽ってどうする……って攻撃がひどくなってる!殺る気満々だろ。
にぃっ、とサキが笑う。その笑みを見て気がついた。サキはわざと煽り、殺気だたせたのだ。
……攻撃するために
「コスメリア!」
ひとりの女子生徒が暁とサキに向かって、風の魔法を放ってきた。
ティルカにも被害が及びそうだったので、暁は自分の背中に隠れるように言った。サキが風の魔法をあっさりと消し、臨戦態勢をとる。
……まずい、サキの奴、本気で闘うつもりだ。どうにかして止めないと大変なことになる。
「ティルカ、契約違反とかでサキを止めることは…」
「む、無理です。私のクラスメイトたちがアズールさんに敵意を持っている状態なので、契約違反にはなりません」
涙声になりつつ、ティルカは必死に言い募った。
「お、お願いします!あ、アズールさんを、と、止めてくださいっ」
「と言われても……」
ティルカの瞳から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。必死に暁に縋りつき、ぐすぐす泣いているティルカの姿に怒鳴りそうになりながらも寸でのところで止め、サキを真っ直ぐ見据えて深く息を吸ってはいた。
「ハリィハリィフィーア!」
男子生徒のひとりが水の魔法を放つ。他のクラスメイトたちとは比べ物にならないほど凄まじい威力だった。サキの力としては問題はないが、まかり間違えて暁にあたらないよう、念のため結界を張ろうとした……その時。
カァァァァァァァァァァッ
目を焼き尽くすような光と共に、地の底から響くような暗くて重い音が鳴り響く。いつの間にか目を閉じていたことに気づいたサキは、まさかと思いつつゆっくりと顔をあげ、瞠目した。
「……嘘だろ」
男子生徒の呆然とした声が、静まり返った教室に響く。サキは、やはりと思いつつ畏敬の念を込めて目の前にいる主の姿を見つめる。
「畏れながら、貴方様の力を侮っていたようです……不肖サキ、感服致しました。我が主、アキラ様」
サキや男子生徒を含む生徒たちの前には、瞳が銀色に耀き、煉獄の炎を自在に操って水の魔法を燃やし尽くした暁の姿が映っていた。
そしていまもなお、その炎を身に纏わせていた。
あまりにも神々しい姿に、そこにいるものたち全員が息をするのも忘れ、魅入っていた。
「……おい」
「っ、!」
暁に話しかけられ、男子生徒は息を飲んだ。震える身体を懸命に押し留め、顔をあげる。
「俺たちはティルカを人質にした覚えはない。勘違いするのは勝手だが、これ以上やるというのならこちらもそれ相応の行動に出るが、いかがする?」
「っ、は、はい……すみませんでした」
「サキ」
「……はい」
「おまえ、わざと生徒たちを挑発したな」
「……申し訳ありません」
「俺は無駄な争いは好まない。次はないと思え」
「……承知いたしました」
もう言うことはない、といった顔をして炎を消し、両手を組んで教室の壁にもたれかかった。
……なんとか言い切った。頑張った、俺
止めるために威圧感を漂わせ、覇者のような態度で言ったのだが、どうやら効果抜群だったらしい。
「……えっと、クロスヴェルム。そのひとたちは、一体……」
「あ、あのね。このひとたちは……」
━━━━バチッ
……は?
気づいたときには既に、暁とサキの真下に魔法陣が敷かれていた。
辺りを見回すと、白いローブを着た大人たちが険しい顔で暁とサキを見据えている。
「……どういうことだ」
暁が素で呟いた。サキも目許に険をのせている。
「悪魔ども!うちの生徒たちを堕落させようとしても無駄だ!貴様らは既に、我らの魔法陣の檻のなかだからな」
勝ち誇ったような顔でそう言った大人たちに、暁はひと言『一難去ってまた一難』という言葉を思い出し、再び溜め息をついた。
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