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さすがまずいと思います





ぴしっと顔が引き攣った。なんという不覚、サキすまん



なんとか思考をフル回転させる。冷や汗が止まらずに流れまくりな暁の心情などいざ知らず、少女は聞こえなかったと思ったのかもう一度繰り返す。




「あ、あの……どうして、人間の心がわかったのですか?」



「ああ、申し訳ありません。この方は、人間観察が趣味ですのでそのせいかと」




細々と聞いてくる少女に、サキは爽やかな笑みでさらりと虚言をはく。そして、少女はサキの言葉を信じ、えっ、と驚いた。




「に、人間観察……ですか」



「はい。この方は以前から人間に興味がおありでして、よく魔界に迷い込んでくる人間や特殊な道具で人間界の観察をしておられたのですよ。ですので、先ほどのこともその賜物かと思われます」




まさかこんな爽やかな笑みで偽りを言われているとは露ほども思わないだろう。納得した様子で、そうだったんですかと呟いた。




「それで、先ほどの話に戻りますが」



「え……は、はい」



「先ほども申し上げたように、私たちはここで修行をしたいと思っています。ですので、ここに留まるためにも是非、契約をしていただきたいのです」




いろいろと省いた説明ではあったが、暁が邪神の眷属でその邪神に対抗するために力をつけたいなどと言って驚かせる、もしくは怖がらせるよりかはマシだろう。




「で、ですが……その」



「私たちは獣ではないので、召喚獣とはなりませんが……獣より、人型である私たちのほうが何かと便利ですよ。それに、先ほどこの方は人間に興味がおありだと申し上げたでしょう?善良な人間に危害を加えることは決してありませんので大丈夫です」




不安そうな少女の考えをサキは事も無げに察し、安心させるように答えた。




「なんでしたら、契約内容にいれていただいても結構ですが」



「ええっ!」




驚いた様子の少女を見て、暁はサキにどういうことなのかを聞いた。




「サキ、なんであの子あんなに驚いてんだ?」



「契約内容に<善良な人間には手出ししない>というのをいれていいと言ったからですよ」



「契約内容?」




質問をしてばかりで申し訳ないと思いつつ聞いてみると、サキは少し思案をしたあと、暁にもわかりやすように話し始めた。




「契約内容というのは、契約する際にお互いが決める規則のようなものです。それに、どの世界でも規則を破ると罰が与えられるでしょう?あれと同じで、契約内容を破るとそれ相応の罰が与えられるんです。ちなみに、悪魔は破壊や不幸を好むので、それを制限されるような契約をしたがりません」




「……つまり、普通はしたがらないようなことを契約内容にいれてもいいと言ったから、あの子はあんなに驚いているのか」




「はい」




「ま、俺は人間に危害を加えようとは思ってないから別にいいけどな」




サキの説明が終わった頃を見計らって、少女はサキに話しかけてきた。




「あ、あの……契約内容を、お話しいただいてもよろしい…ですか……?」



「その気になっていただけたようですね。ありがとうございます」




おどおどと言う少女に、サキはにこやかに礼を述べた。そして、サキが呈示した契約内容は━━━





1.人間に危害を加えないといっても、敵意や殺意のない善良な人間に限定すること


2.隠し事や偽りを言わないこと




「ぐらいですかね」



「まぁ、それくらいが妥当だな」



「ええっ!そ、それだけでいいんですか?」



「?はい、そうですが何か不都合でも?」




またもや驚きを見せる少女に、サキは不思議そうな顔をした。何か変なことを言ったのだろうかと暁のほうを見たが、暁もわからないようで首を振り返してきた。




「あの、す、すみません。それだけでいいなんて思ってもみませんでしたから……つい」



「あぁ、そういうことでしたか」




確かに魔の者との契約としてはあまりにも少なすぎるだろうが、サキと暁にとっての条件はこれくらいしかなかったので特に問題はない。




「それで、如何でしょうか。この条件は」



「は、はい!ぜ、是非とも、よろしくお願い致しますですっ!」



「おまえ、言葉が変になってるぞ」




泣きそうになったり、落ち込んだり、びっくりしたりといろいろ忙しい奴だと思った。




「す、すみません」



「いや、いちいち謝らなくていいから……えっと」



「あっ!わ、私、ティルカって言います。ティルカ=クロスヴェルムです。ぶ、不作法を……」




異様にかしこまり、頭を深く下げる少女━━ティルカに、暁は驚いて頭を上げるように言った。




「いや、気にしなくていい。俺はあきら神城暁かみしろあきらだ。ほら、俺たちだって名乗ってなかっただろう。お互い様だ」



「私のことはアズールと呼んで下さい。もし、アキラ様と同じように呼んだときは、容赦せずに跡形もなく消し飛ばしますので、そのつもりで」




優しげな言葉でさらりと物騒なことを言ってのけたサキに、ティルカは顔を真っ青にして何度も必死に頷き、暁は無言でサキの頭をはたいた。




「それで、ティルカ殿はどのような条件を呈示しますか」




暁にはたかれた頭を軽くさすりながら、サキは何も事なかったかのように話しかける。ティルカは動揺しながらも口を開いた。




「は、はい。え、えっと私の条件は━━━」




1.敵意や殺意のない善良な人間に危害を加えないこと


2.勝手に居なくならないこと


3.喚んだらすぐに応えること


4.命令にはちゃんと従うこと


5.殺生はできるだけ避けること


6.少しでも異変を感じたらすぐに言うこと






「……です」



したたかだなぁ」



「いえ、こんなものですよ。というか、これでも少ないほうです」



「そうなのか?」




瞠目する暁にサキは頷き、続けてこう付け足した。




「悪魔は狡猾なので、いちいち契約内容にいれないと動かないんですよ」



「なるほど。だから、命令にはちゃんと従うこと。とか喚んだらすぐに応えること。とか当たり前のようなことが入ってるんだな」




うんうんと頷く暁に、ティルカは申し訳なさそうに言った




「あ、あの不快な思いをさせてしまってすみません……その、学校での規則でもあるので……」



「おまえ…じゃなくて、ティルカは学校に通っているのか?」



「は、はい。リフィリーア魔法学高校の二年生です」



「へぇ、小さいのに高校に通ってんのか。飛び級制度があるのか?」




感心して聞いてみると、ティルカはいきなり顔を暗くして恨みがましい目をして暁を見つめてくる。




「……どうしたんだ?」



「……アキラ様、ティルカ殿をお幾つだと思っておられるのですか」



「幾つって……13か14だろ?顔つきは幼いし、背も結構低い……し…」




暁が言葉を募らせていくにつれ、ティルカの顔が少しずつ険しくなっていく。




「……アキラさん」



「お、おう?」



「私の年齢、17歳ですよ」



「……はあ?17だと!?」




サキが呆れたような顔を暁に向けてくる。さすがに怒ったのか、ティルカは顔をずいっと近づけてはっきりと言った。




「私は確かに童顔ですが、背はそんなに低くありません!アキラさんが大きすぎるんです!」




ぷいっと顔を背けたティルカを、暁はしばらくの間、呆然と見つめていた。

誤字や脱字などがありましたら、ご指摘のほど宜しくお願い致しますm(。_。)m

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