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とあるカンガルーの朝模様

作者: BITO

 つい勢いで書いた。今では反省している。だが後悔はしていない! ……たぶん(ぼそり)。

 カンガルーの朝は早い。日の出よりも早く目覚める。


 起き上がり、手早く身支度を整えると、揺り籠で眠るかわいい我が子を一瞥した後、家を出た。




 タッ、タッ、タッ――。


 カンガルーは人気のない道を跳ねるように走っていた。否、跳ねながら走っていたと言うのが正解か。


 自慢の太い尻尾でバランスを取りながら、両の後ろ脚で地面を力強く蹴ると、その体躯は軽やかに前方に跳び上がる。そして、着地。強靭に発達した筋肉が衝撃を吸収すると、その反動を生かして再び跳び上がる。その繰り返し。


 端的に言えば、ただぴょんぴょん跳びはねているだけなのだが、侮ることなかれ。この時、カンガルーは時速30Kmを超える速度が出ているのだ。これは、一般的な自転車よりも速い速度である。もちろん自転車が全速力で走ればそれ以上の速度を出せるのだが、それはカンガルーとて同じこと。今よりも倍は速く走れるのだ。しかもこの独特な走法、普通に四肢で走るよりもエネルギーの消費が少ないときたものだから、これが如何に凄いのかがわかるだろう。




 さてカンガルーだが、こんな夜明けよりも早い時間帯に走っているのには訳がある。仕事だ。カンガルーは、現在お仕事の真っ最中なのだ。決してぴょんぴょんと跳びはねているだけではないのである。


 カンガルーは目標を捕捉すると、足を止めて己の得物を袋から取り出し、狙いをつけて一息に放り込む。


 ――ガタンッ。


 音を立てて、新聞紙(得物)はきっちりと郵便箱(目標)に入った。それを確認したカンガルーは「うむ」と一つ頷き、次の配達場所に向けて再び走り出す。




 カンガルーの仕事。そう、それは新聞配達であった。




 カンガルーは常々考えていた。このお腹の袋を使って何か出来ないものかと。


 カンガルーのお腹には有袋類の特徴である、大きな袋がついている。これは育児嚢と呼ばれ、我が子を文字通り肌身離さず大事に育てるためのものだ。


 だがそんな袋も、我が子が大きくなって独り立ちすれば使わなくなる。無用の長物になってしまうのだ。そのことにカンガルーは強く憤りを覚えた。


 それではいったい何のためにお腹に袋があるのかと!!


 ……いや、いったい何のためかと言えば先に述べた通り我が子を育てるためでありそれ以上も以下もない訳だが、そうではない。お腹に袋を持って生まれたからには、死ぬまで使い続けたいではないかと。だから無用の長物になることに強い憤りを覚えたのだ。


 それに何より、カンガルーとしての商標イメージにも関わる問題だ。カンガルーとは、何かぴょんぴょん跳びはねててお腹に袋がついてる動物。そう周知されているのだから、そのイメージは守らなければなるまい。それがプロというものだ。




 結果。


 様々な仮定を重ね、積み上げたことで、カンガルーは新聞配達をすることが決定したのである。


 お腹の袋に入る量には限りがある。それでいて、幼子が立派に育つまではそちらを最優先にすべきであるから、自ずと時間も限られてくる。何かしら袋には一時的にしか収められないだろう。


 そこでまず思いついたのが、宅配便だ。足の速さと体力には自信があるのだ、時間帯を限定すればちょろりと出来るだろうと。だが、運べる荷物の重さと大きさに限りがある上に、ワレモノやナマモノといったものも安全面の観点から除外すべきため、あえなく断念。


 方向性は間違っていなかったはずだと、首を傾げたカンガルーが次に思いついたのが、新聞配達だった。これなら壊れることも、傷むこともなく、時間帯や運ぶ量をある程度調節できる出来るではないか。


 そう思えば、行動に移すのみとカンガルーは動き出し、今に至ると言うわけだ。


 ちなみに後日、思いついたものとして葉書や封書の配達がある。次点で、貴重品の護送。こう見えてカンガルー、結構強い。尻尾を支えにしたドロップキックは人間ならば内臓破裂を免れない威力を持つ。さすがは厳しい自然を生き抜いてきた野生生物と言ったところか。


 とは言え、現時点では思いついていないので、ここから先は語られざるifの物語となるだろう。まあ語ることはないのだが。


 今語るべきことは、カンガルーは今日も元気に新聞配達をしたと、それだけで充分であろう。






 ペンギンの物語を書いていたはずが、気づけばカンガルーなんぞを書いていた罠。


 いやまあ、ペンギンのを考えている途中、飛べない鳥仲間であるダチョウを出そうかなーと考えて、そこから連想したオーストラリアから派生して思いついたのが原因なんですが。




 ちなみに没案として、このカンガルーは魔法的な何かが使える種族(=魔獣)であり、お腹の袋を未来の青狸型ロボットが持つ四次元ポケットみたくして宅配便として働くと言う計画があったりなかったり。

 まあ、その魔獣な設定も元々はペンギンのネタで使うかどうか考えたやつなんですが。




 あ、あと最後に作者はカンガルーについて詳しくありませんので悪しからず。と言うことで、もしこれを読まれた方にカンガルーファンやカンガルー博士的がおられましても、許して下さいませ。

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