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街が闇に包まれることはない。

夜の闇が深まるほど、街は一層明るさを増していく。

今は深夜一時をまわったくらいだろうか。洋介は中々寝付けないので、気晴らしに夜の散歩へと繰り出していた。

辺りは活気溢れる若本達で賑わっている。けたたましいバイクのエンジン音をBGM代わりにネオンで彩られた街中を当てもなく歩く。

「お兄さん!良い物あるんだけどさぁ、買わない?」

背後から軽い口調の声で呼び止められる。振り向くと十六・七くらいの二人組の男が何やら白いカプセルの入った袋を掲げている。

「これ『B』っての、知ってるだろ♪」

「悪いね~、お兄さんお薬嫌いなんだ」

ごめんね、と洋介はにっこり笑って少年たちに手を振りながら、その場を後にした。

その後も二、三人の少年少女に声をかけられ、中には『B』を求めて来る者もいた。

『B』とは最近、中学・高校生の間で流行っている新種のドラッグだ。視界に映る若者の一体どれだけがドラッグを服用しているのだろう。

世も末だなーとしみじみと心の中で呟く。

一時間ほど歩いただろうか。

心地よい睡魔が訪れてきたので、洋介は家路へと足を向けた。


翌朝、深夜の散歩のおかげでぐっすりと眠った洋介は、いつもより早く目覚めたため、のんびりと朝食をとっていた。

テーブルの隅に置いていた新聞を手に取ると、一面に大きく載っている『B』常用者の死亡の記事が目に入った。

『B』服用者の死亡はこれが初めてのようだ。

死亡したのは十三歳の中学一年生だという…。洋介はいたたまれない気持ちで新聞を見つめていた。

不意に涙が頬をつたう。

だがこの涙は、死亡した少年に向けたものではない。理由は分かっている。

洋介は涙で霞む瞳を窓際の壁に向けた。白い壁には小さな写真が飾られている。

写真には誰か写っているようだが、今は目が霞んでよく見えない。

幾つもの込み上げてくる思いを必死で抑えようとするが、溢れて来るものは止まらない。

落ち着くまでには時間がかかりそうだ。

これから仕事だというのに…

今日は仕事にならないかもしれない。

ぼんやりと、そんな事を考えながら洋介は暫く思いに身を委ねる事にしたー…。


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