女性はメイジフォックスが突然動き出さないかと警戒しながら近づいて生体反応を調べる。
(女性)「………どうやら完全に気絶したみたいね。」
そして女性は警戒を解き、ゆっくりと充の元に近づいてきた。
(充)「大丈夫かよ?」
(女性)「それはこっちのセリフよ。あなたは私に守られてたんだから。」
(充)「それはマジでサンキューな!!お前のおかげで助かった笑」
充は満面の笑みで女性にお礼を言った。
(女性)「まったく、よくわからない言葉も使うし………あなた一体何者なの?」
(充)「何者って程でもないんだけど………斉藤充、高校2年生だ。」
(女性)「サイトウミツル?全くもって聞き慣れない名前だわ………」
女性は不思議なものを見るような目で充を眺める。
(充)「そういうお前はなんて名前なんだよ?」
(女性)「そういえば自己紹介してる余裕なかったわね。私はロイズ・ファンドーラ。王国護衛隊に所属する三等兵よ。」
(充)「やっぱりこっちも聞き慣れない名前だぜ。あ~一体俺に何が起こったってんだよ………」
充は両手で頭を抱えて悩みだした。すると!
(ロイズ)「!」
ロイズは突然驚愕の表情を示す!
(充)「ん?どうした………わっ!!」
ロイズはいきなり充の右手首を掴み、まじまじと手の甲を見つめだした。
(充)「あぁそれか?ここに来た時からそこについてたんだ。」
(ロイズ)「………」
ロイズは充の右手の紋様を見ると震えだした!そしてロイズは右手を放して突然詫びるように頭を下げる!
(充)「おい!!どしたんだよ!?」
(ロイズ)「今までの数々のご無礼をお許しください!!あなたが王家の者であるとはつゆしらず本当に申し訳ございませんでした!!」
(充)「はぁ?」
ロイズの声は涙ぐんだ様子で少し裏返っていた。その様子を見て充は非常に焦りだす。
(充)「ちょ、ちょっと待て!!俺は間違っても王家の者なんかじゃ………」
(ロイズ)「その右手の紋様は紛れもなくディオン国王の刻印!!王国護衛隊でありながらその王家の者になんたる非礼!!真に申し訳ございません!!この罪は死を以てでも償わせていただきたいと思います!!」
ロイズの死をも覚悟して頭を上げようとしない態度に充は焦りを通り越して困り果てるしかなかった。
(充)「お前、死を以てでもって………とにかく落ち着けよ。頼むから土下座してないで顔上げてくれ。じゃないと話が前に進まねぇだろ?」
(ロイズ)「………………………はい。」
ロイズはしばらく考え込んだ後、王家の者の命令として甘んじて受け入れようと思いゆっくりと頭を上げた。
その顔は溢れる涙と生い茂る草と葉でひどく醜い顔となっていた。
(充)「俺だって何が起こってんのかわかんねぇのにせっかくここで会った人間にまでパニック起こされちゃどうしようもねぇんだよ。とりあえず他の人がいるとこまで案内してくれねぇか?」
(ロイズ)「わかりました。」
ロイズは立ち上がって充を誘導するように前を歩いていった。
だがロイズの眼からは未だ溢れんばかりの涙が流れていた………