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5話:トウメイは特訓する

 スイリュウの予想通り、2日後に炎嵐が吹き荒れる。

 水の結界を張った後、スイリュウはトウメイの元へ訪れる。

「やぁ!とぅっ!」

 塔の入り口あたりから声が聞こえる

「ただいま。まだ始めたばかりだけど感覚はどうかな?」

 スイリュウが塔に入ると小さな射撃場が眼前に広がる。

「いいえ、まったく!でも、単純に身体を動かせて楽しいです!」

 トウメイは水鉄砲を構えながら応える。


 時は遡って……

「これは、水鉄砲?」

 トウメイは訝しげに机に置かれたモノを見る。

 机には何の変哲もない水鉄砲が置かれている。空気を圧縮して威力を上げる機構も無い、引き金を引いたら水が飛ぶ仕組みの簡素なモノだ。

「そう。これに止水(しすい)を入れて撃ってみて欲しい。水そのものに魔力が篭っているから、手元から魔力が離れる感覚を感じるためのとっかかりになると思うんだ」

「でもさ、トウメイの持ってる魔力量に対して飛ばす水の魔力量が少なかったら意味なくない?たった一つの汗腺から汗が出るのを認識するようなものでしょ?」

 そう割って入るのはパレット。

「その通り。大事なのは漫然と水鉄砲を撃つ事じゃなくて、目的をもって撃つ事。さっきも話したけれど、改めて僕と初めて会った時を思い出してごらん」

「あ、なるほど」

 トウメイは得心する。

「あの時、無意識ではあるけれどトウメイの魔力は指向性を持って僕に向かってきた。あの時の再現を水鉄砲でやるのが目的」

「ふぅん、なるほどね。ということは、トウメイを怖がらせてまた腕を落とさせるってこと?」

「いや、それが効率良いとは思うけれど、そんな脅かしはしたくない」

「なぁんだ、特訓を良いことにセクハラするものだと」

「ちょっとパレット!」「冗談冗談。今少しトウメイの魔力が来た気がする」パレットはニヤリとする。こんな双子のやり取りにスイリュウはすっかり慣れていた。

「話を戻して、目的はわかった?最初のつまずきポイントではあるけれど、そこを超えればとんとん拍子になると思う。頑張ろう」

「はい!よろしくお願いします、師匠!」


 時は戻って……

 トウメイは半袖にハーフパンツの動きやすい格好で髪を後ろにまとめている。

(初めて出会った時とは別人みたいだ)とスイリュウは思った。

「なにいやらしい目で見てんの」

 ジットリと睨むのはパレット。

「本当に君は言いがかりが好きだな。ずいぶんと活動的だなとは思ったけれども」

「お母さんが生きていた頃は塔から出た時はめちゃくちゃ元気だったわ。引きこもってからも多少は運動できるから一緒に遊んでたし」

 心なしかむすっとしながらパレットは語る。

「ねぇ、こんな的当てで改善できると思ってるの?」

 ぶっきらぼうにパレットがスイリュウに投げかける。

「彼女の真面目さと、生きる意志に賭けてるよ」

「なにそれ、確かに自慢のお姉ちゃんだけど?それだけどうにかなるの?」

 当たり障りの無い回答に食い下がるパレット。

「師匠、パレット、恥ずかしくて集中できないです……」

 二人に間接的に褒められたトウメイはほんのりと赤い。

「まぁ、なんて愛らしい愛しのお姉ちゃん。そんなお姉ちゃんのために妹はプレゼントを贈るよ」

 そう言うとパレットは懐から何かを放った。

「え、なに……ひっ!」

 ブンと低い音を鳴らしながら黄色と黒の警告色を纏った蜂が空を舞う。

「大丈夫、刺さない子だから」

 パレットは自身が放った蜂を眺めながら声をかける。

「も~~蜂が苦手なの知ってるでしょ!どうしてこんなことするの?」

 蜂のいない方へ後ずさりしながら抗議するトウメイ。

「これくらいの危機感ならちょうど良いかなって思ってね」「もう何が!?きゃっ!」姉妹の口論が積み重なっていく内にトウメイの元に蜂がやってくる。

 トウメイは水鉄砲を持つ腕をブンブンと振りながら水を乱射する。そんなノーコン射撃で当たるはずもなく、水が無くなるまでトウメイは撃ち続けた。


「パレットの方法は乱暴だったけど、収穫はあったかい?」

 水鉄砲を乱射し、蜂を捕獲し、濡れてはいけないところの拭き掃除を終えて三人はお茶菓子をつまんでいる。

「成果はあったと思います。目に見える水よりも太く魔力が飛んでいる感覚はありました」

 むすっとしつつも効果はあったことで強く出られないのだろう。なんとも言えない表情でトウメイはパレットを睨む。

「これで効果無いなんて言ったら怒ってたよ。見てよこのおでこ、あんな弱弱しい水鉄砲から飛んだ水が直撃したなんて思えないよ」

 パレットはおでこをさすりながら涙目で訴える。トウメイが乱射した水鉄砲が額に直撃したのだ。

 ただパレットは自業自得とは考えていないようだった。


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