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26話:トウメイは旅立つ

 四人はテントの居間の席についた。ハナはミミの膝の上に座っている。

「私は誰でも魔力を抑え込める手段を探そうと思います。私は運よく師匠に出会い、街の人達に背を押してもらって、魔力制御の技術を学ぶ事でこの体質を克服する事ができました。

 けれど、そうじゃない人達もたくさんいると思います。そんな人達の力になりたいと思いました」

「元々ミミ達に紹介状を書いていたし、僕は良いと思う。ただ、あえて意地悪く訊こう。君が勝ち取った命を誰かに捧げるのがやりたい事なのかい?」

「本当にイジワルですね。でも私の大切なモノを守るためでもあるんですよ?」

 トウメイはイジワルだと責めつつも、ニヤリと笑う。

「それは?」

「まだ見ぬ甥姪とか」

「なっ……」

 パレットが少し間をおいて言われた意味に気づく。

「私達のケースが特殊なので実際にどうなるかはわからないですけれどね。もし、二人の子が私と同じだったなら、その子を救うのは私でありたい。そう思ったのがキッカケです。

 まぁ師匠も元気ですし、お子さんなら私と同じようにレクチャーする事で解決できるとは思いますけれどね。それならそれでひ孫やもっと先の子孫の為に尽力するつもりです。

 まぁ、私に子ができるかもしれませんしね、自分の為です」

 最後は少し軽い口調で話す。

「私にとって師匠と過ごした時間はかけがえのない楽しいものでした。けれど、誰もがそうとは限らないし、人並みの命を勝ち取る為に苦労するべきじゃない。

 誰もが、とは言えませんが、私と同じような人達が大切な人と同じ様に年を取り、幸福になり、死んでゆく、当たり前の幸福を手にできるようにしたいんです」

「キッカケが私達って言うのがトウメイらしいわ。私は応援する」

「ありがとう、パレット」

 二人はスイリュウの方を向く。

「僕ももちろん応援するよ。そしてそんなトウメイに渡しておくものがある」

 スイリュウは立ち上がり居間を出た。

「なんだろう。指輪はパレットがいる前で貰うのは気が引けるなぁ」

 トウメイ!とパレットが声をあげる。

「うわき?」

 ハナがミミの膝の上で言葉にする。

「浮気じゃないですよ~」

 トウメイが楽しそうに返答する。

「もう。トウメイも交えて直接話したい事があるってさっき言ってたから多分それだと思う」

「なるほど。なんだろうなぁ」

「お待たせ。これが渡したいもの」

 スイリュウは木箱から銀の腕輪を取り出した。

「あれ?なんか見覚えある気がする」

 パレットは訝しげにその腕輪を見る。

「パレットは見たことあると思うよ。これは君達の母親であるシラユキさんから預かったものだから」

「え?えぇ~~!?」

 トウメイが叫ぶ。

「説明するから落ち着いて

 まず始めに、僕がトウメイの元へやってきたのは偶然じゃない。シラユキさんに頼まれてきたんだ。ずいぶん時間は経ってしまったけれどね。

 僕の元を訪ねてきたのは10年くらい前の事で、多分パレットもついてきてたんじゃなかな?」

「そうかもね、通りで見覚えがあるわけだわ」

「シラユキさんが僕を訪ねた目的は滞留だった。どういう情報網を持っているのかは知らないけれど、彼女は滞留についてよく知っていた。

 特に興味があったのは肉体の停滞についてだった。

 端的に言えば滞留がもたらす不老の効果だけを抜き出す事はできないか知りたかったみたいだ。シラユキさんやトウメイ、これから先の子孫が人並みに生きれる手段を探していたんだろうね。

 それに対して僕は、当時の自己評価や滞留の精神面にもたらす影響をモロに受けていたから協力的ではなかった。できないと早々に思っていたからね。

 それならばとトウメイに魔力操作の方向で救う事を依頼してきた。

 当然僕は断ったけれど、自分でもできると思った時に顔を出して欲しいと言って頼みこんできた。

 この腕輪はその担保みたいなものだよ。

 もちろんただの腕輪じゃない。シラユキさんはこの腕輪を身につけている間、魔力の放出が抑えられていた。

 まぁ実際は腕輪に魔力を吸わせているだけで、体質は改善されていないのだけれどね。それでも魔法技術で整備された場所に迷惑をかけずに出歩く事はできる。

 どうしてこれをトウメイに託さずに僕に渡したのかはわからないけれどね。

 彼女はこれを最後に死ぬまで街にいると言って去って行った

 そこからさらに10年ほど方々をふらつきながら自分の中での許容量を広げて、トウメイを救うことは簡単な事で、滞留の制限に抵触しないと確信が持てるようになったから君達の元へ訪れた」

「最初から知っていたんですね」

「うん、君達の父上も話だけは聞いていた。大事な腕輪を手放して帰ってきたから、不審がってすぐに問い詰めたらしい」

「すっとぼけようとしてるお母さんが目に浮かぶわ」

「腕輪の方に話を戻すよ。この腕輪は一点ものの魔道具で、作用機序がハッキリしていない。機能から推察はできるけれど、分解する訳にもいかなかったからね。

 これを君に渡そうと思う。気分的には返却だけどね」

「良いんですか?」

「もちろん。君の理想を叶えるにはきっと魔道具についての知識が必要になる。それがわかっているからミミ達に師事しようと思ったんでしょう?

 しっかり学び、できる事を増やして、イケると思ったら腕輪を分析したらいい。まぁ、空振りな気はするけれどね」

「一言多くないですか?」

「ごめんごめん。実際、この腕輪を解明しても魔力暴走を起こしている人達の根本的な解決にはならない可能性の方が高い。魔力を吸い続ける機能がついているだけだからね。

 けれど、君はこの母の形見を丁寧に、念入りに、身につけたすべてを使って解明すると思う。

 その経験は絶対その後に出会う本命の技術の解明に役立つ。

 まぁ、なんていうか、トウメイ、期待してる。僕達の未来を照らしてほしい」スイリュウはパレットの手を握る。ビクっとしたパレットははにかみながらもトウメイを見つめる。

「……!はい!」

 トウメイはそんな二人を眩しそうに眺めながら決意を漲らせた。


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