25話:姉詰める
「あ!ママ!!」
居間に戻ったハナがちょうど帰ってきたミミとトウメイを出迎える。
「あら、ハナちゃんただいま。スイリュウはまだ寝てるのかな?」
「あのね、スイリュウがけっこんした!」
カチャリとドアが開く音がする。寝室からスイリュウとパレットが戻ってきた。トウメイは二人の距離の近さに気づいていた。
間が良いのか悪いのか、ハナの爆弾発言もしっかりと聞いていた。
パレットがスイリュウの陰に隠れた。隠れるまでのわずかな時間でパレットの顔が真っ赤に染まっていた事をトウメイは見逃さなかった。
スイリュウはバツが悪そうに頬をかきながら言い訳を考えている。
「二人とも」
ミミがニッコリと表情を作る。
「はい」
スイリュウとパレットは背筋を伸ばす。
「場をわきまえてください?」
「申し訳なかった。一応話しておくとほっぺにしただけで、ミミもハナにしているからセーフかなって思っ……すいません」言い訳は最後まで続かず、ミミの笑顔に遮られた。
「はぁ、まぁ思っていたより健全だったので良いです。めでたい事ですしね」
ため息をつきながらミミのニッコリ笑顔が優しげな微笑みに変わり、場の空気が緩んだ。
「パレット」
トウメイが声をかける。
「うん」
スイリュウに隠れていたパレットが顔を出す。
トウメイがパレットの片腕を両腕を使って引っ張り出す。そして前のめりになったパレットを抱きしめた。
「伝えられたんだね。良かった。幸せになってね」
耳元でトウメイが囁く。パレットがトウメイをギュッと抱きしめ返す。
「ありがとう」
パレットが愛おしそうに返事をする。
「聞いて、私は私で皆からもらった命でやりたい事がハッキリしたんだ。」パレットと向き合ってニッと笑う。
その後、トウメイはスイリュウに目を合わせる。
「師匠、パレットを泣かせたら世界の果てからでも会いに行きますからね」
「わかってる。けど、きっと泣かせてしまう時もあるかもしれない。その時はどんな叱責も受けるから助けて欲しい」
情けない限りだ、と自嘲しながらも正直にスイリュウが頭を下げる。
「はぁ~できない事は断言しないところは師匠らしいですけれど、今のは無しですよ。お父さんが聞いたらぶん殴られますよ。でも、抱え込みすぎな師匠が自分から助けを求めるようになったのは素直に嬉しいです」
スイリュウの性格を理解しているトウメイは、ダメ出しをしつつも満足そうに頷いた。
「スイリュウ、そこは見栄でもパレットちゃんをキュンとさせないと」
それに対してミミはしっかりとケチをつけた。
「いやいやミミさん、パレットはこのどっちつかずな返しも頼る事を覚えた師匠の事も大層気に入っているみたいですよ。もーー心拍数がすごいです。身体もあったかいなぁ」
そんなミミにトウメイが告げ口をする。
パレットは限界になってトウメイから身体を離し、スイリュウの元へ戻った。
「あらあら、似た者同士ですねぇ」
トウメイはニヤニヤしながらスイリュウを見る。
スイリュウが今まで見たことも無いくらいに顔を紅潮させている。
「こんなスイリュウ初めて見た」
ミミも驚きながらも面白がっている。
「ねー」
ハナもそれに同意の相槌を打つ。
「勘弁してくれ……」
スイリュウは額に手を当てながらうつむいた。
「収まるところに収まったという事で大満足なのでここまでにしておきましょう。私の話も聞いて欲しいですし」
「どんな話なの?」
顔の赤みが引かないまま、パレットが話題変更に飛びついて相づちを打つ。
「師匠の下を離れて、ミミさん達の下で学びたいと思っています」




