20話:三人は旅立つ
街の入り口に三人はいた。
今日は炎嵐。この街で自身の価値を最初に示した日をスイリュウは思い出した。
住人には挨拶を済ませた。ブルには念入りに双子の事を頼まれた。
「よし、行こうか」
スイリュウは傘を取り出し、ひろげた。
「初めは駅に向かうんですよね」
炎を傘が防ぎながら、トウメイが確認する。
「そう、大した距離じゃないよ」
「私がお母さんと行った時は小さかったのもあってすごく遠く感じたなぁ」
「む、知らないのは私だけですか」
「何度目の反応よ」
このやり取りは旅立つまでの間何度も繰り返されていた。
「何もかも初めてなんだ、たくさん楽しむといいさ」
「電車にはしゃぐ成人済みの姉は反応に困るのでほどほどにしてほしいけれどね」
「ひどくない!?みっともなくキャッキャしながら目を輝かせるよ?」
「脅迫の仕方が怖すぎる」
時間にして2時間ほど経過した。
「時間的にはもうすぐ到着するはずなのに、線路が見えませんねぇ」
三人は不毛の大地を超えてチクナミの市街地にすでに入っている。
トウメイが少しだけ緊張しながら市街地の中に入ったのはまた別の話。
「もう到着するよ」
「え、どこにも線路がありませんよ」
トウメイはあたりを見回す。
「あぁ、あえて電車の情報を調べてなかったもんね。地下にあるのよ」
「え、そうだったの」
「お手本の反応どうも。ほら、そこから降りるよ」
三人はエスカレーターに乗り、地下へ潜る。
エスカレーターを降りた先には広い空間があった。売店に地域の物を扱う店、乗車券売り場がある。
「さ、お姉ちゃんは切符が買えるかなぁ?」
意地悪くパレットが語りかける。
「それくらいはできますよ」
タッチパネルを凝視しながら一つ一つ選択してトウメイは切符を買った。
「すごい速いですね」
声を落としてトウメイがささやく。
電車内ではしゃぎ過ぎないように釘を刺されたからだ。当然トウメイはそれくらいわかっていると不満顔だ。
「踏切が無いから人の立ち入りを考えなくて良い分速度を出せるんだ。僕の故郷の路線に乗ったら多少はゆっくりになるよ」
「なるほど」
「しっかし毎日嵐に晒されないなんて良いところよねぇ。あれさえ無ければもっと近所に駅あったのに」
「そういう土地を選んで二人のご先祖様は住み着いたんだからそれは仕方ないよ」
「わかってるって。まぁ、距離だけで言えば徒歩二時間くらいだしね。魔法が使えなきゃ越えられないけれど」
「あ、そろそろ乗換ですね」
三人は電車を降り、次の路線へと向かった。
「ん~~、着いたぁ」
トウメイが改札を通って伸びをする。
「思ったより近いのね。街から駅に歩いてる時間の方が長かったわ」
「実はそうなんだよね。多分、パレットが世話になった魔法使いも近くにいるかもしれない」
「あぁ、やっぱりそうか。なんだか見覚えがある景色があったけど、あの時は道のりがわからなかったのよね」
「まぁその話はひとまず置いておいて、テントを張れる場所まで移動しよう」
「ん?地元じゃないんですか?」
「地元ではあるけど、そこは一度気にしないでくれると助かるかな」
「ふーーんまぁ確かに実家への挨拶は問題を解決してからの方が良いですもんね」
「トウメイ!」
パレットが姉に声を荒げると、トウメイはにやにやとしながら先に歩き出した。
「さぁ、師匠。日が暮れる前にキャンプ地に行きましょう」
「はいはい。行こうパレット」
「はぁ」
パレットはため息をつきながら二人に続いた。




