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転生だと……? この躰の元々の持ち主はどこいった?

作者: スミスミス

「あなたの善行は驚愕に値します。

 あなたが救った数多の者たちからの願いに従い、あなたを異世界に転生させますので、今度は他人の為に命をかけて奔走しないような人生を歩んで下さい。

 とにかく自分を大切にして下さい。いいですね、命大事にですよ? 命は命でも自分の命ですよ? 他人の命ではありませんからね!!!

 これはあなたが救った数多くのものたちの願いです、神まで届く程の数多くまた純粋な願いなんて本来あり得ないんですからね。奇跡ですからね。それをゆめゆめお忘れ無きよう。

 以上、こちらは転生の女神がお贈りいたしました。それでは二回目の人生をさんはいっ。……レッツエンジョーイ!!!」


 私を抱いていた自称女神だが、神にふさわしい神聖を纏っていたと思ったいきなり俗っぽくレッツエンジョーイときたもんだ。

 テンションと表情の乱高下で風邪引きそうだ。二重人格なのかコイツ? それともカミサマってはやべえやつしかいなのか?

 とにかく状況が理解できない。

 ああ、ええと、確か私は怪我のせいで病床に伏せ死んだはずだ。意識が遠のいていき四肢が端っこから冷たくなっていくあの感覚は忘れられそうにない。

 これが死かと、しとしと理解させられる寂寥感だった。

 ただ死に行く私の回りにはたくさんのヒトがいて、私の死を悼んでくれていて。

 まぁ満足行く人生だったと思う。

 これ以上は蛇足になりそうだし、良いタイミングで死ねたと思う。これから下手に生き延びて躰は動かなくて誰かに介護されたり、ボケて自我が歪んで何かに当たり散らすようになってしまったら目も当てられない。皆は生きていてくれるだけでありがたいなんてお世辞を言ってくれてはいたが、わたしはそれに耐えられない。

 だから、重ねてになるがいい人生だった。悔いは無い、出来ることをして、助けられるヒトを出来るだけ助けて、最期にはこんなに多くのヒトに見送られて……。

 だったのに、生まれ変わり? 転生だって? 蛇足も蛇足だ。いらんいらんそんなの。

 わたしは自分の人生を全力で駆け抜けた。取りこぼしたモノもたくさんあるけれどやり直したいとは思わない。

 それにしても死後にそんなアフターサービスがあるなんて知らなかった。 

 もしかして、今まで私が関わってきた誰かも誰かの生まれ変わりだったのだろうか?

 なんか考えたら恐くなってきた。転生できたらコンティニューかもしれないが、出来なかったら……ゲームオーバーになってしまった者はどこへ行く?

 子供の頃に死について考えて恐くて眠れなくなるあの感覚を思い出しながら抗いがたい眠気に襲われる、逆らおうとするけれど、ダメだ、これ寝る……わ。


 


 次に目覚めると眼前には知らない女性と男性がこちらを見下ろしていた。

 二人とも笑顔でこちらを見下ろしている。明らかな幸福感を感じる。


「ほら見てごらん、なんて可愛いんだろうね?」


 男性がわたしの頬をつついてうっとりする。

 破顔と称するのがふさわしい、この男性のおでこにはいくつも苦渋から来るであろうシワが走っていたが、現在それらを使うことはふにゃふにゃの表情筋だ。


「ちょっと、眠そうなんだから邪魔しないの」


 女性は男性を窘める。そして男性はわたしと女性に謝罪する。

 いい家族体系なのだろう。平等な幸せのカタチが確かにここにはあった。

 状況を確認しようと体を起こそうとするが……動かない。

 わたしの最期の時は怪我と老衰でガタが来ていたから満足に体が動かなかったけれど、あの不自由感とは違う。

 意味がわからないけれど、どうやって体を動かせばいいのかわからないのだ、以前は普通にやっていたことが出来ない、意識せずに行っていたことが意識しても出来ない。

 声を発しようとするけれど、意味の無い声が漏れるばかりだ。

 これも同様に以前はどうやって話してしたかわからない。声の出し方がわからない。

 嗚呼、あの自称女神の言うとおりになってしまった。

 どうやらわたしはこの二人の子供として転生してしまったようだった。


 


 赤子になって第二の人生を送ることになったわけだが、以外とやることはたくさんあった。

 わたしが両親を凝視するとステータスが浮かんでくる。

 目をつぶって意識を集中するとわたしが今後覚える事が出来る魔法やら技能やらがスキルツリーとして浮かんでくる。

 怪我未満の痛めている箇所や、潜在する病気やら本人の知り得ぬ事すらのぞき見れるステータスオープン。相手の心情や実力をはかるには充分すぎる、これなら人心掌握も容易いだろう。

 そして自分が進むべき努力を可視化したスキルツリー。無駄な努力をする必要がなく最短で最高の結果を得られる。これは生前のわたしも欲しかったわ。何かを極めるには人生は短すぎる。

 挙げ句に、わたし自身のステータスを確認すると今後努力次第で伸びるであろうあらゆる数値が凄まじいことになっていた。

 チート持ちの天才。

 あの自称女神は過ぎた能力をこれでもかとわたしに与えてくれたようだ。

 きっとこれからのわたしの人生は如何様にもなる。確約された成功である。

 望めば望んだだけあらゆるものになれる。望んだだけもたらされる。

 英雄にだって魔王にだって王様にだって独裁者にだって、もしかしたら神にだってなれるかもしれない。

 

「……」


 ようやく首が動くようになったのでできるだけ回り見渡す。

 わたしを取り囲むようにいくつも絵が飾ってあった。

 いくつもいくつもわたしを取り囲むように壁にかけてある。

 それらはすべてわたしと母を描いた肖像画だ。母は朗らかに笑い、赤子は仏頂面。

 そんないくつもの仏頂面と目が合うのだ。

 わたしがこの二度目の生を受けてまだ一年も経っていない、それなのにものすごい数の絵がある。

 成長記録として残しているのだろう。

 これを見るたびにわたしは心が潰れそうになる。

 わたしが現状、この躰を使っている。

 本来この躰を使うべき子を押しのけて使っている。

 当然ながらこの子にはこの子の人生があっただろう。なのにわたしがそれを潰してしまった。

 こちらの勝手な都合でひとりの未来ある若者の人生を台無しにしてしまった。

 ふざけている。

 一個の生は尊重されるべきなのに、老害の自己都合で終わらせてしまった、当然許されることではない。わたしはさっさと消えるべきだ。

 消えたい、謝罪したい、この躰を元の持ち主に返したい。

 チートを与えられた第二の生を謳歌しようなんてとても思えなかった、そんな非人道な事は赦されない。

 果たしてわたしが消えれば元の持ち主は戻ってくるだろうか?

 正直わからない。戻ってくるかもしれないし戻らずにそのままこの躰は朽ちていくだけかもしれない。

 わたしが前面に出ているだけで元の持ち主は心の奥底で眠っているだけかもしれないし……考えたくはないが、わたしがこの躰に元の持ち主を押しのけて入ったせいで死んでしまったのかもしれない。

 わたしが殺してしまったのかもしれない。

 どうしよう、発狂してしまいそうだ。

 わたしを取り囲む無数の絵画の赤子、現在それはわたしになるのだがそんな赤子がわたしを見咎めているようだ。赦されざる犯罪者を睨みつけているかのようだ。

 元の持ち主の安否がわからない以上、捨て鉢な手段を取ることは出来ない。

 今わたしに出来そうなことは、この子がいつ帰ってきてもいいように、なるべくスムーズにバトンタッチ出来るように演じること。

 全然エンジョイなんて出来ない。

 あの女神、ヒトに罰ゲーム押し付けていきやがった。

 しかし一番の被害者は間違いなくこの躰の元の持ち主だ。本当に申し訳ないのとしか言えない。

 充分すぎる能力を与えて転生させれば万人が喜ぶと思っているあのクソ女神を締め上げて解決策を提示させる。

 それかこの赤子の……というか現状わたしのスキルツリーの果てにある魂をどうにかするための技能を極めるか。

 第二の生は贖罪の生になることが早くも確定してしまいはやくも投げ出したくなるのだった。

 いやこの子の為に絶対に投げ出せなねぇけどね。

 

 

 

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