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BLACK SERPENT  作者: Mr. Bulldog
Season1
5/11

Chapter 4:影

ニューヨーク市警、捜査第3課。書類が山積したデスクの奥で、ジョニー・サンダース刑事は眉間に深いシワを刻んでいた。


「おい、ジョニー。もう上から決まってんだろ?地下鉄爆破の犯人は、FBIのあのエージェント――スネークとか言うやつでさ」


同僚が苦笑いを浮かべて言う。


「本名、トム・カーティス。証拠は山ほどあるんだ。指紋、目撃情報、防犯カメラ……それにFBIだって黙ってる。つまりクロだよ」


ジョニーはゆっくり顔を上げ、目を細めた。


「だが――動機がない」


「は?」


「彼の記録を見ろ。FBI内でも精鋭扱いされてた男が、なぜ突然民間人を巻き込む爆破を起こす?しかも、直前までZを追っていた。……おかしいだろ?」


同僚は肩をすくめて離れていく。ジョニーは画面を睨みつけながら、犯行現場の映像を巻き戻した。


再生――00:03:12トムが駅に現れ、爆破の直前に背後を歩く黒い帽子の男。


ジョニーは息を止めた。


「……お前は誰だ」


そして次に、トムが市街地でバイクで逃走していた日の防犯映像を調べた。


カメラの片隅に――見覚えのあるシルエットが走っていた。


「黒い帽子……ニューヨークにも、東京にも現れた……。つまりトムは、そいつを追ってる?」


ジョニーの目が鋭く光る。


「くそっ、真犯人がいるってのに……!」


彼はデスクの下に隠していた個人用端末を取り出し、独自捜査のファイルを立ち上げた。


【調査対象:黒い帽子の男】

【関連事件:Z関連爆破事件/生物兵器疑惑】

【追跡対象:トム・カーティス(FBI)】


「プランAは、Phase Sigmaのコアを破壊する。プランBは、東京での爆破阻止だ」


壁にプロジェクターで投影された地図と作戦図。トムがレーザーポインタで作戦を説明する。


ローズが言った。


「Zが使おうとしてる生物兵器……“選別”って言葉が何度も出てくるけど、具体的な対象や拡散方法がまだ不明なのよね」


「だからこそ先に止める。計画のコア、Phase Sigmaが実際に何を指してるか……その鍵を握ってるのがグレース博士」


スパイダーが画面に人物の顔写真を映す。


「元ノーザンアークの主任研究員。Zに転向後、行方不明。唯一の接触手段は……ネイルだ」


ベーカーが低く唸る。


「敵の中でもネイルは異質だ。トム、お前が接触できる可能性があるのは、あいつだけだ」


トムは無言でうなずいた。視線の奥に、過去の対峙の記憶がよぎる――迷いと怒り、そして共鳴。ネイルは、あの時確かに“揺れていた”。


「接触する。ただし、交渉が決裂すれば即座にプランBに移行する。東京を守る。それが最優先だ」


トムは会議が終わった後、一人、部屋を出て電話をかけた。宛先は暗号化された専用端末。数秒の沈黙の後、低い女の声が応答する。


「……この回線を使うとはね、スネーク」

「ネイルに伝えてくれ。会いたい、と」

「時間と場所は後で送る。でも保証はしない」

「構わない。……お互い、背負ってるものがある」


重厚な会議室。黒塗りの机を囲む数名のZ幹部たち。その顔には仮面。実名は不明。


中央のスクリーンに、ヴァイスが現れる。彼の背後には見慣れない“通信ホログラム”。


「Phase Sigmaの最終工程に向けて、東京での実験を予定通り進行させる。スネークらの動きは読んでいる。問題はない」


幹部の一人が声を上げる。


「だが奴の仲間が潜入してきている。ノーザンアークのデータも一部抜き取られた。グレース博士の位置も特定されたかもしれん」


ヴァイスの目が細くなった。


「我々の戦略は“試される”時だ。そして……私はただの実行者に過ぎない」


その瞬間、ホログラムの背後に新たな存在が現れた。輪郭はぼやけ、音声は変調されていた。


「Phase Sigmaは“選別”の始まりにすぎない。我々は進化の加速を実現する――ヴァイス、計画を続けろ。東京を皮切りに、全ては始まる」


会議室に沈黙が落ちた。


Zの黒幕――真に恐るべき存在がついにその影を現し始めていた。

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