洗浄。そして室外へ。
朝食後使った皿を洗っていると、男の声がした。
はて、この家に男はオレしかいないはずだが。
どこかで聞いたことのある声に耳をそばだてていると、どうやら朝のニュース番組から流れている事に気が付いた。
昨日の夜も見てたけど、ミカミってニュース番組が好きなのかな?
確かに面白いけど、積極的に見ようとまでは思わない。食事中他に見る番組が無いときにBGM代わりとしてチャンネルを替えるくらいだ。
それに最近は物騒な事件も多い。わざわざ気分が沈むような事をするほどオレはMじゃない。
それから皿洗いを続けること五分。洗った皿を乾燥機にかけ一息入れようと冷蔵庫に手を伸ばす。たしかプリンが余ってたはずだ。買いに行ったのはオレなんだから、オレが食べても文句ないよな。
そんな必要は無いのにコソコソと行動する自分がどうにも可笑しかった。
「リョーヤさん!」
突然のミカミの大声に、そんな必要は無いのに慌てて冷蔵庫の扉を閉める。
「ど、どうしたんだ?」
驚き暴れる心臓を落ち着かせるため、なるだけ平静を装って聞き返す。
悪戯が見つかりそうになった子供ってこういう心境なんだろうな。
「ちょっと付き合ってください!」
「付き合っ……別にいいけど」
なんかさらっととんでもない事を言われた気がしたが、きっとそういう意味で言ったわけじゃないだろう。
オレは漫画の主人公とは違うんでね。これしきで勘違いなんかするもんかっての。
「でも、いったいどこに――」
「百聞は一見に何とやらってね。いいからついて来い!」
「えっ、ミ、ミサ!?」
いきなり変わった口調に驚いてる隙に、目にも留まらぬ速さで近寄ってくるミカミ。口調からミサだと判断したものの、それがなんだといわんばかりにオレの手を取り玄関へ。
てか、そこまで言えるのなら最後まで覚えろよ。
「ちょ、か、鍵~!」
文字通り外へと飛び出たオレ達は、鍵をかけるのもそこそこに走り出す。
まぁ姉貴が居るから大丈夫だろう。
四季湖のほとりを駆け抜けながらそんなことを考えていたのは秘密だ。
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