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姉、再び参上!!

もう短くてもいいやーと開き直ってみたり……。



 這うようにして(比喩ではない)リビングに辿り着いたオレを待っていたのは、複数人の楽しげな笑い声だった。


「姉貴……みんな……」


 リビングから漏れてくる喧騒。普段なら五月蝿くて邪険に思うところだが、今回に限ってはそうじゃなかった。


 よかった。みんな無事だったんだ……。


 胸がジワッと熱くなり、視界がボヤケはじめる。慌てて涙を拭ったのは、姉貴達にからかわれりのを防ぐためだ。


 こんなとこ見られたら一ヶ月はネタにされ続けるに決まってるからな。


 ついでに深呼吸だ深呼吸。



 すーーー、はーーー

 すーーー、はーーー

 すーーー、はーーー



「……うっし」


 これでもう大丈夫だ。何が起きても動揺なんてしないはず。深呼吸は偉大だな、うん。


 オレはゆっくりとドアに近づき、念のためもう一度深呼吸。


 ドアを一気に開けて「オハヨウ!」だ「オハヨウ!」。姉貴だって起きたばかりのはずだから間違っては無いはず。


 一際大きく息を吸って準備万端。ドアの窪みに指をかけ、勢いよく開け放った。こういうのは勢いだ勢い!



 いざKA☆MA☆KU☆RA!!



「みんなおはyブアッ!?」


 リビングに突入した次の瞬間飛来した濡れタオルによって廊下へ弾き出されていた。


 こんな光景どこかで……。


「リョォォヤァァァ!!」


「はいぃ!!」


 オレは思考を強制終了してすぐさま土下座を敢行。頭上からの殺気だか殺意だかのオーラに押し潰されそうだ。


「コレハ一体ドゥイウ事ダ!」


 と言われましてもオレには何が何だか……なんて言えるわけなく、返事の代わりに額を床に擦り付ける。


「朝メシ! ソレトビデオ録画!!」


 すっかり忘れてた……。


「うわっ!」


 首根っこを掴まれて土下座したままズルズルとリビングへ強制連行。


 任意同行? なにそれ食えんの?


 子猫のようにつまみ上げられ椅子の上に正座させられると、目の前に空っぽの炊飯器とテープの飛び出たビデオデッキが置かれた。


 僅かに上げた視線の隅に、ニヤニヤ笑ってる幼馴染二人が映る。元気そうでなによりだけど、それ以上にムカつくんだよお前等……。


「今時ビデオテープって……」


 二人の後ろでオロオロと成り行きを見ていたミカミが呟いたのを、オレはしっかりと聞いていた。


 世間ではブルーレイやDVDでの録画が一般的と成りつつあるが、我が家は未だにビデオテープを使用している。



『高画質もいいけど、三倍録画の粗さ……あれはあれで味があって良いもんだよ。お前にもいずれ分かる時が来るさ』



 とは姉貴の談。確かになまじ綺麗なのより、少し粗い方が、作品をより身近に感じられる……ような気がするんだ。


「マズハ飯ダ!」


 再び思考を強制終了。今はそんなこと考えてる場合じゃない! ことは命に係わるんだ!!


「お望みのものを何なりと、何なりとお申しつけ下さい!!」


 結局そのあと、フルコース(和食が七割)を振る舞うまで姉貴の怒りは治まらなかった。


 もちろん材料費はオレの財布から出ましたとさ。グスン。


「モグモグ。また腕を上げたねリョーヤ」


「これならどこに嫁に出しても恥ずかしくないね」



「なんでお前等まで食ってんだよ!」




ご意見、ご感想お待ちしております。……短くてもいいよね?

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