穴
遅くなりました。が、例によって例のごとく、短いです。ごめんなさい。
……ドクン……ドクン
心臓が軋んだ音をたてて、オレの体中に命を走らせる。人の体がほのかに赤い色を帯びているのは、心臓によって体の隅々まで命が運ばれているからだとオレは思う。。
「何なんだ………」
変色したベッドカバーに横たわる姉貴は、病的なまでに白かった。赤黒いベッドに寝ているからなおさらに白く見えるのかもしれない。そんな姉貴の体からは命が感じられず、まるで体から一滴も残さず抜き取られたみたいに真っ白で、人の体はここまで白くなれるのかってそう思った。
「ね、姉さん……」
オレは恐る恐るその白い体に触れるが、見た目どおり姉貴の体はとても冷たかった。
「姉さん……姉さん!」
生きてるのならばありえない、あってはならない冷たさに怯み、引っ込みかけた手に力を込めて姉貴の体を揺する。オレに背を向ける形で丸まっている姉貴の体は、思った以上に硬く、重く、そして冷たかった。
―――――ゴロリ
揺する勢いが強すぎたのか数回揺すったら姉貴の体は仰向けに転がった。仰向けになったことで女性の普段隠れている肌の部分がモロに目に入った。
「ひっ!?」
転がってきたた姉貴の体を見て思わず悲鳴が漏れた。それと同時にオレの心臓が恐怖で締め上げられる。
「う、嘘だろ……」
姉貴の胸部に視線が釘付けになった。変色したベッドカバーなんかとは比べものにならないくらい強烈な光景に、オレは呼吸すら忘れて魅入っていた。
言っておくが、別にやましいことを考えてた訳じゃない。てかこれを見てそんなことを考えられる奴がいるなら会ってみたいよ。
これを……姉貴の胸にぽっかりと空いた穴を見て、恐怖以外の感情を抱ける奴がいるならな……。
「………………」
姉貴の胸に空いたコブシ大の穴。それは、本来なら心臓が在るはずの場所だった。
ひっそりと、まるで最初からそうであったかのように。
ありありと、まさしく今この状態こそが本来の姿だと言わんばかりに。
はっきりと、間違いな此処に在ると感じられるほどリアルに。
穴は静かに、物言わぬ姉貴の白い体に存在していた。
「何だよこの穴……」
見ているだけで恐怖と嫌悪と不安と絶望に蝕まれていく心と体。オレはそんな感覚から自身を守るため、無意識に体を抱きしめる。
これ以上、恐怖で震えないように。
これ以上、嫌悪を感じないように。
これ以上、不安にならないように。
これ以上、絶望が襲ってこないないように。
この時、オレは初めて心の底から怯えていた。
今月中にあと二回更新出来たらな~と思っております。けど期待はしないでください。