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影の教室  作者: 蟾兎 燕
第二章 二年生編
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三十五話 囚われた過去

 佐和子が影の力を取り込んでから数日が経過した。勇人たちは影の脅威が一時的に去ったことに安堵していたが、佐和子の様子はどこかおかしかった。彼女は自分が影の力を完全に制御できていると言っていたが、その影響が彼女の心にどのように影響を与えているのかは誰も知らなかった。


 ある日、佐和子は突然、クラスを早退した。誰にも理由を告げずに去った彼女を不審に思った勇人は、彼女を追いかけることにした。だが、彼女が向かった先は学校の裏手にある古びた倉庫だった。


「ここに何があるんだ?」


 勇人が疑問に思いながら倉庫に入ると、薄暗い空間に佐和子が立っていた。彼女の背中は勇人に向いており、何かに集中している様子だった。


「佐和子、何してるんだ?」


 声をかけたが、彼女は振り向かなかった。代わりに、彼女の周りに薄暗い影が蠢いているのが見えた。影はまるで生き物のように動き、彼女を包み込んでいた。


「佐和子!」


 勇人が再度声をかけたが、影が彼の前に立ちはだかった。影の力が強まっていることに気づいた勇人は、慎重に近づくことを決意した。


 

 佐和子の目は虚ろで、どこか遠くを見つめていた。彼女は影に囚われ、何かに引き寄せられるように呟いていた。


「影が……私を呼んでいる……」


 その言葉に勇人は背筋が凍るのを感じた。佐和子は完全に影に取り込まれてしまったのか? 彼女の意思はまだそこに残っているのだろうか?


「佐和子、影に囚われるな!お前は強いはずだ!」


 勇人は彼女に近づこうとするが、影がさらに強力になり、彼を押し返した。影の力は増していき、彼女の心と体を支配しつつあるのが明らかだった。


「勇人……私は……もう戻れないのかもしれない」


 佐和子の声はかすかで、どこか絶望的な響きを帯びていた。影が彼女を飲み込み、彼女の意思を奪おうとしている。


「そんなことはない! 俺たちは影を乗り越えられるって言ったじゃないか!」


 勇人は叫びながら、影の中へと手を伸ばした。彼は何とかして佐和子を救いたいと必死だった。



 突然、勇人の目の前に光が差し込み、彼と佐和子は一緒に過去の記憶の中へ引き込まれた。二人が見たのは、佐和子の幼少期の記憶だった。


 幼い佐和子は、両親と一緒に幸せそうに暮らしていた。しかし、その中には影の存在が常に付きまとっていた。佐和子の家系は、古くから影の力と関わりがあり、彼女の祖先が影の封印に関わっていたことが明かされた。


「佐和子……お前はずっと影と戦ってきたんだな……」


 勇人は、彼女が背負ってきた重い運命に気づき、彼女がどれほど孤独で戦い続けていたのかを理解した。彼女はずっと影の力に囚われながらも、それに打ち勝とうとしていたのだ。



 過去の記憶から戻った勇人は、再び佐和子を助けるために立ち上がった。彼女の体を包み込んでいた影は、今や彼女を完全に支配しようとしていたが、勇人は決して諦めなかった。


「佐和子、お前は一人じゃない。俺たちがいる。影に飲まれさせない!」


 勇人の言葉が届いたのか、佐和子の目に一瞬だけ光が戻った。その瞬間、影が揺らぎ、彼女の体を少しだけ解放した。


「勇人……」


 彼女の声がかすかに響く。影はまだ完全に消え去ってはいないが、勇人の言葉が彼女の心を支えているようだった。


「俺たちで影を乗り越えよう。佐和子、お前は強いんだ」


 勇人は彼女の手を取り、光を放ち始めたペンダントを握らせた。ペンダントの力が影を退け、次第に佐和子の体から影が離れていく。


 影は消え去り、佐和子は力なくその場に崩れ落ちたが、彼女の顔には安堵の表情が浮かんでいた。



 佐和子が目を覚ましたとき、彼女は勇人の腕の中にいた。彼女は影の支配から解放されたものの、その戦いの代償は大きかった。


「ありがとう、勇人……でも、まだ完全に影が消えたわけじゃない」


 彼女は弱々しくも決意に満ちた目で勇人を見つめた。影の脅威は完全には消えておらず、彼女自身がその一部を引き継いでいることを理解していた。


「これからは、俺たちみんなでその影を乗り越えていこう」


 勇人は彼女に優しく語りかけ、仲間たちと共に新たな一歩を踏み出す決意を新たにした。


 影の脅威が再び訪れるとしても、彼らは今度こそその力に打ち勝つ方法を見つけ出すつもりだった。

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