表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の教室  作者: 蟾兎 燕
第一章 一年生編
17/61

十七話 交差する影

 勇人は、暗号の解読を試みながらも次々と襲いかかる不安に心を揺さぶられていた。あの電話の声は、いったい誰だったのか? そして、この記号は何を意味しているのか?


「ここからどう動けばいいんだ……」


 勇人は不安な気持ちを抱えつつも、意を決して再び学校の校舎を歩き始めた。廊下を進む中、またしても奇妙な感覚が彼を包んだ。空気が変わり、廊下の照明がチカチカと瞬き出す。


「またか……」


 勇人はその変化に緊張を感じつつ、周囲を見渡した。そして、再びあのかすれた声が彼の耳元に響いた。


「――勇人……助けて……」


「誰だ!?」


 勇人は声のする方向を探ったが、そこには誰もいなかった。しかし、その声にはどこか聞き覚えがあった。それはまるで、直也の声のようにも聞こえた。


「直也……お前なのか……?」


 勇人は半信半疑ながらも、その声に従って廊下を進んだ。そして、次の瞬間、目の前の景色が大きく変わった。そこには、かつて二人が共に過ごした屋上が広がっていた。




 屋上には、夕日が差し込み、心地よい風が吹いていた。だが、その光景はどこか異質なものだった。夕焼けが不自然に赤く、空気は重く感じられた。


「これは……何かが違う」


 勇人は戸惑いながらも、屋上の中心に一人の人物が立っていることに気づいた。黒い影のような存在だったが、そのシルエットは直也に似ていた。


「直也……なのか?」


 勇人はゆっくりとその人物に近づいた。だが、その影は動かず、ただじっと勇人を見つめているようだった。


「俺だ、勇人だ! 直也、聞こえるか?」


 勇人はその影に声をかけたが、返事はなかった。ただ、無言のまま立ち尽くしていた。しかし、影の中から突然、直也の声が聞こえてきた。


「……勇人……来るな……」


 その声には、何か深い悲しみと恐怖が込められていた。勇人は一瞬立ち止まったが、次の瞬間には再び歩み寄った。直也をこのままにしておくことはできない。


「直也! 俺が助ける! お前は一人じゃない!」


 勇人が声を張り上げた瞬間、影が急に動き出し、彼に襲いかかろうとした。勇人は咄嗟に身をかわし、影との距離を保ちながら構えた。


「何なんだ、こいつは……」


 影はまるで直也の姿を借りた何か別の存在であるかのようだった。その動きは素早く、勇人を試すかのように近づいては引き、また近づく。


「直也! お前はこんなところにいるべきじゃない!」


 勇人は必死に呼びかけた。しかし、影はなおも攻撃を繰り返し、勇人を追い詰めていく。




 影の攻撃は次第に激しさを増していき、勇人は防御に回るしかなかった。しかし、その影の中からは、時折直也の声が漏れ聞こえてきた。


「……助けて……勇人……」


「直也! お前の意識がまだ残っているんだな!」


 勇人はその声に反応し、再び影に向かって飛び込んだ。彼は拳を握りしめ、全力で影に打ち込んだ。その瞬間、影は大きく揺れ、少しずつその形が崩れていった。


「今だ!」


 勇人は再び力を振り絞り、影に攻撃を加え続けた。影は抵抗するが、その力は次第に弱まり、ついには完全に崩れ去った。


「やったか……?」


 勇人は息を整えながら、影が消えた場所を見つめた。しかし、その場所には何も残されていなかった。ただ静寂が広がり、風が吹き抜けるだけだった。


「直也……どこにいるんだ……」


 勇人は影との対決に勝ったものの、直也の姿はどこにも見当たらなかった。彼は一人で屋上に立ち尽くし、再び孤独感に襲われた。




 勇人が呆然と立ち尽くしていると、不意に携帯が再び鳴った。彼は驚きつつも携帯を取り出し、画面を確認した。しかし、そこには何の表示もなく、ただ電話がかかってきているだけだった。


「……誰なんだ?」


 勇人は少し戸惑いながらも電話に出た。すると、再びあの不思議な声が聞こえてきた。


「――勇人、真実を見つけなさい……」


 その声は、優しくも厳しい響きを持っていた。まるで、彼を導く存在であるかのようだった。しかし、その声が誰のものかはわからなかった。


「真実……って何だ?」


 勇人はその声に向かって問いかけたが、返事はなかった。ただ、次に聞こえてきたのは、ノートに書かれていた暗号の一部だった。


「これは……」


 勇人は電話の内容をメモに取りながら、再びノートを開いた。どうやらこの暗号が、次のステップへの鍵となるようだ。


「直也を救うためには、これを解かないといけないんだな……」


 勇人は決意を新たにし、ノートに書かれた暗号と向き合った。そして、影との戦いを経て得た新たな手がかりを元に、次の一歩を踏み出す覚悟を固めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ