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影の教室  作者: 蟾兎 燕
第一章 一年生編
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十話 影の世界へ

 勇人と遼子が足を踏み入れた先は、全く異なる世界だった。影の世界――それは現実とは似て非なる、歪んだ空間だった。まるで時間が止まったかのように、周囲には誰もいない。それどころか、空気さえも異様に重く、呼吸がしづらい。


「ここが……影の世界か」


 勇人は静かに周囲を見渡した。壁や天井は現実の学校に似ているが、色が薄く、どこか霞んで見える。そして不気味な沈黙が、二人の不安をさらに増幅させていた。


「慎重に行こう。この世界には、何かが潜んでいる気がする」


 遼子もまた、周囲の気配に注意を払っていた。二人は少しずつ歩みを進め、影の世界の奥へと向かっていった。


 すると、遠くからかすかな足音が聞こえてきた。二人はすぐに立ち止まり、音の方向を見つめた。


「誰か……いる?」


 勇人は声を潜めて問いかける。だが、返事はない。ただ足音だけが徐々に近づいてくる。


「直也かもしれない……」


 そう言って、勇人は慎重にその足音の方へ進んだ。しかし、音の主が視界に入る前に、周囲が急に冷たくなり、二人は全身に寒気を感じた。


「何かが……近づいてくる……」


 遼子が不安げに呟くと、その瞬間、影のような黒い霧が突然目の前に現れた。



 霧の中から現れたのは、人の形をしているが、顔のない不気味な存在だった。その存在は、まるで生気のない人形のように動き、二人に向かってゆっくりと歩み寄ってきた。


「なんだ……あれは……!」


 勇人は後ずさりしながらも、その影から目を離さなかった。影の存在は音もなく近づいてきて、その黒い手を二人に伸ばそうとしている。


「逃げるしかない……!」


 遼子が勇人の腕を引っ張り、二人はその場から急いで逃げ出した。影の存在は彼らを追いかけてこようとしたが、一定の距離までしか近づけないかのように足を止めた。


「これ以上、近づけないのか……?」


 勇人は息を整えながら、影がそれ以上追ってこないことを確認した。しかし、その存在が完全に消えたわけではなく、遠くからじっと二人を見つめているようだった。


「この世界には、あの影の住人がいるのかもしれない……気をつけないと」


 遼子の言葉に勇人はうなずき、二人は再び進むことにした。彼らはまだ、この世界の全貌を知らない。しかし、影の存在が彼らを監視しているのは間違いなかった。



 しばらく歩き続けるうちに、二人はある部屋にたどり着いた。部屋の扉は半開きで、勇人はゆっくりと扉を押し開けた。


「ここは……教室?」


 部屋の中は、現実世界の教室に酷似していた。だが、机や椅子は散乱しており、窓には黒い霧が立ち込めていた。まるで何かがこの部屋で暴れたかのような痕跡が残っていた。


「何か手がかりがあるかもしれない」


 遼子が机の上に目をやると、そこにはまたしても古びた日記のようなものが置かれていた。彼女はそれを手に取り、慎重にページをめくった。


「これは……直也の日記……?」


 驚いたことに、その日記は直也の名前が書かれたものであり、彼が影の世界に迷い込んだ経緯が詳細に記されていた。


「影の世界は、自分の心の闇が反映された場所だ……この世界で生き残るには、自分の心と向き合わなければならない……」


 直也の日記には、影の世界の法則について書かれていた。彼は何度もこの世界に引き込まれ、逃げる術を探していたが、次第にその闇に囚われていった様子が描かれていた。


「直也もこの世界に閉じ込められていた……でも、彼はまだどこかにいるはずだ」


 勇人は日記を読みながら、直也がこの世界に適応しようとした痕跡を見つけた。それが、今の直也が影に囚われた理由なのかもしれない。


「急ごう。直也はまだ助けられるかもしれない」


 二人は日記を持ち、再び進むことを決意した。



 影の世界をさらに奥へと進んでいく中、二人は突然、道が分かれている場所にたどり着いた。一方は暗く深い闇に包まれた細い道で、もう一方はわずかに光が差し込んでいる広い道だった。


「どちらへ行くべきだろう……?」


 遼子は不安そうに道を見比べた。広い道は安全そうに見えたが、何かが引っかかる。逆に、暗闇の道は危険だと感じたが、直感的にそちらに何かがあると感じた。


「直也がどちらにいるかはわからない。でも……俺はこっちの暗い道に進むべきだと思う」


 勇人は暗い道を見つめ、何かが自分を呼んでいるような感覚を抱いた。それは危険だと分かっていても、進まなければならないという強い意志を感じた。


「私も一緒に行く」


 遼子も勇人の決意に同意し、二人は暗闇の道を選んだ。光を背にして進む彼らは、再び影の世界の奥深くへと引き込まれていった。


 その先には、彼らの予想を超えるような試練と、直也にまつわる新たな真実が待ち受けていることを、彼らはまだ知らなかった。

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