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第五話

 (誤魔化せたかな?)

 訓練場通いに熱中し過ぎてメイドさんからツッコまれたから適当に答えたら、なんか凄く目を輝かせていた。

 結構罪悪感あるな……。でも結局魔王倒すのは俺だし、嘘は言ってないよな!



 毎日魔法の訓練や兵士たちの見学をしているうちに、8歳になった。少しずつ身体が成長していっているのを感じるな。ちょっと身長伸びてたし。

 部屋の中で空間魔法を使ってよく分からん立体を作るのもだいぶ長く出来るようになった。あの立体は今のところ全く役に立たないが、外と中を空間的に区切る事ができる。試しに木の枝の真ん中に立体を作ったら、立体からはみ出した部分が綺麗に切断されて落ちた。断面が信じられないほどツルツルしていて、なんでも切れるんならどんな固いモンスターと戦っても即殺じゃん!と興奮してしまった。

 今はまだ手の延長線上に小さい箱としてしか出ないから使いづらいが、今後遠くに出せたり、形を変えられればかなり有効な攻撃手段だ。次元刀!とか叫んで敵を真っ二つにしたい。

 結界のように何かを守ったりも出来るんじゃないかな。

 魔力でホバリングするのも1時間くらいは出来るようになった。そろそろ空を飛びたい。

 転送魔法にはかなり力を入れている。最近では昼間に石を拾ってきて、窓の外に向けて発動している。大分遠くまで飛ばせるようになった。しかも、視界の外でもイメージがしっかりしていればキチンと転送出来るみたいだ。まぁ、成功したか分からないから次の日の朝にわざわざ確認しに行ってるんだけど、自分と転送先の間に障害物があっても問題はないみたい。そろそろ生き物で試したいな。


  庭で蝶を捕まえて実験する。

常にメイドのリサが近くに控えているので、自分の部屋に持ち帰るわけにもいかない。貴族の令嬢が昆虫採集をするというのは、あまり外聞が良くないため、死角を利用して実験しなければな。まったく、面倒だ。


 目標は少し遠くの花壇。

 捕まえた蝶を手で囲って転送魔法を使う。


 成功だ。

 手の中から蝶が消え、花壇の花にさっきの蝶がくっついている。ビックリしたのかすぐにヒラヒラと飛んでいった。元気そうで、特に問題はなさそうだ。あとは、どの程度の距離まで転送できるかだな。



 翌日、俺は神殿にいた。

 俺は普段あまり侯爵邸から出ない。うちほどの貴族となると、買い物は商人が家までやってくるし、必要な物は使用人に揃えさせるからな。外に出るとなったら護衛も必要だし、元日本人としては少し面倒なんだ。

 買い物が難しいなら神殿にお祈りに行こうと思い、やって来たのはカノープス領の誇る女神様の大神殿だ。

 この国は一神教だし、女神様自体が実在している為宗教が盛んだ。特に祝福を受けた人ほど熱心に神殿に通う。

 うちの家も熱心な信者なので、神殿にお祈りに行きたいと言えば、皆何の疑問も持たない。

 領主の一族が信心深いだけあって、うちは他の領よりもかなりデカい神殿を建てている。以前見たことがある首都の神殿とそんなに変わらない大きさだ。

 女神の像の前で手を組んで跪き、真摯に祈ってるふりをしてると、ずっと考えていた疑問が再燃する。

 

(女神様はなんで俺をこの世界に転生させたんだろう?)

 絶対関わってると思うんだが。

 まさか歴代の勇者たちも転生者とか?


 色々と考えを巡らせているうちに長い時間が過ぎてしまったようで、神父から感心な信者だと勘違いされてしまった。


 そういえば、神殿に入るとなぜかいつも身体が軽くて、暖かくなったように感じる。何だろうねこれ?女神様のパゥワーかな?


 神殿を出ると、やっと用事が果たせる。懐から5と書かれた石を出して魔法を発動し、自分の部屋に石を転送する。

 ここに来るまでの道中でも何度か行った。距離が遠くなるにつれて数字の大きい石を転送し、部屋に転がってる石から転送に成功する範囲を確認する。今のところ発動しないってことはないので成功していると信じたい。

念の為、帰りは道を変えて少し遠回りして貰うつもりだ。

 カノープス領の端に近いところまで行ってしまったので折り返してもらった。その地点で魔法を発動すると、石は転送されなかった。魔力低下による虚脱感は無かったので、これが今の射程限界なのだと思う。

 もう少し神殿に近づいてから発動したらきちんと消えたからな。


 部屋に戻ったらベッドの上に1〜6までの石が転がってた。神殿付近までは射程距離があり、失敗する場合はそもそも魔法が起動しないという仮説が出来た。

 それから、物体の中に転送するというのは出来ないみたいだ。石を木の中に入れようとしたら発動しなかった。魔物の体内にナイフを転送して殺すというのは出来ないみたい。それが出来たら楽だったんだけどね。

 これは俺のイメージの問題かもしれない。もともと障害物は無視出来ていたから。ただ、これをイメージ出来てしまう事で自分を転送する際にマイナスのイメージまで起こると怖い。例えば自分が木や岩の中に入って出られなくなったり、混ざったりとかな。

 むしろ今のままが一番良いのかもしれない。


 転送魔法は大分理解してきた。あとは自分を転送するだけだ。今のところ順調だが自分で試す前には、出来ればもう一押し欲しい。他人で一回実験しておきたい。蝶は無事だったが、外見からは分からない不調があるかもしれないからな。でも、流石に人体実験はちょっとなぁ……。


 俺が悩んでいると、リサが話しかけてきた。

「お嬢様、何かお悩みなのでしょうか?私で良ければ是非お聞かせ下さい。」


 うーむ、、、なんと言ったものか。

 空間魔法なんて聞いた事ないだろうし、変なことが出来るって言っても騒ぎになるの嫌だしな。それにこうゆう能力ってあまりバラさない方が有利じゃん?初見殺しだし。

 あとこれが重要なんだけど、実は強かった系キャラって好きなんだよね。奥の手を常に隠してて普段の実力は普通ってくらいの奴。かっこいいよね。

 でもさ、そんな奴は努力してる姿見せなくない?悩みとかメイドに相談しなくない?


 よし、何でもないわ一択だ!


「何でもな…」

「お嬢様の練習している特殊な魔法が原因なのでしょうか?」


………は?

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