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「小説家になろうはAI作家の夢を見るか」

作者: 仲山凜太郎


 アメリカの月刊誌「CLARKESWORLD」が小説の投稿を一時停止した。AIを使って執筆した小説の投稿が激増したためという。

 日本では星新一賞でAIを利用して作成した小説が受賞した。こちらはAI(人間以外)による執筆を認めている。


 ここ数日、AIによる創作についてのニュースを何度も目にした。その分野はいろいろあるが、これは小説家になろうのエッセイなので小説創作に絞って書きたい。

 AIをどの程度の「道具」として認めるかは意見が分かれるだろう。例えば私が執筆に使っている入力変換ソフト。これもAIと言えるかもしれない。ただこれが問題にならないのはソフトが作るのはあくまで「単語」せいぜい「一文」だからだろう。

 問題になるのはAIがどれだけ「人の手(他者の決定)を借りずに文章を作るか」。人の書いた小説とAI小説の境界線は?

 作れると言っても現在AIの作る文章、物語は明らかに不自然なところがあり、それ故に先の月刊誌でもAIの書いたものと解った。しかしそれはあくまでも今の話。これが1年後、2年後、5年後はたらどうだろう。人が書いた小説とAIが書いた小説を区別するのはかなり難しくなってしまうのではないか。


●出版社は大変だ!

 そうなったとき、小説家になろうのサイトは、小説の賞を応募している各社はどうするのか。今はまだ様子見でもいいかもしれない。しかしいずれは

「AIを利用して書いた作品は失格(削除)とする」か。

「投稿作品の執筆にAIの使用は問わない」か。

 どちらかを選ばざるを得ないだろう。

 だが、前者においては選考者はどうやって人が書いたかAIを書いたかを判断するのか? またどの程度ならばAIを使っても問題ないとするか頭を抱えることになるだろう。

 後者の場合、「CLARKESWORLD」のように投稿数がとんでもなく増えることが予想される。まだ応募小説を紙に印刷して郵送した頃、印字を止めフロッピーディスクでのデータ投稿を可にしたところ投稿数が激増したという。ネット投稿が可になるとさらに増えた。AI執筆の特徴の1つは完成までの早さ。数十作、百作以上応募する人も出てくるかもしれない。

 こうなると会社の方でも「応募するより社内に専用のスタッフを置いて、流行のキーワードを使ってAIに書かせた方が早い」と考えるかもしれない。

 どちらを選んでも会社は大変なことになりそうだ。

 なんだか不吉なことばかり書いているようだが、問題が大きくなる展開を好むのは小説を書く側の性だろうか。


●先生……小説が書きたいです……

 会社側の問題はちょっと置いといて、小説投稿サイトなのだからAI小説を書く側で考えることにする。考えるというのは、私はまだAIを使った小説を書いていないからだ。だから想像で書く。

 ふと考える。私は小説が書きたいのだろうか……小説でお金を稼ぎたいのだろうか……。

 やはり私は小説を書きたい。お金は欲しいがあくまで自分が書いた小説で稼ぎたい。となるとどうしてもこれだけはAIに譲れないという一線が出てくる。正直、この一線を具体的に記すことはできない。何というか、感覚的なものだから。きっとこの一線は人によって違うだろう。

 AIにいろいろ任せているうちに「これだけは自分でやらなきゃ」というところが出てくるはずだ。それが私の譲れない一線なのだ。

「自己満足に挑むのを趣味という」

 某漫画のセリフだが、私にとって執筆はまだまだ趣味の範囲なのだろう。小説を自分で書き上げることに挑みたいのだ。小説を書く、こんな楽しい事をAIに任せたくはない。


 では小説をあくまで金を得る手段の1つ。小説家になろうへの、出版社への応募はあくまでその方法の1つに過ぎない。と考えている人はどうだろうか。その考え自体は悪いこととは思わない。「仕事はあくまで生活費を稼ぐ手段」と割り切る人はいるし一理ある。その人達にとってはAIを使って流行のキーワードを使い、好みの人物、展開の作品をいち早く書き上げることが大事だろう。彼らにとって小説は「商品」であり「作品」ではないからだ。一定のレベルの商品を安定して生み出すことが出来る。これは大きな魅力だ。

 最初で触れた雑誌「CLARKESWORLD」編集長のクラーク氏はAI小説、AIアート、AI音楽を歓迎する人たちを「ショートカット(近道)を好む人たち」と評している。いかに少ない労力で多くの利益を出すかというコストを重視する人達だ。

 だが、こういう人達が次々賞を取り、なろうのトップページを飾り続けると、AIは最低限、自分の手で書き上げたいという人達の心がどんどん折れてしまうのでは思うのだ。


●AI小説はAIのもの?

 アメリカでは今年の2月AIが描いた漫画の絵に対し「人間が作ったものではない絵に著作権は認めない」という判決が出た。では小説は? 小説の著作権も認められないのか? AIが書いた小説をそのまま投稿して賞を取ってもやはり著作権は認められないのか。ではAI小説を元に人間が手を加えた場合は? どの程度手を加えれば作者(出版社)の著作物となるのか? 著作権以外は?

 複数の人間がたまたま同じキーワード、同じAIで書いた小説が同時期に別々の賞に応募され、そろって受賞したら? この条件ならばほとんど同じ小説になるはずだ。盗作となった場合、どの作品がオリジナルとなるのか? 1番早く執筆を終えたのがオリジナルになるのか? でも特許と違ってチェックのしようが無い。

 これは実際に起こらなければ解らない。先の判決はアメリカのものなので日本は違う判決となるかもしれないが、考えておく必要があるだろう。


●AI小説を越え続け……られるかーっ!

 さて。AI小説に対して所詮はAI、人間の書くものにはかなわないという意見を時々見る。しかし私はそれはちょっと楽天的すぎると考える。

 確かに今はそうなのだろう。今のAI小説には欠点が多い。だからこそ先述のクラーク氏も投稿作がAIによるものと解ると述べている。でもいずれは……AIと人間とが書いたものを見分けることが困難になるだろう。

 それでも人間の中には時折AIを越える作品を書き上げる人達が出てくるだろう。でも、それって何人ぐらいなんだろう。例え出てきても、それが数10人程度で数年に1作品程度の発表ではどうにもならない。人間の執筆速度はやはりAIにはかなわないだろうし、その人達が「AIより優れた作品を書き続ける」ことは困難だと思うから。そもそもそういう作品が出てきてもAIはすぐにそれを学習し自身のレベルを上げていく。するとそれを越えるためのハードルはさらに上がっていく。

 私は「一流はその分野を輝かせ、二流はその分野を支え、三流はその分野を未来に繋げる種となる」を持論としている。小説という分野を維持するためには、一流も二流も三流も必要なのだ。一流ばかりをもてはやし、二流、三流をないがしろにする分野に未来はない。日本がコミックやアニメで世界に誇れるようになったのは、コミケなど二流三流の人達が楽しみ、レベルアップする場があったからだ。

 一流の人しか食べていけない分野は滅びるだけだ。小説という文化が生き続けるためには、それ相当の数の作家が、作家になろうとする人達が生き続ける必要がある。一握りの優れた人達をもち上げて「大丈夫だよぉ」とお気楽に笑うのは危険なのだ。

 それを防ぐには将棋のようにAIを賞から閉め出すしかない。プロが自己鍛錬のために使うのはともかくとして。

 将来「人間が書いた小説!」が宣伝文句になる。なんてことがないよう祈る。


 ……いかんいかん。書いてて興奮してしまった。私も小説家を目指す1人としてかなり焦っているのだろう。

 まだAI小説が出てきたばかりという段階では、私が勝手に不安がり騒いでいるだけに過ぎない。

 先述のクラーク氏もこう述べている。

「AIは単なるツール。良い目的にも使えるので、悪魔のようにはしたくない」

 不安が先走るあまりAIを悪魔にしてはいけない。昔より「技術に善悪は無い、使う人の心にある」と言う。

 だが、1つの便利な、便利すぎる道具や技術が人の心を変え、格差を広げていくのもよくあることだ。


 とりあえず私がやることは、執筆中の作品を完成させて投稿することだろう。執筆意欲を守るためには書き続けるしか無いのだから。

 数年後、小説家になろうサイトや提携する各社の賞が、規約に

「AIを利用して書いた作品は失格(削除)とする」

「投稿作品の執筆にAIの使用は問わない」

 どちらを加えるかはわからないが。


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