一度死んだ奴は、二度目の生を惜しまないさ
異世界冒険とか可愛いキャラとか見たい人はもう×を押して大丈夫です。
これ最後まで男と亜空間生命体の会話しか書いてない。
クソ電波作品。誰だ、こんなもん書いた奴は。
あっ、 俺 で し た 。
「ドスッ!」
呼び名通りの音だった。
感じたのは腹から侵入した冷たさ。吐き出したのは胃袋からの熱い何か。
クソったれのゴロツキどもめ、未成年が有利だってわかっててドスを持ちやがった。
血がどんどん失っていると実感しているのに、なぜか頭は冷めない。
どうせ最後だ、いい死に方しないのはお前らも一緒だ。そんなこんなつまんねぇ事考えて、俺は指でそやつらの眼窩をほじくった。
返礼だ、アホども。一人、二人、俺は手に取れるすべてをそいつらに喰らわせる。
目、指、たま、体液が交わる、素晴らしい絵面。クソの葬儀に悲鳴は一番の供物。
俺みたいなゴミに、お経はいらない。
こいつらがこれからろくに人生を送れねぇことさえ分かれば、満足だ。
そういう最期の…
はずだった。
「よぉ」
耳小骨を轟かす声に、俺は目を覚ます。
「……」
状況がわからない。俺は死んだはずだ。
周りは暗くてよく見えない、唯一の光源は手前の机に置いた蝋燭。
ただの蝋燭なのに、その火は異様に眩しい。
その灯りのおかげで俺は机を見えたが、その灯りのせいで他の物はよく弁別できない。
俺は椅子に座っているが、手を伸ばしても何も当たらない。
闇、闇、蝋燭の火が照らし出す机以外、全てが闇。
でもなぜか、その闇が動いてるみたい。そうは見えないが、そう感じる。
動いてるけど、無機質だ。雨雲が俺の周囲で渦巻くようなイメージ。
変なものに囚われていたな。そう思うと、嫌悪感が湧く。
でもふと思い出す。さっきは確かに、声が聞こえたんだ。
俺はその正体を探るため、蝋燭の向こうを凝視する。もし何かがいるとしたら、野郎はそこにいるのに違いない。
「お目覚めを。」
その声とともに、机の向こうの何か、その輪郭がはっきりなってきた。
でも、その容貌は形容できないものだった。変な物が混ざり合い、この空間に満ちる暗闇を凝縮したようにも見える物体が、俺の前で人の形となって、座ってるみたいだ。
奴は確かに座っているが、その…外見?…それが常に溶けてまた固まり、形状を変えていると、視覚が脳に伝え、脳がその分析結果を俺に教えた。
つまり、視覚がエラー出している、もしくはそいつを正常に認識できてない。
それは俺のせいか、怪我のせいか、それともこいつ自身のせいか、俺にはわからない。
思えばさっきの声も、直接脳内で響いていたんだ。
何なんだこいつは。ここが地獄ってわけか?
「君の魂がわたくしの所に来たんだ。」
あっ…わかった。
よくわからないが、とにかくわかった。
俺はあんな物騒な死に方だったが、実を言うとオタクっぽい趣味もあった。
だからこんな場面は見覚えがなくても、こんな展開がどうなるかは大体察する。
例え実際に作品で見たことなくても、聞いたことはあるだろう。
魂をなんちゃらかんちゃらとか、転生とか。
「君のような人に、わたしくから提案がある。」
「断る。」
「…ふぅん?…」
こいつが何を企んでいるのかは知らねぇが、とりあえず断る。
「わたしくはまだ何も言って…」
「てめぇが何を言おうとしても、断る。」
なぜかと言えば、
「なぜだ?」
「嫌いだからだ。」
「うん…嫌いか?」
「そう、気に食わない。」
「何を?」
「何もかも。」
「あれだけ普通に人生を送ってきたのに…?」
「だからあんな無様な死に方を飾ったんだ。」
「平凡な人生だったから?」
「知るかよ、たかが初めてヤンキーに文句言いに行ったんだ。くそったれがよ。」
「随分口が悪いですね。」
「嫌だからだ。」
「うん…嫌いか?」
「そう、気に食わない。」
……
なんか、この会話が終わらねぇ気がしてきた。
何の面接だよこれは。
「確かに、面接…みたいなことしていますね、わたくしたちは。」
「面接も嫌いだ。」
「成功して就職できたのに?」
「嫌いだから辞めたんだ。面接も会社も嫌いだ。どいつもこいつもうんこたれだった。」
「君は色んなものが嫌いみたいですね。」
「だ・か・ら、嫌いだ。
色んなものじゃない、全部だ!」
短い人生も我慢の浅さの表しだったのだろう、俺はキレた。
「全部、嫌いだ!これもあれも、嫌いだ!」
「……」
どうせここに俺とこいつ以外誰もいない。どうせ死んだんだ。今のチャンスで全部吐いてやる。
「とにかく嫌いだ。自分が嫌いだ。親も嫌い。
平凡な人生が嫌いだ。子供の時見た大きな夢も嫌い。
綺麗事ばっか言って何も大したことやってねぇ奴も嫌いだ。
わけもわからないのに突然ヒットしたものが嫌い。
クソつまんねぇテンプレ展開なのに、属性ラベルを並べただけの女キャラが付いたら売れた小説が嫌いだ。それを喜々として読んでる買ってる脳味噌空っぽのファンも嫌いだ。
システム雑かつクソなのに、キャラにおっぱいと確率付けたたけでばか儲けしたゲームが嫌いだ。そんなものプラス中二病設定だけで歴史に名を刻んだ奴がいることは更に嫌い。
人を騙す奴も嫌いだ。
夢を見せるとか言っといて、実は女性たちの身体とプライベートを搾取して金儲けしている男が嫌いだ。それに騙されて自分から向かっていくDQNも嫌い。
自由と称してただ好き勝手なバカをやらかしたいだけの自己中は嫌いだ。
人の命奪っといて自分の番になったら人権とかほざくクソも嫌いだ。
増えすぎた人間が嫌いだ。どこへ行っても必ずいる騒ぐガイジが嫌い。
直面すべき問題をほったらかして、どうでもいい争いに身を投じるアホどもも嫌いだ。
誰もが特別で重要だとかいう嘘をぶっこいて、実は誰もかも歯車にしか見えない上の人間が嫌いだ。
人間のためにできた仕組みなのに、今じゃ人間を縛るしか能のない社会が嫌いだ。
こんなどうしようもない種族を許した地球も嫌いだ。」
「……」
「てめぇも嫌いだ!」
「…???」
「てめぇはなんなんだかは知らねぇが、とにかく嫌いだ!
神ならば、こんな不完全な世界を作ったてめぇが嫌いだ。
魔ならば、ただ勿体ぶってこんなどうしようもない現状もぶっ壊せねぇてめぇが嫌いだ。」
「…つまりどの道、」
「どの道、てめぇも、俺も、全てが、嫌いだ!」
「いつから嫌いになったのでしょう。」
「いつ…、いつ?」
俺は愚痴を止めた。マジでわかんなくなった。
「いつからだ…」
……俺はいつから、こんなもんしか考えられねぇ人間になったんだ。
でも、そういうのも嫌いだ。
「言っておきますが、私は神でも悪魔でもありません。」
「ハ?」
「ただの渡守です。」
「?」
「人を生と死の間で渡すのが仕事。」
「それが世間で言う…」
「死神?いいえいいえ、それは人間が勝手に作った概念です。そんなの嫌いな君ならきっと理解できるでしょう。」
「……」
「わたくしはただの架け橋なのです。魂の。
此岸と彼岸を結ぶ。」
「…こんな様で?」
「ええ、残念ながら、こんな様で。」
「…」疑うわ。
そしてこんな疑う自分も嫌い。
「君が言ったこと…」
「?」
「多分どれも解決しないでしょう。」
「……お前が頑張って渡しても?」
「わたくしが頑張って一杯渡しても。」
「給料なしのボランティアでどんどん人を彼方へバンバン入れても?」
「給料なしのボランティアでどんどん人をそっちへバンバン入れても。
というか元々給料なしのボランティアです。」
「よく嫌気刺さなかったな。」
「それが使命ですから。
摂理から逸した人間にはわからないでしょうけどね。」
「わかった…そう言われたら納得しかねぇな。
摂理とかは別に嫌いじゃないし。まあ詳しくは知らんけど。」
「もし詳しく知っていたら、嫌いになりますか?」
「そういう質問は嫌いだ。」
「嫌いでも、解決にはなりませんよ。
もっとも、嫌いではなくても、解決はしません。
人は殺し、人は騙す。
人は当たり前のことを綺麗事みたいに言って、つまらん文字を並べて儲かる。
人は勝手に憧れて、また勝手に絶望する。
社会の問題も何も解決しません。わけのわからない発展を遂げて、わけのわからない崩壊を迎える。
例えあわよくそんな終焉全部避けても、人はわからないままだ。
それが人だ。
己の醜さを見たくなくて、文明という皮を被った。
己の終りが見たくなくて、いつまでも永遠を求めた。
己の卑劣を知りたくなくて、傲慢をし尽くした。
君が産まれる前から、君が死しても、何も変わらない。
人が生まれるのは何の意味も持たない、この世界は何かを期待して人を誕生させたのでもない。」
「じゃあなぜ…」
「言ったでしょう?意味はない。
意味を追求するのは人間の悪い癖だ、わたくしの癖ではない。」
「…そういうもんかい?」
「そういうもんです。」
「…それなら…よかった。」
「よかったです。」
「……」
「……」
短い沈黙。会話の途中でよくある沈黙。
そういう沈黙は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
でも好きな物はいつか終わる。この沈黙もそうだ。
「さきほども言いましたが、人を渡すのがわたくしの使命。」
「うんうん。」
不思議なことに、さっきまでの鬱憤がどこか行っちまったらしい。
「でもたまに、趣味本位で変なこともします。」
「例えば?」
「例えなくても、今はしようとしています。
君に、違う世界での人生をあげたい。」
「ハァ?なぜ?
ようやく死んだのに。」
「君が言いたいことがわかる。君が期待している答えもわかる。ですがどれほど奇抜で奇妙な人間でも、あの基数では流石に見飽きる。」
「……」
「生きている数だけで14億、死んだ人間はもっといる。
さきほども申しましたが、特に意味はありません。」
「……」
「それでも何か理由をこじつけたいのであれば、ただの趣味です、気まぐれ。」
「……」
「人は変ですね。意味がないと知ってても、無意識に意味を探ろうとする。
それはある意味で、絶望の中で希望を見出したい気持ちと同じでもある。」
「……」
「特に文句は…?」
「未だに思い付かない。」
「では…?」
「ああ、好きにしろ。
暫く何も考えたくない。」
さっきこいつが言っていた『意味のなさ』、今は噛みしめたい。
「では、こちらへ。」
その者は俺の視線を燭火に導いた。
その光がだんだん膨脹し、周りの暗闇を塗り替えていく。
その時の俺は、まだ『空白』を味わうことに耽っている。
どれほどの時間がたったのだろう、俺は二度目の目覚めを迎える。
周りは見慣れない景色。俺は人生の振り出しに戻ったのだろうか。
まだ始まったばかりみたいで、とりあえず嫌いな点は見つからない。
だから、これはまだ好きだと言えるだろう。
……いいや、言えないか。
今週の遊戯王セブンスが鬱展開すぎてブルーになったから、何かを書かないと寝れないと思って、朝4時に起きてこんなものを書き下ろした。
なんのためだろう。わからない。多分意味はないだろう。
これ続くのか?多分気分次第。ひょっとしたら更新するかもしれない。
でもどの道、普通の異世界を書くつもりはない。
寝よ。
ちなみに、どうせ誰も多分読んでくれないので、とりあえず現段階この字数と内容で応募できる賞のタグを全部付けてみた。他の作品も同様。多分誰も気にしないけど、気にしないで。
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