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命散るとて、月は冴ゆ  作者: こく
第八話 断截
21/25

冴家 三の姫



 

 冠省


 このような話をしなければならないのは非常に心苦しく思います。もし叶うなら直にお会いしたかったのですが、父上がお許しにならないのでどうか文にてご容赦ください。

 貴女と文を交わすことができて自分は幸運に思います。一度はお返事を書かず不義理を働き、申し訳ありませんでした。実を言うとあのときは貴女に別れの言葉を綴る決心がつかず、中途半端なことを致しました。礼を欠いた言い訳にはなりませんが、どうか女々しいと笑ってください。

 来年、貴女は巫として枢密院に仮入するのだと窺いました。まずは書中を以てお慶び申し上げます。私は貴女がそれをご自分で選ばれたということが、何にも益して貴いと感じます。誰に何と言われようと、私はいつも正しさを突き詰める貴女の生き方に、心が揺さぶられるような思いがしておりました。容易ならざる道を歩まれる貴女の未来が明るいものでありますよう、お祈り申し上げます。

 別れを告げる文にこれを書くには未練がましい限りですが、貴女に誠実さを欠くことはひどく後ろめたく、貴女の前で正直でいることを自分なりのけじめにしたいと思います。貴女のことが好きでした。失望されるのが恐ろしく、どうしても今まで言い出すことができなかった己の不甲斐なさに胸が苦しくなります。こんな私に、貴女に慕われる品位などあろうはずがありません。

 しかしこれは哀れみや許しを乞いたいのではなく、ただどこまでも、貴女に嫌われようとも己に嘘をつきたくなかっただけなのです。可笑しなことをと思われるかもしれませんが、この文を書くことができて今は安堵しています。

 もう言葉はありません。巫になる貴女のお手元にこのような文があっては外聞に差し障りますので、これまでのものとまとめて焼き捨てていただければと思います。どうかこれからもお体に気を付けて、冴家の皆様にはくれぐれも宜しくお伝えください。


 不一

 白狐




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