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ある日の風景

今回は短いです、すいません。

スターライト家の一角にある訓練場、通称『コロッセオ』。

奇しくも中世ローマの闘技場のような作りになっているここには、大剣、短剣、ハンマー、ランスなど某ゲームのような武器が揃っており、スターライト家に仕える戦士たちが日夜、己のため、守るべき主のため、血と汗を武器に染み込ませながら、鍛錬を行っている……という事もなく、単に当主であるアイザック様の「城にこんなんあったらかっこよくね?」という気まぐれで作られた。

そもそもうちのお嬢様達は武器なんぞ使わなくても充分に強いし、お抱えの兵士も門番くらいしか居ない。基本的にはリーナ様が一人でトレーニングするか、たまにマリー様がストレス解消でサンドバッグをボコボコ殴る以外は使われることがなかった悲しいフロアだが、ここ最近は様子が違った。


「よぅし、シュヴァルツ! 着いてこい!」


「ウォウ!」


全身の筋肉を躍動させ、縦に横に縦横無尽に動き回る女性の後ろを、一生懸命付いて行く一匹の小さな狼。

リーナ様とシュヴァルツは現在、日課のトレーニングの真っ最中だ。俺はその付き添い。と言っても特にすることもないから、ベンチに座って見てるだけだ。

俺は楽しそうな二人の様子を見ながら、あの日の事を思い出す。

あの後、マリー様の許可が出たということもあり、シュヴァルツはスターライト家公認のペットになった。

早速次の日から、リーナ様直々のトレーニングが始まった訳だが……。


「ああっ! おい! そっちはトイレだ! こっ、こっち来ーい!」


「ウォウ!」


「返事だけはいいな!」


まあ、うん。シュヴァルツは一生懸命頑張ってる。頑張ってるが。

……心配だ。

一応シュヴァルツは将来のスターライト家の使役動物としての将来性を見据えて、マリー様の許可を貰った。

それがやっぱりダメでした。なんてことになったら……。ああ考えたくない。

俺も少しは手伝ったほうが良いかもしれないと思い、腰を上げようとしたその時。


「頑張ってるわね、リーナ」


後ろから聞こえてきたのは、気品を感じる凛とした声。


「……マリー様、お疲れさまです。どうしたんですか?」


「ちょっと通りかかったから寄ってみただけよ。隣、良いかしら?」


「あ、はい」


「ありがと」


俺は手でベンチの上を払い、少し横にズレて座る。

マリー様は俺の横に座ると、リーナ様とシュヴァルツの様子を見始めた。

……ヤバいな、シュヴァルツはまだ子供とはいえ、あんな訓練してるのか遊んでるのか分からない所を見られたら、マリー様の気が変わるかもしれない。

俺が何とかマリー様の目を逸らそうと、話題を考えていると。


「そんなに心配しなくても、今更やっぱりダメなんて言わないわよ」


「え?」


「ジン、貴方今、私の気が変わったらどうしようって考えてたでしょ? 顔に書いてるわよ」


マリー様は俺の方を向くと、そう言って笑った。


「……ええ、まぁ」


「ふーん、ジンは私がそんな事するような女だと思ってたの?」


「いや、そういう事じゃないですよ? ただ、そうですね……」


うまく言葉として出せない。


「……ま、頑張って毎日続けなさい。そんなにすぐ結果が出るものでもないでしょ? じゃあ、私はそろそろ行くわ。リーナのこと、よろしくね?」


マリー様はそう言うと、立ち上がって出口へと歩いていく。

この人は本当に、どこまで俺の心が読めるんだ。


「……マリー様!」


「なに?」


振り向いたマリー様に、俺は。


「もしかして、俺達のこと心配して来てくれたんですか?」


「……さぁ、どうでしょうね」


そう言ったマリー様は、酒によって泣いているマリー様とは別人の様な、大人の表情だった。

……これは、大変な仕事を任されたな。

歩いていくマリー様の背中を見届けると、俺は気合を入れ直し、リーナ様とシュヴァルツの元へ走っていった。

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