賊との遭遇
投稿開始までにあまり書き溜め出来ないかも…
ちょくちょく活動報告します
武器屋を後にした俺はすぐに目的の宿屋を見つけていた。
宿屋につくと俺は店番をしていた女将さんに、中央区の兵士の紹介で泊めてほしいと言った。
「あぁ、アイツの紹介だね、アイツ本当に誰でも声かけてくれるね
ま、こっちとしちゃ客が増えるなら万々歳だけどね」
「とりあえずひと月くらい滞在させてください」
「あいよー、ひと月だと先払いで1000チェルだね」
こっちの相場は分からないけどお金ならいくらでもある。
お金の出る袋から2000チェルを1つ出して女将さんに渡すと…
「お、ぼうやブロンズの都民証の割にはお金持ってるんだね
西区じゃ気を付けた方がいいよ、どこで狙われるか分かったもんじゃないからね」
出会う人々に片端から言われるとは、本当に治安が悪いらしい。
当主が居なくて賊が自由に行動で来てる辺り当たり前か…
女将さんとはまた別の店員が出てきて部屋へ連れて行ってもらう。
着いたのは質素な感じの部屋で2つベッドがある部屋だった、今日からとりあえずひと月はここで過ごそうと思う。
「一息つけましたら、また先程の場所にお戻りください、お食事の準備が間もなく整います」
そう言えば気が付けば、もう日が落ちている。
案外ここに来てから時間が経つのが早いな…
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「さぁ皆、たぁんと食べな!」
受け付けから更に奥に行ったところにある粗末な机が並んだ部屋、しかしその机には見合わない沢山の色鮮やかな料理。そう言えばこちらに来てから何も食べていなかったのでお腹が減っていた。
だが何故だろう、大体見たことある料理ばかりな気がする。
料理を運んできた女将さんが張り切っている、店員さんも忙しく動いているな。
ふと疑問に思う、店員の幾人かは所謂『ケモミミ』なのだ。恐らくだが獣人なのだろう。
「うちの従業員が気になるかい?」
「うわっ」
女将さんが俺の背後から声をかけてきた、いつの間に後ろに回られたんだ…
「うちで働いてる獣人族はいわば捕虜に近いものさね、
1年前にあった帝国との大戦で家族を奪われ、投降してきた子を帝国兵が保護して国中の色んなところで働かせてるってわけさ」
少し可哀そうな気もするが、待遇自体はそこまで悪くなさそうだな。
「いくら捕虜だと言っても今じゃうちの貴重な従業員だからね
手を出そうもんなら承知しないよ」
女将さんの圧力がひしひしと伝わってくる、この人を敵にしたら良くないことが起こりそうだと直感で思えてしまうほどだ。
「異邦人だからって流石にそこまで女癖悪くないですよ
これからお世話になるんです、顔くらい覚えておきたいなと」
「なら、いいんだけどね。
ここは言わば貧民街だ、そういうところには悪いやつもいっぱいいるもんだからね
目を光らせてないと…」
女将さんも中々に苦労しているようだ。
少し味付けが違うが全く違うものを食べている感覚はない。
肉料理に…これはコーンスープ? いやパンプキンスープか。
色とりどりの野菜に…無いのは米くらいか?
簡単に言ってしまえば洋食系の料理だ、嫌いな味ではない。
ちなみに料理を作っているのは女将さんの旦那さんだそうだ、その旦那さんも転生者なのかな?
ともあれ美味しい飯にありつけて、質素ではあるが寝泊まりする場所も借りれた、あとは風呂でもあれば最高なのだが…
「風呂? なんだいそりゃ」
驚きを隠せないが、この世界では風呂は普及していないのか。
ならばこの世界の人はどうやって清潔を保っているのだろうか?
それを聞くと女将さんが教えてくれた。
「あんたの故郷じゃどうだったかなんて知らないけどさ
この辺りじゃ泡がついたタオルで全身を拭くだけさね
まぁ、たまに冒険者で魔法が使える人が来てくれると、そのときは
我先にとタオルに洗浄魔法を付与してもらうんさ
それがあると拭いたものの汚れも匂いも消えるからね」
不潔…とまでは言わないけど、あまり心地がいいものではなさそうだな。
そうだ、どちらにせよこの世界で生きていくなら魔法使いの仲間も作っておくのもいいな。
この世界における魔法というものが俺にはまだわからないが、便利そうなものだな。
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食事を終えた俺は部屋に戻ってベッドに寝転んでいた。
街の中が思いのほか広くて迷いやすく、かなりの距離を歩いたので疲れが溜まっているようだ。
「ちょっと質感は悪いけどベッドだぁ…」
疲れたあとのベッドは至福の時間のひとつだ。
これに関しては異論は認めない。
「にしても風呂が恋しいなぁ…
ここじゃあ泡付きのタオルで拭くだけって言ってたし…
あー…あったかい湯船に浸かりたいよぉ」
「お取り込み中失礼します」
「うわっ!」
さっきフロアに居た獣人の従業員の1人が、音もなく部屋に入ってきていた。
仮にも異性の部屋なんだからノックくらいするんじゃないの普通!?
驚いている俺をさておき持っていた桶のような木製の入れ物をその場に置く
「こちらがウーグ様用の洗浄タオルです、泡がついているものと拭き取り用のものがあります
使い終わりましたら扉の前に出しておいて頂ければ後ほど回収致します」
「あ…どうも」
要件だけ済ませるとすぐに部屋から出ていってしまう。
何だろう…ちょっと無愛想な感じの人だな。
だけどしばらくはお世話になるんだ、名前くらい知っておきたいな。
「あとで女将さんに聞いてみるかなぁ」
そんなこと考えてたらだんだんと眠気が来て、眠りにおちた。
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この世界に来てから2日目の朝。
誰が起こしてくれるわけでもないが、俺は物音と罵声で起きた。
外かららしいが、まだ太陽も上りきっていないのに騒々しいな…
「おい! ここの宿に異邦人が泊っているだろ!
そいつを出せ、異邦人は俺たちの許可なしに西区には滞在出来ねぇぜ」
「悪いけどね! あんたらにお客様を差し出すつもりはないよ!
さっさと失せな」
「なんだと? この贅肉ババア」
「ほう…言ってくれるじゃないか、これでも昔は冒険者してたんだからね!
舐めてかかると痛い目見るのはそっちだよ!」
昨日聞いていた賊らしきやつらが宿の女将さんと言い合いをしている、
てか異邦人って俺の事か?
早速厄介ごとに巻き込まれた? いや女将さんを巻き込んだ?
どちらにせよ、ここに居続けるのはまずいな…
俺はすぐさま少ない荷物をまとめると部屋から出た、ホールの方に行こうとしたら昨日の獣人の従業員が出てきて俺に耳打ちをしてきた。
「お客さんは西区の情勢には関係ない人なんだから
早いうちに裏口から逃げてください。
可能なら助けを呼んで欲しいです」
そう言うと彼女は俺の袖を引っ張り裏口まで連れて行ってくれる。
裏口の扉を出ると狭い路地裏だった。
「おい、こっちに居たぞ!」
しかし路地裏の片側から賊らしき男たちが何人か突っ込んできた。
履物がスニーカーだとはいえ、来ているものが前の世界の学ランだ。しかもこれ入学時から買い換えられなかったからすごいきつい。
運動に適さない服装で本気の追いかけっこなど出来るわけがない。
「お客様には手を出させない」
俺を裏口まで誘導してくれた彼女が男たちの前に立ちふさがる。
しかし無理があるだろう、身長差は2倍までは行かないがそれなりにあるし、あちらはかなり体格がいい。
「私なら大丈夫だから早く行って!」
何とも死亡フラグのような台詞を吐き捨てて賊に立ち向かっていく。
よく見ると彼女の手にはメリケンが付けられていた。
小柄で素早い動きに賊は翻弄され、次々と倒されていく。
なんと恐ろしい従業員だ、女将さんといい、彼女といい、簡単には負けないのでは?
しかし彼女は今の数人の相手で息があがっているようだった。
「早く助けを…」
俺は腰を抜かしそうになりながら昨日来た中央区の方に向かって走り出した。