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幸福の女神  作者: 熊谷 駿
[1章] ~~探索編~~
3/10

フォーレン探索

荷車のおっさんに連れてきてもらった帝都フォーレン

色々探索してみようと思ったのだがまずは…

 おっちゃんの荷車に揺られること数時間。

 背景が草原から森になり、火山になりと何度も変わっていき、ついに大きな外壁が見えてきた。

 道が続く先に目をやると大きな検問所がある。

 検問所では幾人もの騎士風の鎧に身体をつつんだ兵士が先に来ていた荷車を調べている。


「おい小僧、俺が乗せてやれるのはそこまでだ」


 おっちゃんが検問所を指さして俺に言う。

 どうもこの先は身分証ならぬ都民証という物がないと入れないらしい。

 前の荷車が街に入っていくと兵士達が、この荷車に集まってくる。

 おっちゃんが親切にも兵士に話を通してくれているようだ。


「あぁ、こいつはフォーレンの辺境にある小さな街の小僧だ

 まだ都民証持ってないそうだから発行してやってくれないか」

「ふむ、お前名前はなんと言う」


 そういえばこちらの世界に来てから名前考えてなかった、流石に元の名前のままじゃまずいか。

 ネットじゃあ裕司って名前をそのままアルファベットにあててUGとか使ってたけども…


「俺の名前は…」


 ほんと何にしよう、名前考えるの苦手なんだよね。

 こんなことならおっちゃんの名前を参考に聞いておくんだった。


「ウーグです」

「お前絶対今考えただろう」


 即バレてしまった、いやだって仕方ないじゃん俺名前考えるの苦手なんだよ

 ちなみに名前の由来は俺が前ネットで使っていた『UG』から持ってきていたりする


「ま、これから都民証を発行してやるが

 あの部屋じゃ嘘偽り言えばすぐわかるからな」


 どうやらハッタリは通用しないらしい。

 体格のいい兵士に先導され巨大な街門の一角にある小部屋に通される。

 そこには2人の兵士が居て部屋の隅に書記と思しき人が座っている。

 部屋の中央辺りには天井から紐の様なもので鈴か何かが付けられている。


「さて、ウーグと言ったか、さっそく質問だ

 この街に来た目的は?」


 いきなりピンチな質問が飛んできた。

 観光なんて言ったらそれこそ嘘がバレるだろうし…

 しかし俺と同じ転生者を探しに来たなんて言ったって信じてもらえないだろう。


「旅をしてまして、この街で1度腰を据えて装備を整えたり仲間を見つけたりするつもりです」


 これこそ一番無難な回答だろう!

 あながち間違ってもいなかったからだろうか天井から下がっている鈴の様なものは少しも動かない。


「ふん、次の質問だ、お前の本当の名前は何という」


 ちっとも信用を得られていなかった。

 この兵士の人達にはあくまでも外部から来た怪しげな小僧としか伝わっていないらしい。


「ウーグですよ、ウーグ・アルダクトン」


 これは聞かれると思って予め考えていた性と名を言う。

 元の裕司という名前はもう捨てて、これからは『ウーグ・アルダクトン』として生きていこう。

 この質問でも鈴がならなかったからか、兵士はため息をついた


「疑ってすまなかった、近年魔物が人に化けるという噂も広まっていてね

 警備が厳しくなっているんだ」

「気づいただろうが、このベルの他に部屋中に警報がついていてね

 悪意を察知すると鳴るような魔法が掛けられているんだ」


 俺の額から塩水が零れ落ちる、もし警報が鳴っていたら俺は今頃どうなっていただろうか。

 考えるだけでもおぞましい。


「さてウーグくん、君の都民証を発行しようと思うがタダってわけじゃない

 500チェルだが、手持ちはあるかね?」


 俺は頷くと小袋を傾け小さな金の延べ棒を1本取り出して兵士に渡した。


「ほう、2000チェルも持っているのか、大切に使うんだぞ」


 そう言うと兵士は大きめの銀の延べ棒を1本と小さめの銀の延べ棒を5本渡してきた。

 大きめと言っても太さが指1本分か2本分かと言うくらいの違いでしかない。

 まぁ強いて言うなら小さい方より少しばかり長いか。

 この世界の通貨は持ち運びがとても不便だと感じたが口には出さないでおく。


「じゃあウーグ、ここに立ってくれ

 都民証を発行するのには、この魔方陣に入ってもらって

 そいつの適正や特徴などを都民証に映し出すんだ」


 俺は言われた通り地面に掛かれたそれっぽい物のうえに乗る。

 するといきなり薄紫色の光が俺の体を包んでいく。

 こっちの世界に来て初めて魔法っぽいものをみた。

 以前ゲームで似たようなシチュエーションを見たこともあるが迫力が違う。


「ふん、残念ながら魔法の適正は無いようだな

 だが武術は鍛えれば伸びるだろう

 それと…なんだこれは見たことがない特徴だな」


 兵士がそう言って出来上がった都民証を見せてくれた

 そこに書かれていたのは『運神の加護』

 恐らく腕のアレのことだろうと思ったが、これは公けにしない方がいいと思い彼には黙っていた。


「でもこれで、このフォーレン内での滞在が許可されるぞ

 ただ最初は主に西区辺りの宿屋や武器屋しか取り扱ってくれないだろうが

 それも最初のうちだけだ」


 兵士の話によると、この世界での都民証はグレード制になっており、クエストや他人の依頼など

 請け負ったものをこなしていくと段々とグレードが上がっていくらしい。

 依頼も魔物の討伐だけでなく、薬草や木の実などの採取、物資の運搬や街の土木工事などと種類は沢山あるらしい。

 要は仕事をすれば都民証のグレードはどんどん上がっていくという。

 カッパーから始まり、シルバー、ゴールド、エメラルド、アメジスト、ダイヤまであるという。

 エメラルドにまでなるとフォーレンでは様々な店が値引きしてくれるともいう。


「ウーグはひ弱そうだからな、採取の請負仕事から探してみたらどうだ」


 色々教えてくれた気さくな兵士が笑いながら言ってくるが、どうも嫌味に聞こえてならない。

 だが金ならあるので、とりあえず街中を見回ってみることにした。


「すげぇ…!」


 思わず感嘆符が出てしまう、日本とは全然違った街並み、屋台、それに人々の服装。

 華やかとは違うがそれでも感動出来る。

 新鮮なものばかりで街道を歩いているだけでも色々なところに目を奪われる。

 街道沿いには露店が沢山並んでいて賑わいを見せている。

 歩いている人も身分などにより装いが違うようだ。

 鎧を来た兵士も2人組で巡回しているようだ、この辺りはそんなに治安悪くなさそうである。


「お、そこの変な服のにぃちゃん、安くしとくぜ、見ていきない」


 露店の脇で客を呼び込んでいるおじさんに声をかけられた。

 にしてもこの服はこっちの世界じゃ変なのか。

 後でこちらの服を買って着替えようか。

 とりあえず声をかけられたのでおじさんの露店を見てみる。

 この人の露店には食料などを置いてあるようだ、見たことある果実や野菜などが置いてあるが、中でも俺が気になったのは…


「おじさんこれは?」

「そいつは…なんだっけか、確かリョーショックとか言ってたか

 前にうちで働いていた男が作ったものなんだが、

 見栄えがあんまりよくないんで売れてないんだよ」


 これって軍事用のレーションとか言うやつじゃない?

 てかリョーショックじゃなくてそれ糧食だよね…?

 これを作ったのは軍事関係に勤めていた転生者のようだ。

 だがもし糧食であるなら旅するのには役立つな、中身はなんだろう。


『プリン味のパイもどき』


 何故だろう、味と触感の想像が出来ない…何故そこを混ぜようとしたんだ?

 しかもなんだ『もどき』って、完全にそれに出来なかったのか。


「お、にいちゃんそれに興味あるのかい、この際だまけにまけて1000チェルでそれ全部売ってやるよ」

「じゃあ買います」


 さっき兵士に貰ったお釣りが丁度余っていたので、それをカウンターに置く。


「へへっ…まいど!」


【<リョーショック>を10個購入しました】


 うわ…なんだ今の頭に響く声…

 声の出どころを探して辺りを見渡す俺におじさんが教えてくれた。


「なんだいにいちゃん、知らねぇのか?

 都民証を持ったやつが買い物すると、買い物の記録が全部記録されるんだ

 それは食料品に限ったことじゃねぇぞ、武器や防具なんかもそうだ

 まぁいわゆる盗難防止策ってやつだな」


 なるほど、魔法の効果によるものなのかな?

 都民証を見てみると、裏面に確かに購入履歴が書かれていた。


「ほらよ、にいちゃん、商品だ」


 おじさんが丁寧に布に糧食を包んでくれた。

 持ち運ぶためのものを持っていなかったのでそれは助かったのだが…


「布代、100チェルな!」

「あぁ、きったねぇ」


 お金はあの小袋からいくらでも出てくるみたいだからいいんだけど…

 やっぱり損をした気分になるよね。

 ちくしょう、今後は買い物でも用心しよう…

この話からは1日に1作品の予約投稿を設定しておきます

追いつかなくなったらすいません。

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