冒険者とは
2章スタートです
テーマは冒険者
ショウが訪ねてきた日から数日が経ったある日、日課になりつつあったフェレによる包帯の交換を終えると彼女と一緒に宿屋から出た。この日は名誉領主の仕事、というより女将さんより押し付けられた書類を組合に提出するために中央区に行くことになっていた。
「ウーグ様、まだ治りきってないのですし私1人で行けますから安静にされていた方がいいのでは?」
「大丈夫だよ、もうこんなの治ったも同然、今は少しでも人手が欲しい状況なんだし俺も動かないと」
騒動が起きてから5日ほど経っていたが西区の壊れた建物や物品などの修理などは終わっておらず、フェレは俺の様子を見つつ街の復興に協力し、且つ宿屋の仕事も欠かしていなかった。
ぶっちゃけ彼女にこれ以上無理をして欲しくないのだが、言っても聞いてくれない。
「フェレこそ最近働きづめじゃないか、君も少しは休んだらどう?」
「この程度造作もありません、フェレ様が楽を出来ればそれでいいのです」
どうにかして彼女を労ってやりたいものだ、しかし中々いい案は浮かばないのが悩みどころ。
俺はあの一件から都民証がシルバーに昇格されていた、昇格には特に何の手続きも必要なく、気が付いたら勝手に変わっていたので、その点に関しては便利であると思った。
ぶっちゃけどこまで上がれるのか分からないけど、少し興味があった。
それに服装だが、女将さんが気をきかせてくれて西区でも高級な服を用意してくれたのだ、とは言え前世の俺の私服などから比べたら若干見劣りするが、これでよそ者扱いもされずに済みそうだ。
「中央区は私もそんなに詳しくないのですが
お母さんから貰った地図がありますので大丈夫です」
見ると彼女の手には小さな紙きれに殴り書きされたような粗末な地図が握られていた…が。
本当に簡略化された地図であり、これでは迷って当然と言わんばかりのものだ。
でも女将さんも忙しい合間を縫って書いてくれたものだろうから文句を言うことは出来ないのだが。
「ちなみにフェレ、方向感覚って自信ある?」
と、そんなことを聞いてみたのだが…
「はい、もちろん!
あちらが西であっちが東です」
思わず絶句する、西に関してはあっていた(歩いて来た方角だから間違える方が難しいだろう)のだが、東と言って北区の方角を指さした。
「えっと…そっちは北だね、東はこれから向かう…あっちだよ」
彼女は顔を赤らめて俯く、何分自信ありげに言ってしまったので恥ずかしかったのだろう。
これは悪いけどあてにしない方が良さそうだ。方位磁針とかあったら彼女に持たせてあげたいが…果たしてこの世界にはあるのだろうか?
彼女と話しながら歩いていると別の人物に声をかけられた。
「お、ウーグじゃないか
こんな所で何やってるんだ?」
幾分か懐かしい顔だった、初日に中央区で会った兵士だ。
「お久しぶりです
えっと…貴方は確か中央区で…」
「ああ、それなんだがよ
先日西区であった大規模騒動あるだろ?
それの事後処理とか復興支援で転属になったんだ」
と言うかこの人に俺の名前教えたっけ…と思い聞いてみると、その兵士は笑い出した。
「あはは、君のことは中央区衛兵団の中でも専ら噂になっていたよ
よそ者なのにいきなり西区の名誉領主に成り上がったってね
一体何をしたらそんな叙勲みたいなことされるんだい?」
「ちょっと頑張っただけですよ…」
笑いながら受け流す、この腕の力のことはこれ以上広まらせちゃいけない気がした。でもだいぶ手遅れな気がするが…
「ちょっと頑張った程度で名誉領主か、大変だねぇ
そうだ呼びづらいだろうから俺のことはセムって呼んでいいよ、同僚からもそう呼ばれている」
そう言えばこの人に対してはフェレが過敏に反応しないな、どうしてだろう?
彼女を見ると少し憎らし気な目で彼を見ている。どうやら突っかかりたくても突っかかれない理由があるらしいな、なんだろう、都民証のグレードとかかな? それっぽい話を振ってみるか。
「そう言えばセムさん、俺もう都民証のグレードがシルバーになったんですよ」
「おお早いな、俺もゴールドになるまではだいぶ苦労したよ」
やはりこの人の都民証は俺やフェレより1段階高いゴールドのようだ、昨日フェレが俺の世話をしてくれている時に言っていた。この世界では格上の都民証を持つものには相応の態度で接しないといけないという暗黙の了解があるらしい。
あまりに不相応な、無礼な態度を取ると捕まることすらあるようなのだ。
そしてゴールド以上の都民証は特別な功績をあげないとなれなくなる、各地方を治めている貴族は元々格上の者だったり、王や国へ大きな貢献をしたりした人達で、彼らはエメラルドの都民証を持っているそうだ。エメラルド以上の都民証の持ち主は買い物時に割引になったり、質の高いサービスを受けることが出来たりと色々な特典もついてくるらしい。
「そういや後ろの子は?」
「ああ、彼女は新しい西区領主の元で働いてる人ですよ
今は私の仕事のお供に同行してくれています」
丁度良かったので女将さんの地図を見せて場所を聞いてみた、だが。
「なんだこの地図は…中央区の道が整備されていて分かりやすいからとはいえ、これはないだろう」
セムは笑いを堪えながら女将さんの書いた地図を俺に返すと代わりに別の紙をくれた。
「これを持っていくといい、中央区近辺まで書かれた地図だ
有名どころの建物の名前まで書いてあるぞ
それから何か困ったら俺の名前を出すといい
西区の名誉領主とはいえ、中央区じゃ通用しないと思うしな
中央区じゃ都民証のグレードが全てだ」
初日に会った時もそうだったが、とても親切にしてくれる。このまま仲良くなれれば今後のことを相談出来る人が増えるかもしれない。
「ありがとうございます!」
俺が礼を言ってその場を後にしようとした時、また別の声が俺たちを呼び止めた。
「待ってくれウーグくん!」
その声のする方を見るとショウが居た。
相変わらずフェレは彼のことを邪険に扱っている。
「中央区に行くんだろう?
俺も連れて行ってくれないか、なんなら俺も君に、いや貴方に仕えてもいい」
「いやいや流石に仕えなくてもいいですけど、どうしてついて来るんです?
ショウ1人で行けばいいのでは?」
「俺だけだと中央区に入ることすら出来ないんだ」
なんでもショウの身につけているものがみすぼらしく賊と疑われて入れて貰えないのだとか。
俺がこの前行った時は明け方でたまたま兵士が手薄だったらしい。
「ついてくるのは構わないけど、面倒事は起こさないでくださいね?」
「大丈夫だ、というか俺がそんなやつに見えるか?」
まだ共にした時間が短いから、いきなり信用しろっていう方が難しいんだよな……
「と言うかショウは何のために中央区へ?」
「少し前に働いていた商店をクビになってしまってな…
食い扶持に困っているので中央区の組合に行って冒険者に登録しようと思ったんだ
冒険者になれば依頼をこなすだけで見合った収入手に入るし、一定の間隔で活動に応じて資金が支給もされる」
更に彼の話は続く。
この帝都での冒険者とは強さによる位わけは無く、冒険者の中での隔てはない。
自分に見合った難度の依頼を受け、それをこなす。難しい依頼には冒険者のパーティ人数に制限(〇人以上)が付くらしいが、もし失敗して大怪我、若しくは死人が出たとしても組合は手当を出すことはない。
「どうだ、ウーグも興味あるだろう!?」
「あ、お金には困ってないんで」
「即答で拒否!?」
俺がそんな危険を冒して何の特があると言うのか、金ならこの小袋から幾らでも出てくるから稼ぐ必要などない。
「頼むから見捨てないでくれよお…」
「分かりました、分かりましたから泣きつかないでください!」
人目もあるのだ勘弁してほしい。
こうして3人で中央区に行くことになった。
ショウが仲間に加わった!




