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心の守護者と魔王

黒く塗られた鎧。肩の部分が鋭くはないが尖り。その中で一つだけ純白が赤く血塗られていた。


「……たす…かった?」


斬り伏せられた何かは、いつしか消え去っていた。


鎧を纏う何かはこちらを向き、剣を収めた。


「……あんたは?」

「………」


疑問を投げかけると、何かは右の指で音を鳴らした。

すると、鎧は灰の様に崩れ落ち、身体のラインがしっかりと見える様になった。


「俺は、魔王ジノアー。この世界を……何かしに来た」

「は?」


綺麗な曲線のラインと一人称が矛盾するがそのソプラノ声が性別を判断させた。

俺っ子魔王。


「うおぉ!皿割れてる!?って誰!?って血!?」


動き始めた父親が慌てふためく。


『息子よ!?死ぬな!?……え?何この子可愛い』


また、頭の中に響く。おい、俺の心配だけしとけや。

しかし、それを口にする間もなく倒れた。



「また、病院だ」


またである。何の害もないと踏んでいたがこんな目にあうとは。

しみったれた天井以外にも目をやる。


「大丈夫か?」


そして、横に当たり前の様に魔王が座っているのを確認する。


「……あんたは?」

「先程も言ったであろう。魔王ジノアーだ」


これが謎の奴らが言っていた世界を支配する存在。

とてもそうは思えない。


「何で俺を助けた?」

「そうしなければならないと思ったからだ」


何とも言えない答えだな。


「一応、ありがとな」

「魔王である俺に向かってその口の利き方!……まあよい」


許すのかよ魔王様。


「…魔王ジノアー様はあの謎の生物について何か知ってますか?」

真なる心の表れ(シュバルツハート)だ、確か。……あと、様は要らん」


真なる心の表れ(シュバルツハート)か。中二くさいな。

あと、魔王としてのプライド的なものは無いのだろうか。気を遣って様をつけたというのに。


「確かって…」

「すまんな記憶があやふやなのだ」

真なる心の表れ(シュバルツハート)について他に何かないですか?」

「確か。対象の生物の心を守護する存在だったうん」


心を守護。父親の真なる心の表れ(シュバルツハート)が消え去った後、本音が聞こえた。


つまり、人の頭上にいる真なる心の表れ(シュバルツハート)を倒せばその持ち主の本音を聞ける様になる……という事だろうか。


「何であの二人には無かったんだ?」

真なる心の表れ(シュバルツハート)は心の繋がりに影響される。心の繋がりが強いほど真なる心の表れ(シュバルツハート)は弱体化する、そうだ」


俺は真なる心の表れ(シュバルツハート)が出現しない程あの二人と分かり合えていたという事か。


真なる心の表れ(シュバルツハート)についてはわかった。


「……あんたは?」


三度目の質問である。


「むむ!?魔王ジノアーだと…」

「いや、名前じゃなくて。何で俺といる?」

「………そこが、何もわからんのだ。他の事は何となく分かるのだが。でも、お主といなければならんと思うのだ」


俺といなければならないか。俺の手に入れたこの人の心を読める力。その発動条件にあんな凶暴な奴を倒さなければならないと。


「もしかして、あんたは俺の真なる心の表れ(シュバルツハート)?」

「……違う気もするが、先までお主の中で眠っていたしな……」

「そうなの?」


確かに何処からとなく突如現れたので不思議には思っていたが。


「まあ、そういう事にしておいてやろう。しっくりとくる」


――――――――――――――――――――――――――


停車した列車に思考を掠め取られた。


「行くぞ」


隣でウトウトとしていた千春を呼びかけながら乗車する。

先程、心配の声を投げかけられた気がするのだが。


跳ね上がり駆け寄ってくる千春を尻目に、また思考を巡らせた。



あれ以降、とりあえず母親や少し親しい友人の真なる心の表れ(シュバルツハート)をジノアーに狩ってもらった。

俺の仮説は正しく本音を聞けるようになった。

彼女は思ったよりも協力的で、いつもは俺の心に宿っている。が、たまに一人で外に出てる事がある。そして、今もいない。


一年半で彼女のことが少し理解できた。

どうやら魔王であるのは本当らしい。剣さばきは見もので、父親の真なる心の表れ(シュバルツハート)よりも強力な奴を簡単に捻っていた。


そして、何かと乙女である。色々な事に興味を持ち、突然心から飛び出してくる事がある。


彼女の存在は、家族しか知らない。勿論、友達として紹介している。


一人で何処をぶらついているのか知らないが何の事件も起きていないので放っておいても大丈夫だろう。



「千春、そろそろ準備しろ」

「え?何の?」

「…遅刻はしたくないだろ?」


少し恥ずかしいが電車の中で屈伸する。


『え!?何やってるの!?もしかして、そんなに本気で走らないと間に合わないの???』


ただの迷惑行為だと理解はしている。だが最後の大会以降ロクに運動をしていないんだ。


クローズ。


心の中で思う。こうする事で人の心を読まなくてよくなる。これに気付いたのは確か一年程前、英語の勉強中のだった。

オープンとクローズ。それが能力発動のトリガーだ。



列車は停車し、扉を重そうに開いた。

そこからゆっくりと下車する。その横を全力で走って行く千春。


流石に飛び出しは危険だろ。

階段を登り切る手前で俺がいない事に気付き、足踏みしながら目で早くしろと訴えてくる。


「わかってる」


仲良く駅を出てから走って高校に向かう。

千春のペースに合わせて走っていたが死ねる。

もう、歩こう。


戦闘はあんまり無い。

設定の説明が苦手すぎて同じ言葉を何度も使ってしまったのは申し訳ない(あとネーミングセンス)。

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