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何かと何か

「今日から俺も高校生か…早いもんだな人生って」


 着慣れないブレザーを纏わせ朝食に齧り付く。

 時計の長針はいつもよりも半周遅れていた。


「行ってきます」


 加齢臭を漂わせるこの家の大黒柱が締め切られた扉を開き出て行く。

 この光景を見るのは久しい。


「じゃあ、俺も」


 綺麗に片付いた食器を台所の母に渡す。それと入れ替わるように巾着を渡される。


「行ってらっしゃい。緊張するかもだけど頑張って友達作るのよ」

「おう」


 母の言葉を聞き流し加齢臭を辿って外に出る。

 ガタガタと鳴るエンジンを乗せたオンボロが走り出した。

 オンボロの裏に放置されたオンボロの自転車に跨り道に出ようとした。


「おはよう」


 聞き慣れた声が投げかけられる。


「…おはよ」

「どうしたの元気ないじゃん?まさか、朝早くて寝ぼけてるの?」

「そうかもな」

「全く、これから毎日この時間に出ないと行けないんだからしっかりしてよね」


 幼馴染から心配の声とため息がまた投げかけられた。



 とても耳障りな音を奏でるオンボロを駅の駐輪場に止め改札を通る。


「あと四分か」


 千春は時間を確認した。それ以外の動作は見られなかった。


「行ってこいよ」

「…うん」


 俺は当たり前の様に言う。千春は少し恥ずかしそうに駆けていき、化粧室へと吸い込まれていった。



 目の前を目的の列車が通り過ぎる。それと同時に階段を痛めつける様に登る音がホームに響いた。


「あー行っちゃった」

「遅かったな。……次でも着いてから走れば間に合う」

「ごめん」


 息を何度も吐き整える千春は近くの椅子に座る。

 俺も立っているのも何だからその隣に腰をかけた。


「入学日に遅刻はやばいよね」

「やばいな。恥ずい」

「本当にごめん」

「…俺が勝手に待ってただけだ。俺が本当に遅刻したくないと思ってたなら、今は電車の中だ」


 あの日手にした力により、口から出た無駄な一言でこの状況を生み出した訳でもある。


 思考をあの日の出来事で塗りつぶした。


――――――――――――――――――――――――――


「……?」


 世界は音を取り戻し何事もなかったかの様に動き始めた。


『ビックビッグまでの進路を……』


 手に握られていたスマホから音声が流れる。


「……一体何だったんだ」


 脇道を確認するもそこには鼠一匹しか確認する事が出来なかった。

 あの謎の会話、あの状況。会話はふざけた内容でしかなかったが俺以外の物が止まっていたため、完全に否定してはならないのだろう。


 つまり、今何処かに魔王が?

 しかし、だからといえ警察なんかに通報したところで馬鹿にされるだけだろう。


 ……どうしようもないのだろうか。

 とりあえず気を紛らわす為、ナビに従いビックビッグに向かった。



「遅い!!違う道から出てくるし」

「そうだよ紅馬。もう十分は待ったよ」

「……悪かったな…」


 色々な事に敏感になりながら歩き目的地に到着すると二人が前に飛び出してきた。

 何事も無かった。一体あれは。


『私が置いていったのが悪いけど、紅馬なら言ってやってもいいよね』

『ナビ使ってるし、どんだけ方向音痴なんだ紅馬』


 ――ッ!?


 電撃の様に頭の中に言葉が響く。

 丸で目の前の幼馴染の本音の様なものが。


「今なんて…」

「え?遅い」


 何なんだ?千春の反応からして心当たりはないのだろう。

 口にしてはいない……ただ思っただけの二人の本音?


 先の出来事が不可思議過ぎるあまり、この状況にも何となくだが結論が出る。


 謎の会話をしていた謎の奴らが魔王を召喚する為に何かを何かし実行していた。


 しかし、魔王は現れていない。

 謎の奴らはバグがどうのと言っていた。またバグってしまい何故か俺が影響を受けてしまった……とか。


「まさかな……」

「むぅ。早く行こ!!」


 千春に手を取られ、大きな自動ドアを通りビックビッグに入った。



「………!?」


 言葉を失う。どこを見ても人、そして人。丸で推し詰められ出荷を待つしかない家畜の様だ。


 しかし、言葉を失う対象はそれではない。

 その人の数だけ、言い表せない何かがいた。

 それは人の頭上に停滞し全て違う形をしていた。


 丸で、モンスターの様な。


 ここで、俺の意識は飛んだ。

 救急車で搬送され近くの病院で人に酔っただけと診断された。二人には迷惑をかけてしまった。



 その日以降、俺は誰の頭上にも何かを見る様になった。

 幼馴染の二人を除いて。


「どうしたんだ?父さんの頭なんか見て。はっ!まさか白髪が!?」


 食事中、父親の何かを凝視していると一人で騒ぎ出した。


 何かはどうやら俺にしか見えない様だ。

 何かが何の害もない事がわかった。たまに可愛い仕草なんかをしたりして愛おしくも思えてきた。


 父親の何かの見た目は、猫の様な狸の様なとても弱々しそうだった。


 食事を終えて食器を片付ける時、父親の背後を通り過ぎようとした時、何かと目が完全に合った。


「……ども」


 一応挨拶をする。


 ―――ギャァア!!!


 何かは俺を威嚇するかの様に大きく叫んだ。

 そして、父親の頭から離れ四足で床に着地する。何となくだが大きくなった気もする。


 俺はその行動に驚き持っていた食器を床にぶちまけた。

 これは叱られると、咄嗟に俺は母親を見る。


「……止まっている」


 母親を含め時間を刻む音を奏でていた時計も全て止まっていた。


 ―――シャァア!!!


 父親の何かは突然爪を立て飛びかかってきた。


「…いってぇ!!」


 腕に爪が刺さり牙も埋め込まれ痛みを感じた。血が流れるのを実感し本当に噛まれていることを理解した。


 噛まれた右腕を俺は壁に叩きつける。

 右腕が壁に到達する前に腕は止まった。間に挟まった何かが悲鳴をあげ牙と爪を引いた。

 その一瞬を逃さず何かを振り払い台所に駆け寄り鋭い包丁を手にした。


「物理が効く。いてて…」


 血が流れ出し、長くは持たない。

 何かは立ち上がり、二足で怒りとともに走ってきた。


「はぁ!!」


 包丁を何かの頭目掛け振り下ろした。が、両手で受け止められた。いわゆる真剣白刃取り。


「お見事」


 と感心していると何かは一回転して回し蹴りを俺の腹部に繰り出した。

 その力は尋常ではなく吹っ飛び壁に叩きつけられた。


「ぐはぁ!?」


 その衝撃で肺から酸素が吐き出される。


「ゴホッ!!ゴホッ!!」


 息をしようともがくが、何かは一歩、また一歩と近づいてくる。


「ち、ちくしょおがぁぁあ!!」


 血が噴き出す。

 それは、俺のではなく何かの。


 何かと俺の間には、硬く丈夫そうな鎧を身につけ血の付着した剣を下げる何かがいた。


 一体何なんだ。

何かとか何かとか何かとか

わかりずらくてすみません。

モチベ上がったから続ける。

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