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世界のヒミツ

  僕は、今までの人生で楽しいと思ったことはきっと数えきれないほどあるだろう。

 しかし、本当に心の底から楽しいと思うことは少なかっただろう。

 楽しいこと以外にも、悲しいや苦しい、なども同様だろう。

 僕は、心の底から人生を楽しみたい…傷ついてもそれを乗り越えればいい事がある…そんな人生に。


 …ねぇ、聞いてるの?


 ふと、聞き慣れた声が問い掛ける。

 僕は意識をその方へとやった。


「ごめん、いろいろと考え事してた。」


 とっさに受け答えする。


「まったく、話ぐらい聞いてよ。」

「わかった。なんの話だっけ?」

「だから、授業で分からなかったとこを教えてっていってるの!」

「はぁ、また数学か。なんで分からんのだ…」

「そうだよその通りだよ数学だよ!」

「はいはい。」


 その声の持ち主は俺の幼馴染である宇田 千春だ。

 千春は成績は良いが文系気味だ。数学が何故か出来ない。

 が評定は最高評価だ。何故ならこの俺に教えを請うているからだ。


「ってもう、6限終わりか…。教える時間あるか?部活あるし」


 もう授業は全て終わっていた。気付けば終わっていた。そう、俺は授業を聞いていない。寝たりラノベを読んだりしているともう放課後になる。放課後には部活に思っ切り打ち込んでいるから時間が無い。


「うーん、じゃあ部活の後でいいよ」

「あー、わかった」


 がこいつの頼みを断ると後で面倒なことになるから素直に聞く。

 教材を鞄に詰め教室を出て部室に向かう。

 部室で体操着に着替えラケットを持ちコートに向かう。


「あ、紅馬せんぱーい。遅いですよ」


 コートから後輩であり幼馴染の坂ノ上鉄哉が俺の名前を呼ぶ。


「鉄、すまん寝てた」

「全く、練習相手が居なくて暇でしたよ」


 俺と鉄哉と千春は物心つく前から一緒にいた。

 俺と千春は二年、鉄だけ一つ下なため今年一年としてこの交架中学校に入学した。


「紅馬先輩、もうすぐ夏の大会があるんですからもっとテニスに打ち込みましょうよ」

「……なあ、先輩はもう辞めてくれ。なんかきもい。それに少し寝過ごしただけだ、真面目にやってる」


 鉄は普段は紅馬と呼ぶが学校では千春も含めて先輩を付けてくる。楽しいのか?


「…じゃやりますか紅馬くん。俺らの名を全国に轟かせてやりましょう」

「…はあ、まあ県入賞出来るように頑張るか」


 何故君付けなんだよ。それに一、二年ペアで全国はまだ早いだろ。

 因みに小学一、二年ぐらいから二人でテニスをダブルスでやっていた。去年はシングルスで地区大会二回戦目で負けてしまった。

 千春も女子テニス部に所属している。練習場所は近くだが、偶に練習試合をするぐらいしか関わりがない。因みに千春は、もともとシングルスの為、去年良い所まで行っていた気がする。


「今日は居残り早めに切り上げるぞ」

「あ、やっぱりやる気無いじゃん」

「千春が数学教えろって言うんだよ。仕方ないだろ」


 そして、練習をひたすらする。練習相手は三年ペア。正直言って強い。勝てなくは無いが次が最後の大会とあってか今日は勝てる気がしない。


「ありがとうございました」

「おう、良い練習相手だったよ」


 三年とはあまり話た事は無いが結構良い人達で、引退は少し悲しい。


 その後居残り練習を早めに切り上げ部室で着替え門で千春を待つ。



「待って〜紅馬先輩!」

「待つよ。歩くの遅えな鉄」

「今日、ちょっと持ち帰る物があって重いんすよ」


 同時に切り上げた為そろそろ千春が来る頃だが、まあ、色々とあるんだろう。何があるかはわからんが。


「あっ紅馬〜。なんだ、待っててくれたんだ」

「はあ、俺の家で良いのか?」

「うん。あれ、てっちゃんも来るの?」

「いや、いいっす千春先輩。今日宿題いっぱい出てるんで」


 やはり、変だ。学校での俺らに対する話し方…気持ち悪い。


 帰宅。所要時間は十分かからない程度だ。

 俺らの家は三軒連なっている。

 鉄、俺、千春の順だ。親同士も仲がよく、真ん中にある俺の家が良く行事の時に用いられる。


「じゃあな鉄」

「てっちゃんまた明日」

「おう、じゃあな紅馬!千春!」


 うん、しっくり来る。


「ただいま。母さんー」

「何?あら、千春ちゃんどうしたの?」

「数学を教えて貰うために来ましたー!」

「そんだけ、だからご飯まだ後で良いよ」


 そう言い残し自室の有る二階へ上がる。


「失礼します」


 部屋はしっかりと片付けられていて、中二の男子の部屋とはとても思えない。人を上げると知ってから片付けた訳でも無いのに。と千春は思っただろうが昨日偶々片付けただけで有る。


「いや、職員室かよここは」

「はははーそうだね。つい、結構久しぶりに紅馬の部屋に来たから」

「そうだったか?で、どこが分からないんだ?」


 整頓された学習机ではなく、少し小さめの机を挟んで座る。


「えーっと、ここからここまでなんだけど。基本は何となくわかったんだけど、応用が…」

「……これをこうするだけだろ?」

「なぁ!?…ん?なぜ?」

「…………」


 何故と言われても直感でこうなるのだが…なんて流れはいつも通り。何とか考えて説明するが上手く伝わらない。何通りか説明する頃には千春は理解し、俺は熟知してしまう。その為、数学は勉強を…いやこれが俺の勉強という事になるのか。


「…これで終わりか?」

「うん、ありがとね!…うーん、この量の理解に30分もかかっちゃったな。紅馬がもっと上手く教えてくれればすぐ終わったのに」

「おい、この程度の応用は授業聞けば出来るだろ!」

「…ずっと前から思ってたんだけど…紅馬ってさ…数学の授業の時…寝てるよね?なのに何で出来るの?」


 その問いに少しの間が空き、俺は照れながら千春から目線を外し答えた。


「…小学の時、中学から算数では無くて数学になるって聞いたからどんなもんかなぁとちょっとね。それで宿題やってる時にこんなのやったなって」

「……小学生の時に?…はあ、記憶力だけは良いんだから」


 千春はその答えに怪訝そうに言う。


「おい、それ以外悪いみたいな言い方するなよ」


 何故か馬鹿にされた気がする。まあ、その通りですはい。


「はぁ、なら早く帰れよ。もう、用ないだろ?」

「え?…別にまだいいじゃん。どうせ家隣なんだし」


 こいつ、まだ居座る気かよ…やる事無いだろ。俺は今から録画したアニメやら何やらを何やらしたいのに。


「いや、隣なら帰った方がいいだろ。早く帰ってください」

「何でそんなに帰らせたいの?」

「ここ、俺の部屋だし。自分の部屋ってのは一人でいるためにあるものだろ?」

「それは紅馬の偏見でしょ?」


 偏見なのか?俺はこの部屋に鉄と千春ぐらいしか上げた事が無いし、最近は誰も上げてなかったから一人でいる事しか無かった。


「……やる事無いだろ?」

「………」

「………」


 千春は目を泳がせ落ち着かない。謎の沈黙が流れるがその流れはとても遅く感じた気がした。


「……あっ……」

「………」


 千春は何かを言い出そうとしてそれを飲み込んだ。何なのだろうこの空気は?これが人を部屋に上げる事なのか?昔は普通だったのだが…。


「……あのさ、今度の休みどっか行かない?勿論、てっちゃんも一緒に」


 一度飲み込んだ言葉なのか別の言葉かはわからないが少し戸惑いながら発する。


「そうだな、大会が終わったらな」








「「ありがとうございました」」


 名前を知らない人と握手をしてその場を後にした。


「あーあ、負けちゃったね紅馬先輩」

「そうだな。いやーそれにしても強かったな」

「え?もしかして、相手が優勝候補だって知らなかったの?」

「そうなのか鉄?たしか千春も優勝候補に当たって負けて無かったか?」


 自分達の足音以外に走ってくる足音が聞こえてきた。


「そうよ!負けたわよ誤差でね!」

「誤差って。まあ、良い練習だったと思えば得たものは大きいし、それに来週は休み」

「あ、そうだった。大会が終わったら遊びに行くって約束してたって?」

「え?何それ俺知らないんだけど」


 鉄には千春が話していたと思ったがまぁ、どうせ乗ってくる。


「それで?どこにいくんだ?」

「ビックビッグ!!」

「どこ?」

「ビックビッグって東京じゃなかった千春先輩」

「東京?」

「うん、国内最大級のショッピングモール」

「へぇー」








「ということでやってきましたー東京ーー!!」

「うぇーーい!」

「恥ずいやめろ」


 千春に続き鉄まで。二人から距離を置いて歩く。


「紅馬は置いて、いくぞてっちゃん」

「おー」

「おい!?」


 あー。走って行ってしまった。まあ、ビックビッグに行っただろうし後で合流すれば良いか。


「ええと、この道を?いやあっちか?」


 道がありすぎ建物高過ぎどこですか?

 しまった、迷った。こんな時は地図はしまいスマホだスマホ。


「ビック…ビッグ……っと」


 通信マークがクルクルと回る。回る。回る………。

 回り続ける。


「えっ?圏外?…じゃないよな。…はあ、何故だ?」


 そして、その回転は止まった。


「おい、おい。諦めんなよぉ」


 画面のどこを触っても反応しなくなっていた。電源を切ろうとするが消えもしない。


「あー、詰んだ。近くの店にでも入って休憩するか」


 スマホから目線を外し辺りを見回す。


「は?」


 素の反応が漏れた。いや仕方がない。人も車も鳥も時計も雲も何もかもが止まっていた。


「何だ……これ」


 この状況俺はどうすれば。


「あー。バグったなこれ」

「?」


 脇道から声が飛んできた。


「最後の最後でバグるか普通?」

「バグったもんは仕方ないようん」

「本当なら魔王がこう『貴様らの休息の時は終わった…グヘヘ』ってこの世界を支配してバッドエンドだったのにな」

「ん?生体反応?」

「嘘だろ?停止中は全て消えるはずだろ?」

「また、バグか」


 何なんだこの会話は?


「うーん、これをこうして、これでどうだ?」

「ああ、良いんじゃねえの?」

「じゃあ、実行」


 ―――――――ポチッ



興味ないだろうけど多分続かない

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