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炎斬紅傑茜島  作者: 真夏咲
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パート-α-管理外区域23 前編

一夜ひとよ人の世 闇に立ち、


草鞋わらじを擦らす悔いの鬼、


迎え撃ちたるは人の鬼。


「ここは切り捨て当然の茜島だ。

死にたくなけりゃ疾く死にな」


沈む夕日に背を向け、じっと目の前の廃屋群を見つめる。


何かの気配を感じることもなく、刻一刻と出撃までの時間は迫る。残り5分、あとは合図となる通信を待つのみだった。


8時間前


「朝方、本部から新しい任務が下った」


会議室で唐突かつ、部屋中に響く大きな声で本部から与えられた任務を公開したのは支部長の中嶋恵桐(なかしまえぎり)だった。


「管理外区域23、N-m0093。かつて鬼の頻出地だったが、近くに紅傑隊の基地の23支部が新しく設置されてから数は減少、現在出現の報告もほとんどない。今回ついにそこの襲撃、安全の確保、及び開拓を行うというのが紅傑隊の任務だ。」


約一ヶ月ぶりという任務。待ちに待ったという声や来てしまった、など様々な声が聞こえてくる。もっとも一ヶ月前私はここにいなかったのだが。


そしてまた別の声も上がった。


「23...N-m0093...?」

「なんでわざわざここが...」


各々色んな考えを持つ中、その場にいるものの全てがある一つの疑問を感じた。なぜならここは目的の管理外区域と最短距離の23支部ではなく、24支部だからだ。


「恵桐支部長、なぜ最短距離の23支部ではなくここ24支部が動くのですか」


皆に変わって私が手をあげて質問する。


「新人の熱赤音(ほとぼりあかね)か。いい質問だ。しかしこれは新しく来た君に限らず皆が思うことだろう。今回我々は23支部に向かい合流した後に装備を整えて突入、23支部は主にサポートに回る。現在の23支部は人員の半分が検査に向かっていてとても制圧可能な状況ではない。それに迎撃、狙撃、防衛関連のシステムはあそこが47支部ある中で最も優れているからな」


都合が悪いならば日にちをずらせば良いのではないだろうか。そんな私の疑問を、次は別の人が質問してくれた。


春日芽衣(かすがめい)、めんどくさがりやで人懐っこい、緑色の髪と目が特徴的な人。ここに来て一番最初に仲良くなった人だ。


「しかし何故今...?失礼な話ですが検査終了後に23支部が実行すればいいんじゃないですか?」


「君たちの持つ能力には活性化のピークがあるだろう。多少の個人差はあるが平均すれば午後の6時30分といったところか。そして鬼が活動を始めるタイミングで、最も動きが鈍い時間が日没。それが概ね重なるのが今日からの1週間。だから他の支部も今週多くの出動命令が出ている。他、質問はあるか」


そういえばそんなことも教わった。ここに集められた"救才者"達、またの名を【アルファブランド】達は皆固有の能力と共に能力が最も活性化する時間、【オメガエミット】が存在する。

私には炎を操る能力があって、以前たしかに午後6時30分がオメガエミットと言い渡された事がある。


質問についてはこれ以上の進行を見せないまま、作戦の大体の内容、陣形の説明を受けて終了した。


ここに来て3週間、初めて鬼と戦闘する可能性のある任務。気を引き締めて取り掛かろう。


昼食後、私は出動準備が出るまでの間、芽衣の部屋で作戦内容の確認をなどをして時間を潰すことにした。


「あなたはここに来てからどのくらいのことを教わったの?鬼のこととか、紅傑隊のことは?」


内容の確認が取れたところで芽衣は私に個人的な質問をして来た


「あまり...もともと施設育ちで本部に突然引き抜かれて。教わったことといえば鬼の容姿と存在、そして紅傑隊の意義くらいです」


草履を履いた赤い体に二本のツノ、その強烈なビジュアルに私は変な団体に攫われたのかと思ってしまうくらい最初は信じられなかった。いや、実際には変な団体ではあるのだが。


「"鬼を滅ぼし民への平和を、鬼を砕き真なる統制を。"変な団体よね、どうせあなたも最初にこれ言われたんでしょ?」


思い出した。コレを聞いたときはヤバイ集団にでも誘われたかと思って必死に抜け出す方法を考えたんだっけか。


「あ、はい!そうです。忘れてました...それ。突然の事でよくわかんなくて。あとは私が救才者っていうことと能力についてですね」


「そうよね、私も授業中先生に突然呼び出されて突然ヘリに乗せられて」


授業中?ということは学生だったのか。体感だと20台前後と思っていたのだが。


「失礼、年齢のほうはいくつで...?」


「17、あなたの一つ上よ」


驚いた。面倒くさがりなことを除いて雰囲気だけなら大人に見えるのに...。

しかしなぜだ?なぜ私の年齢を知っているのだろう。私は一度もこの人に自分の年齢を言ったことはない。


「待ってください、何故私の年齢を知っているんですか?」


「ごめんなさい、紅傑隊は新人が来ることが決まると配属先の支部に隊員一人一人が新人の性質を知っておくため、前もって茜島(あかねじま)の方から簡単なプロフィールが配られるの」


茜島(あかねじま)...?」


「あぁ、本部のことよ。実在する茜島とは一切関係ないけれどみんなそう呼んでるわ。理由は知らないけどね」


新人の情報は知らせられるのに新人に対して情報が一切と入ってこないのはどうかと思うが画期的なシステムではある。どこまでプライバシーが守られてるかは知らないが。


「さて、もうそろそろ出動準備の時間よ、着替えて行きましょう」


普段は何もしない日があったり大抵のことは面倒臭そうな顔をするのに任務となると行動的だ。まぁ、着替えると言ってもパジャマから制服に着替える程度なのだが。ほとんど家にいるのと変わらない自由度があるのがこの団体の一ついい面ではある。


着替えを済ませ、予定の5分前に全員の集合が終わる。恵桐支部長の短い話を聞いたあと私達はヘリに乗り、23支部へと向かった。




遅くなってしまった...プロローグとは全くつながりのない熱赤音が主人公の第1話。後編をお楽しみに。

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