< ハジマリ >
午後10時の事。仕事終わりの帰り道。
人通りの少ない町の中、最初に言い出したのは一ノ瀬部長だった。
「今日の会議では助かったよ、お互いうまくいったことだし俺の奢りでいいから飲みに行かないか」
< futurity >
大したことはしていない。部長の出した案に少し色をつけただけだった。
それに家には妻子もいるし早く帰ろうとも思った。が、奢りならばいいだろう。変に断って印象を悪くしてもよくない。
< decision.link>
「では遠慮なく、ありがとうございます。行き先は任せます」
< fated >
「おう、いい店があるんだ、すぐそこにある」
そう言って部長は肩を揺らして歩き始める。行儀は悪いがこうして喜ぶ姿は微笑ましい。
自分もほおを緩めた時、一ノ瀬部長は何もない歩道の上で急に足を止めた。
「どうしましたか?」
返事はない。
今までの勢いは唐突に失せ、何かと思えばゆっくりとこちらを振り向き、
「ぉ......に......だ......!」
倒れたのだった。
鬼?鬼と言ったのか?なんのことだ?それは部長の方だ。なぜならその時の部長の表情はまさしく_______
鬼の形相だった。
喉には穴が空き、血を吹き出し、ひたすらに口を動かし、何かを伝えようとする仕草を見せながら部長はそこで倒れている。
< krush >
どうすればいい、どうもできない。救急車を呼ぶべきか、警察を呼ぶべきか。声が出ない、出せない、意識が回らない。足がすくむ。何か、何か手を打たなければ...!
< decision.link >
声を出さなければ。汗ばんだ手を喉に当てると、謎の虚無感とともに液体が手を伝うのを感じた。
< Game >
穴が空いている。何故だ?思考が停止する。
ふと顔を上げ、目の前の部長を越えたその先10メートル。
確かにそこには鬼がいた。
< Start >
何が始まったのか、お疲れのサラリーマンに何が起こったのか。詳しくは語りませんがこれが全ての< ハジマリ >。ゆっくりでも続けるつもりなんでよし良ければ今後もよろしくお願いします。