8 ツンツン娘と街へ③
街道を歩いて行く。相変わらず両手に女の子がくっ付いたまま。街まであとちょっと、ここまで結構あったなぁ。ちょっと足が痛いよ。でもおじさん幸せだから頑張れるの。温もりって素晴らしいね。
チラっと、隣に居るエステルちゃんを見てみる。
目が合ったと思ったら、プイって逸らされちゃうのよね、プイって。可愛らしいんだけどね。なんかちょと、寂しいよね。
なんかずっとこの調子だしな、くっ付いて来てくれるけど、あんまり喋んないんだよね。まだ落ち着いてないのかな? 結構時間たつし話してみようかな? 今度は気を付けて喋るよ! 前回見たいのは、心臓に悪いよ!
「えっと……エステルちゃん? 大丈夫? 落ち着いた?」
そう言うと、エステルちゃんの手がギュっと俺の腕を掴む。
「ッ……だぃじょうぶ……、さっきは……ごめんなさい」
俯きながらそう呟くエステルちゃん。
えらいね、頑張って言ったんだね。おじさんのハートもギュってなったよ。
不意に、前を歩いてたニック君とカティアちゃんの足が止まる。
ん? どした? なんか前の二人相談してるけど。
カティアちゃんが急に、街道横の大きな木に向かいジャンプした。
え? ちょっと……三メートルくらいジャンプしてません? ケモミミだとそんな身体能力高いの? すごくね?
俺が呆気にとられていると、エステルちゃんが説明してくれた。
「カティアはね……。風系統との相性がいいの。私は火が得意だけど、人それぞれ得意不得意があるの。カティアは小さい頃から自然にああゆう事が出来たの。でも普通の人にあそこまで高く飛んだり出来る人は、少ないと思うわ」
ケモミミさんなんかよく分からないけど、すげぇんだな。あれも多分、魔法なんだろうな。あと、エステルちゃんが普通に話してくれてよかったぁ。なんかぎこちないと嫌じゃん。
カティアちゃんを見ていると、弓を取り出し構えるところだ。
どっから弓出したんだろ? ケモミミに夢中過ぎてあんまり気にしてなかったけど、カティアちゃんなんかマント見たいの羽織ってるし。軽装備なのかな? 上着は布とレザーっぽいし。木の枝に膝ついて……ん? ズボンじゃないだと……!? あれはニーハイ? この世界にニーハイとかあんの?
ニーハイに目を奪われつつも俺は観察を続けた。
ホットパンツ&ニーハイってやつなの!? なんかちょっと地肌出ちゃってるし、そこがまたそそられるし。あのケモミミさんやりおるな……あっでも、今どきの子ってショーパンって言うんだっけ? 短パン? いやでもホットパンツでいいでしょ? おじさんはホットだもん。
ホットパンツに夢中になってると、矢をつがえるカティアちゃん。様になっておりますな。
一瞬矢が光ったと思ったら、すごい速さで空に飛んで行く。少し間を置くと、何かが落ちて来た。
ニック君がそれを、うまく盾でバウンドさせて地面に落とす。
大きい鳥さんが落ちてきました。正確には頭を射抜かれた大きな鳥さんですけどね。
イェーイっと、こちらにガッツポーズするカティアちゃん。アリスちゃんもキャーキャー言ってる。俺はちょっと、1メートルくらいある鳥さんは、あんまり見る機会ないからね、びっくりしちゃうよね。
カティアちゃんはそのまま結構な高さから、ピョンって降りてシュタッっと着地を決める。
スシュタイリッシュケモミミさん(ニーハイ)
俺も間近で見るために動くと、エステルちゃんのお手てが離れてしまった。
エステルちゃんは、手が離れてしまった事にちょっとショボーンとしていた。
すぐ戻るからね! そんな顔されちゃうと、おじさんキツイよ!
ちょっと罪悪感を残しつつ。俺は鳥さんの場所に向かった。
あれ、おっきいんだけど? こんな大きなニワトリさん見たことないですよ? こんなの基準だと、かなりおっかないんですが? これからやっていけるかな??
おじさんの不安をよそに、カティアちゃんはニコニコしている。
「いやぁ~当たって良かったっス! このグランディスバードは、とっても美味しいんっスよ! あとでみんなで食べるっス! あっ、エステルまだ収納できるっスか?」
「もう入りきらないわよ。さっき使ってたの見てたでしょ? カティアがしまいなさいよ! もう!」
エステルちゃんがプンプンしている。おこ? おこってやつ? おこなの?
ちぇ~、エステルのケチ~。そう言いながら仕留めた鳥さんに近づいて行くカティアちゃん。
その様子を眺めていると目の前に居た鳥さんが、カティアちゃんに触られるて光る。鳥さんは、消えてなくなった。
お……おう、これは多分魔法でいいんだよな? ちょっとは慣れたよ? でも消えちゃうとか、どうなってんの??
ビックリして固まっていると、リーゼちゃんが俺に近づいて来る。
あ……リーゼちゃん良い匂いするな。
「今のは、空間収納魔法ですね。アキラさんの国では、このような魔法は有りませんでしたか? 冒険者に登録すると、初期に教わる魔法の一つです」
優しく説明してくれるリーゼちゃん。
リーゼちゃんの匂いを堪能しているおじさん。
くっ空気吸わないとさ、死んじゃうからさ。ま……まぁ、不可抗力!
これはしょうがないことだと、言い聞かせながら、リーゼちゃんの説明を真面目に聞いた。
なるほどね。空間に自分専用の、空間を作る魔法って感じなのね。容量はその人の、持ってるマナの量で決まると。
めちゃくちゃ便利だけど、そんなに量は入れられないらしい。エステルちゃんは、四畳くらい入れられるって。え? 結構入るじゃん。 手ぶらで旅行出来ちゃうじゃん。ああ……だからキャンプ場が、気づいたら綺麗さっぱりになってたのね。まだちょっと、慣れませんね。時間も結構ゆっくり進むらしいよ? あと生きてる物は駄目なんだって。収納してもらって楽とかできないね。リーゼちゃんに収納されたいけど……難しいね。
おじさんもうちょっと長生きしたいもん。
リーゼちゃんの説明を終えて、みんなで歩き出す。あともう少しで街だ。
おお……。ヨーロッパの街っぽい? 地中海的な? 綺麗だなぁ~。湖も綺麗だし、外国の観光地みてぇだな。
キャッキャしている俺にツラれて、アリスちゃんもキャッキャする。
もうちょっとでお家帰るもんね。結構大変な日だったね。ゆっくり休みたいよね。
おじさん休むところないけどね。
不安になりながらも、エステルちゃんとアリスちゃんの手をつなぎ、街の入口へと入っていく。