6 ツンツン娘と街へ①
「ちわっス! 気が付いたみたいっスね、いやぁ良かった良かった~」
軽い感じの女の子が、そう言いながらこちらに近づいてくる。
こいつぁ……、いや確かに剣と魔法の世界で異世界だから、もしかしたらと思ってたけど、近くで本物見るとやっぱり……すげぇな。
なんたって目の前にいる子、ケモミミっ子なんだもん。なんかすごいフワフワしてるし、ピョコピョコ動いてるし、俺の心鷲掴みだし。
ぼけぇ~っと見ていたら、なんか良い笑顔を向けて来た。やばいやばい! なんかドキドキしちゃう! いやでもリーゼちゃんも可愛いし! 大丈夫だよ!
いまいちなにが大丈夫なのか分からないが、とっとりあえず、挨拶だ!
「こっこにゃ……こんにちは、俺はアキラ・クラモトでっです、助けていただきありがとうございやす」
もうなんか吃るし、ございやすってなんだよ! 初対面が大事なのにやっちまったよ……。
不審者な感じだけど、見た目が女の子だからある意味助かってるな、おじさんのままだったら完全に事案だよん……。
「へぇ~珍しい名前っスね、自分はカティア・ヴィラっス、不束者ですが、よろしくっス! ちなみにこっちでムスってしてる金髪チビっ子は、エステルっていうんスよ。ほらちゃんと自分で挨拶しなよ~んエステル~」
カティアちゃんかぁ~、ケモミミがインパクト強すぎてあれだけど、この子もやっぱり上玉ですね。オレンジ色のくせっ毛のボブカット、そしてグリーンの瞳、あれだね、グリーンの瞳ってやっぱ綺麗なんだね。おっと、そういえば隣に居るアリスちゃんよりちょっと背の大きい金髪の子にも挨拶しないと。
カティアちゃんの隣に居る少女に目をやる。
たしかエステルちゃんだったけかな? こんなアリスちゃんと変わらないくらいなのに冒険者とかしてるんだ、すごいなぁ~えらいなぁ~。ん? なんかエステルちゃん目がキツクなってますよ、どうした? 不審者ってバレたか?
「ちょっ、カティア! 誰がチビッ子ですって!」
ああ、小さい事気にしてたのね、大丈夫だよ、これからどんどん大きくなって行くから。
そう思いながら、エステルちゃんの頭を撫でる。
よしよし、アリスちゃんと多分年頃変わらないし、撫でとけば落ち着くっしょ。
まさかこの行動でどえらい事になるとは思ってもいませんでした、ほんと調子乗ってすいませんでした。
「なっ――、……ぐぅぅぅぅ」
おんや? エステルちゃんどんどん真っ赤になっていきますね、照れちゃってるのかな?
パンッ! 軽快な音と共にハジかれる俺の手。
唖然とする俺。
「気安く触るんじゃないわよ! あなたアキラって言ったわね、私は十五歳でちゃんと成人もしてるんだからねっ! 子ども扱いしないで!」
あちゃー、十五歳だったかぁ、ちょっと発育が遅いのかな? てか十五歳で成人なんだ、やっぱりし知らない事が多いなぁ。まぁでも、そんな事より……、こんな可愛らしい子に手をはじかれただけで、俺の心へのダメージがこんなにもあるとは……。うぐぐぐ……、可愛がってた姪っ子に嫌われたみたいで、思ったよりキツイよ! おじさんのハートは繊細なんだよ!
ものすごくショボーンとしていると、クラウス君が間に入ってくれた、やっぱイケメンは違うよね、悔しい。
「まぁまぁエステル、アキラさんも悪気があったわけじゃないんだから、ね?」
ニコッっとナイスなイケメンスマイルにより、エステルちゃんも多少落ち着いたようだ。
イケメンマジ有能。
まじでありがたい、クラウス君ほんとにイケメンだな、性格も良いしかっこいいし、おじさんも惚れちゃいそうだよ!
「ありがとうね! クラウス君!」
少し、いやかなりテンパってた俺は、そのままクラウス君に感謝の気持ちを込めて、ガバッっとハグしてしまった。
「あ……い、いえ大丈夫ですよ!」
おっと? どうしたんだい? 顔が赤くなっておるじゃないか、あ……そいえば今おじさんじゃなくて可愛い女の子だったんだよな……、そっそろそろ慣れとかないと色々とあぶないな……。
貞操観念的な意味で。
「あなた何してんのよ! ちょっと離れなさい!」
そう思ってたら急に、エステルちゃんがハグしてる間に割って入って引き離す。
エステルちゃんもハグして欲しかったのかな? まぁそんなわけないよね。
「急に現れて、クラウスとハッハグなんてして! どどっどうゆうつもりなの!」
どうと申されましても、感謝の気持ちをですね、伝えたかっただけなんだよ? ちょっと普段しない行動だったけど、外国だと普通じゃないの? 異世界はまた違うの?
もしやエステルちゃん、クラウス君の事が……。
はは~ん、なるほどねぇ~、そりゃ急に現れた可愛い子(中身おじさん)が、好きな人と抱き合ってたらそりゃいやですよねぇ~、なんだ可愛いとこあるじゃない。でもこうなると、無性に意地悪したくなるな。なんかそんなキャラだもんエステルちゃん、イジリがいがあるもん。
さっき手をはたかれたお返しとばかりに、クラウス君の腕にひっつく。
「どうもこうもクラウス君とワタシは、こうゆう関係ですよ?」
ギュッとひっつき恋人つなぎをかましてみる。あれね、ラブラブな手のつなぎ方ね、羨ましいやつね。
おっ? みるみるうちに顔が真っ赤になってますね、まぁなんかクラウス君もまんざらでもなさそうだし、さっきよりも顔赤いし、なんだこのイケメン意外と女慣れしてないのか?
「……ぅぶょ…」
ん? なんだって?
手がプルプル震えるエステルちゃんがなんか言ってますね、なんでしょうね?
「しょ……勝負よ……、ロッソ家として、私エステル・ロッソはあなたに決闘を挑むわ! アキラ・クラモト!」
指をビシッと俺に向けて来た。
あれかな? オハジキとかあやとり、とかかな? なんか決闘らしいし、腕相撲かな?
おおぉい!? あれか結構ガチな奴なんじゃねぇのこれ! なんか貴族とか王様とか居るって聞いてたし、エステルちゃん貴族なの!? ロッソ家とか言ってましたよね? ちょっと調子に乗ったらこれだよもう! やんなっちゃうよ!
「ちょっとエステル落ち着いて! アキラさんだって冗談でやってるんだから!」
そうだそうだ! 言ってやれイケメン、お前が一番だよってくらい言ってやれ、慣れてんだろそうゆうの、イケメンだし! モテモテなんだろ!
「クラウスは黙ってて! これは私とアキラとの勝負なのよ! それにクラウスも言ってたじゃない、シルヴァーハウンドを一撃で倒す人が、どんな戦い方なのかを」
クラウス君は一生懸命落ち着かせようとしていたが、どんどんヒートアップするエステルちゃん。
シルヴァーハウンドって、あの犬の事かな? でもなんか一撃だったし、そんな強いやつじゃないんじゃないの?
「確かにそう言ったけど、アキラさんは冒険者じゃないんだよ、服装も普通の人と変わらないし」
まぁ確かに不審者であって冒険者ではないですね。しかし服装かぁ、コンビニに行った時のまんまだな。靴とジーパンに、緑色したチェックのYシャツ、こっちでも受け入れられる服装で良かったぁ。
そうこうしているうちに、アリスちゃんがキャーキャー黄色い悲鳴をあげていた。
「すごいすごい! おとぎ話みたい! アキラおねえちゃんがんばって!」
おう、アリスちゃん俺にも出来る事、出来ねぇことがあるんだよ? 決闘て剣とかで戦う奴でしょ? 俺剣とか使った事ないよ? 怪我しちゃうよ? 保険とかあるのこの世界?
周りを見てみると、リーゼちゃんは顔を赤くしながらあわあわしてるし、カティアちゃんは面白い事が始まるって感じでワクワクしてるよ、ニック君とフェリド君はなんか困った顔しとるし。あれかい? 逃げられない奴かい?
「まぁまぁ! お二人さん! ここは私に任せるっス!」
おっと~ケモミミカティアちゃんが乱入してきたぞ! 絶対この子面白がってるよ! 悪い笑顔だよ!
そしてこの後、俺が冒険者ではないため、それに見合った勝負をする事になった。
この世界って保険とかないよね?