4 ここ異世界だわ①
少女二人から色々とお話を聞いてみたところ、どうやらここは俺の知っている世界ではないですね。今俺が居る場所は、アエスタース国のラクスって街の近くらしい。他にも三つの国があり、それらをまとめているのが首都ルクス。
大陸が一つの国家で、他のところは州みたいな感じなのかな? 法律は一緒らしい。ほんとあれよね、まいっちょうよね。気づけば知らない土地、そして性別は変わっているし、おまけに魔法もありますと。
俺は今の自分の状況を整理しはじめた。
うんうん、ここは異世界ってやつだね。もうこりゃあれだね、簡単に帰れないよね。だってどうやってきたかも分からないし。若干もう色々と諦めがついてきたところで、まず問題はあれだよな。知り合いが居ないのも心細いけど、金も住む場所もないけど……。
俺は不安を感じつつも、自分の体に起きている大きな問題に目をやる。
そんな事より性別変わっちゃてる事だよ! どうすりゃいいのよ! いやだってほら色々問題あるでしょ? なんか主にトイレとかトイレ。男の時だったらそりゃちょっと失敬で、遠く離れてすればいいけど、女子ってどうすりゃいいのよ! 座ればいいのか!? とりあえず座ればいいのか!?
今の状況は危険だと感じ嫌な汗をかき始めた。
まぁなんでこんな焦ってるのか、あれだよね……トイレ行きたいからなんだけどね。やっぱ大自然の中でがんばるしかないのかな? 初挑戦が野外とかハードル高すぎだろ!
そんなこんなでアワアワしていると、リーゼちゃんが声をかけてくれた。
「どうしました? 気分でも悪いんですか?」
気分が悪いというか、頭が悪いというか、なんというか。ええい! 漏らすわけにはいかん! 尊厳がかかっているんだ!ここは、恥を忍んで聞くべきだな、どうしたらいいのかを。
「あの……、いやその……、トットイレに行きたいんですが、どうしたらいいですか?」
いやもうさ、もうちょっと言い方あったでしょ。どうしらいいですかって、そんなの知らねぇよってなるよ。
そんなちょっと残念な感じな人に、救いの手を差し伸べたのアリスちゃんだった。
「はーい! アリスがアキラおねえちゃんにトイレ作ってあげるね!」
元気良く手をあげて、そう言ってくれた。
でも作るってどうゆう事ですかね? なんか石とか葉っぱ集めてくれるんですかね?
そんな不安を抱えつつ、アリスちゃんの後についていくと、結構大きな木の前までやってきた。
お嬢さん……ここでぶっ放せともうしておるんですか? リーゼちゃんからちょっと見えてますけど? そうゆうプレイなんですか?
急にアリスちゃんが木に黒い石で模様を書き出している、なんか魔法陣?っぽいやつかな?
「エイッ!」
そう声を出すと、書かれていた模様が光り輝き、ドアのようなものが出来上がった。
え? ちょっと何これ? 魔法なの? 魔法ってそんな掛け声一つで出来ちゃうの? 「エイッ!」でいいの?
はいっどーぞ、と言わんばかりにドアを開けてくれる。
恐る恐る中を確認すると。
便器があるじゃない、しかも洋式。
よく見ると座るところの横に紙のような物が置いてある。トイレットペーパーみたいに丸まってるやつではなかったが、拭くには丁度よさそうだ。
す……すげぇよ、魔法すごすぎだよ!
アリスちゃんに感謝しつつ、初陣をなんとか突破出来ました。尊厳も守られました、本当にアリスちゃんありがとうございます。
マイサンは……行方不明でした。とっとりあえず、今後トイレの心配はなくなったとして、どう生活していくかな?
用も終わり戻っていくと、アリスちゃんが桶に水を入れて待っていてくれた。
「おねえちゃん! はいっどーぞ、こっちの布で手を拭いてね」
あら本当に良く出来た子。
桶を受け取り布を水で絞り、いい感じになったところで手を拭いて、そしてそのまま顔も拭く。
やっぱあれだよね、おしぼりみたいなのあると顔拭いちゃうよね?
色々と出たであろう汗をふきつつスッキリしている時だった。
フサッ……。
ん? こんなに髪長かったけ? おやおや? 今まで焦っていたから気づいてなかったけど、随分と髪が伸びているな、しかもこれ黒髪じゃないぞ?
不思議に思っていると、リーゼちゃんがすっとこちらに寄ってきて、鉄の棒を渡してきた。
「えっと? これはなんですか?」
「これは魔道具の水鏡ですよ? あれ? アキラさんの国では、このような道具はないんですか?」
おっと? 唐突に凄いもの出してきちゃったけど、そりゃあんた鏡ならあるけど、水鏡って、てか魔道具ってどうなってんの?
困っている俺に説明してくれるリーゼちゃん、やっぱこの子も良い子だな。
「これは水が有れば鏡のようになってくれる魔道具ですよ。マナが少ない子供達でも使えますし、水魔法が苦手な方でも、水が有ればいいですからね。 女性に人気なアイテムなんですよ」
よくよく聞いてみると、鏡事態はあるにはあるらしいが、材料が高くて庶民向けでは無いとの事、そして大きい鏡などは王族や貴族の人々が使っているらしい。
へぇー貴族とか王族とかもいるんだな、やっぱ鏡って贅沢品なんだな。てか魔法すげぇな、いろいろ便利過ぎるだろ。なんか俺でも使えそうだし、やってみるか。
鉄の棒を受け取り、やり方の説明を聞いてみた。
まぁやり方って言ってもなんか持って、ボタンみたいなの押せばいいだけなんだけどね。
10センチくらいの棒を水につけて、ボタンを押してみる、すると光が少し出たと思ったら消えちゃった。
あれ? なんか失敗しちゃった?
「おかしいですね、少し貸してもらってもいいですか? えいっと、あれ? 出来ましたね?」
そこには綺麗な丸い手鏡が出来上がっていた。不思議そうな顔をしている俺にリーゼちゃんが、はいっと手鏡を渡してくれた。
なんかうまくできなかったけど、少し光ったって事は練習すれば出来るっしょ。
そう思いつつ、手鏡に自分を映す。
そこに映っていたのは、明らかにアジア人ではなく、西洋人の顔つきをした女の子だった。
おお……、性別変わったとしてもなんかこう、人種まで変わってるとは思わなかったよ、てかもう色々ありすぎてビックリできないよ。髪は銀髪かな? 目の色は水色か、顔は元の俺とは全然違うしな。
綺麗なロングヘアーに銀髪、目の色も綺麗な水色をしていて、元の俺の要素がまったくなくなっていたが、不思議と自分自身そこまで違和感はなかった。
おおう、随分と可愛くなってるけど、別にいやなわけでもないし、なんかちょっと懐かしい感じもするな。
すごいなこの髪、サラサラヘアーじゃん! シャンプーのCMみたいじゃん!
一人でキャッキャしていると、アリスちゃんが私も見たい~っと乱入してきた。
こんな小さくてもやっぱり乙女なのね、そう思っていると、気づいてしまった。
鏡に映る自分は、どう見てもかなり若い。
確か俺は三十路超えてたはずだよな? 明らかに映ってる子は、十五歳前後なんだよな。年も変わってしまったんだろうか。あっでも若返ったんだからいい事じゃん! 青春二週目じゃん!
アリスちゃんと一緒に鏡を見ていたら、リーゼちゃんが覗いてきた。
あれやっぱり女の子は鏡好きね、そう思って鏡に映るリーゼちゃんを見てみる。
ん? なんか付いてるな。
そう思い直接顔を見てみると、確かに耳の少し上に黒い尖った物があった。
「リーゼちゃん、耳の上になんか黒いの付いてるよ?」
そう言った瞬間、リーゼちゃんはビックリしたように耳の上の物を隠そうとした。
ん? なんかやっちまった? あれデリカシーない事言っちゃった?
「おねえちゃん? 何もついてないよ?」
アリスちゃんが俺に抱き着きながらそう言ってきた。
ここは俺も見なかった事にしておこう。
「そっそうだね、何にもなかったよ!」
少しテンパりつつそう言うと、リーゼちゃんは落ちついた様子で、大丈夫ですよと言ってくれた。
あぶねぇあぶねぇ。こんな可愛い子の地雷を踏むとこでしたよ、いやぁーアリスちゃんに感謝感謝。
俺が安堵していたら、アリスちゃんが何かに気づいて立ち上がった。
「みんな戻ってきたよ!」
ほうほう、さっき居た男の子かな? てかみんなって複数人いるって事か? どうしよう、どう接すればいいんだろ、おもに女子と。アリスちゃんは小さいからなんとかなるし、リーゼちゃんは勢いで大丈夫だったけど、他の人どうすりゃいいのよ!
あわあわしている俺の前に、戻ってきた人達が集まってくる。
こりゃピンチだな!