36 練習と少女達①
「よし! アキラそんな感じだ! 盾で受けるのは大事だが、体全体を使って受け流す事も覚えて行かないと駄目だぞ?」
ユセフさんは練習用の木刀を手に持ちながら話す。
俺はここ数日ユセフさんの元で、基礎的な物を教わっている。今は盾で防御について指導されているところだ。
うーん……頭では分かっちゃいるんだけど、おじさんビビリだから中々受け流すって事が難しいよ。反射的に受けきろうとしちゃうんだよねぇ、困ったもんだよ。リーゼちゃんのおっぱいチラ見しないようにするくらいおじさんには難しいよ……。
リーゼちゃんの事を思い出していると、不意にユセフさんが木刀を振りかぶり叩きつけてきた。
「うお! あぶねぇっ! ちょっとユセフさん危ないよ!」
急な攻撃だったが、なんとか反応して盾で受け止める。
「そう言われてもなぁ、アキラはなんだかんだちゃんと防御できるからな。反応が早くて良い事なんだが、戦闘はいつ終わるかも分からないしな。ダンジョンなんかは中で何日も過ごす事もあるんだよ、だから全部受け止めようとすると体力が減って、いざって時に使い物にならないと危ないだろ?」
ユセフさんは困ったように言ってくる。そう申されましても……。
腑に落ちない気もするが、確かに全部防御し続けるのは難しい。ニック君はあんな大きな盾でもしっかりと使い分けをしているらしく、おじさんは悔しいです。
ユセフさんのお家にある裏庭で訓練を続けていると、気づけばお昼になっていた。ユセフさんは休憩も大事という事で、今からお昼休みとご飯タイムだ。ユセフさんがお昼に誘ってくれたのでありがたく頂くことにする。
「これ……アキラおねえちゃんどうぞ……」
裏庭にあるテーブルに着くと、キアナちゃんが水で濡らしたタオルを渡してきた。タオルを受け取ると汗を拭きつつ、顔をタオルで拭いていく。
「ふうー。運動した後に冷たいタオルで体拭くのは最高だよ! ありがとうねキアナちゃん」
首にタオルを巻きながら、俺はキアナちゃんの頭を撫でている。キアナちゃんはモジモジしていたが、シッポはブンブン振られていた。
「キアナありがとうな。アキラはそんな見た目なのにおっさんくせぇよな」
ユセフさんはキアナちゃんから、タオルを受け取り体をふきながら言ってきた。
「えー? ちょっとユセフさん失礼だよ? 俺はこんなに可憐な乙女なのに」
俺はちょっとおどけたように顔に手をやり首をかしげる。俺の仕草を見たキアナちゃんが少し顔を赤くしている。
「お父さん……アキラおねえちゃんは……かっ可愛いんだよ!」
いつも物静かにしているキアナちゃんが唐突に大きな声をだしたので、俺とユセフさんは驚いていた。
おっおう、ありがとうねキアナちゃん。急に大きな声出したからおじさんビックリしたよ。でもねキアナちゃん、見た目は可憐な乙女だけど中身は残念なおじさんなんだよ?
「あらあら、キアナちゃんが大きな声出すなんて珍しいわねぇ。あなたまた何かしでかしたの?」
驚いていると、奥の部屋からユナさんがそう言いながら、食事を台車に乗せてやってきた。
ちょっと落ち込むユセフさん。そんなに気にしなくていいよと俺が伝えてもしょんぼりしていた。
ユナさんの後ろから、ミケとアリスちゃんもやってきた。二人に目をやると、ミケの服装がいつもと違っていた。
ミケは、巫女服のような服装をしていたが今は洋装だ。フリルの付いた白いYシャツに、足元の方にフリルが付いたロングスカートだ。淡いピンク色のスカート姿がとても愛らしく見える。俺がプレゼントしたリボンに鈴の付いたヘアピンもちゃんと着けていてくれた。
「ふふっ、どうかしらアキラさん。ミケちゃんとっても可愛くなったでしょ? あまりお洋服を持ってないってミケちゃんが言ってたから用意してみたのよね。あと、お金はユセフのお小遣いから出すから大丈夫よ」
ユセフさんってお小遣い制だったんだ……。ちょっとそんな悲しそうな顔でおじさんを見ないでよ……ユセフさん。おじさんは何もしてないよ! 無実だよ!
ユセフさんの目からはなんとも言えない感情が伝わってきた。お小遣いが減って悲しんでるユセフさんを気にせずユナさんは何かを取り出した。
「はい、ミケちゃん。このケープもミケちゃんに似合うと思うのよねぇ」
ユナさんは、前に白いお花のリボンが付いた、ブラウン色のケープを取り出し、ミケに羽織らせてあげた。
「わぁ! ユナさんありがとうっ。ミケはあまりこうゆう服もってなかったから、とってもうれしいのっ!」
ミケはピョンっと跳ねながらユナさんに抱き着いていた。抱き着かれたユナさんも嬉しそうに微笑むとミケの頭を撫でている。
「ミケちゃんに気に入ってもらえて……わたしも嬉しい……」
キアナちゃんがそう言うと、ミケはキアナちゃんにも抱き着きにいっていた。なぜかアリスちゃんも一緒に抱き着いていた。
洋装のミケも可愛らしくていいもんだねぇ……。ちっちゃいマントみたいなのも似合ってるしね。ケープ? だったけ、なんか綺麗な刺繍も施されてて、きっとお高いんでしょうね……。ユセフさん……なんかごめんね?
そんな仲良し三人娘を見ていると、ユナさんが呟く。
「やっぱり女の子はいいわねぇ。もう一人くらい女の子欲しくなってきちゃったわねぇ」
それを聞いたユセフさんの表情が明るくなった気がする。
ん? 家族計画のお話ですか? おじさんの前でそんな話すると、妄想が途絶えませんよ? お小遣い制でも……こんなゴックンボディな奥さん持ってるユセフさん。おじさんすごく羨ましいよ!
羨ましがっていると、その言葉を聞いたキアナちゃんがユナさんを見つめていた。
「わたしがおねえちゃん……?」
二人から抱き着かれながらそう言うキアナちゃん。それを聞いたユナさんが答える。
「キアナちゃんがお姉さんになるわねぇー。そうねぇ……お父さんが頑張ってくれたら、お姉さんになれるかもしれないわねぇ」
そう言いながらチラッとユセフさんを見るユナさん。
キアナちゃんはゆっくりとお父さんであるユセフさんの前に行く。
「お父さん……頑張って……」
「おう! キアナ任せろ!」
キアナちゃんに頑張ってと言われて元気になるユセフさん。ユセフさんも元気になったので、みんなでお昼にする。
「よっと、やっぱりユナの料理は最高だな。そうだアキラ、この後はどうすんだ? まぁそんなに続けてやっても疲れちまうからな、ほどほどでいいと思うぞ」
食事を終え、背筋を伸ばしながらそう言ってくるユセフさん。
「うーん、もうちょっとやりたいんだけど。ちょっと約束があるから今日はこのへんで」
ユセフさんに伝えると、また明日という事になった。その後は料理の片づけを手伝ってユセフさんのお家を後にする。
約束はエステルちゃん達にアクセサリーをプレゼントすること。待ち合わせをエミリーさんのお店にしていたので、ミケとアリスちゃんも連れて三人で向かっていく。
あんまりお高い物だとおじさんのお財布状況じゃきついよぉ……。




