3 気が付けば女子③
アリスちゃんに手を取られ食事の場所まで連れてきてもらった。
おおう……。なかなかアウトドアな感じだね、椅子が丸太だもんね。
とりあえず椅子に座り、せっせと準備を始める女子達を眺めていた。
なんか手伝いたいんだけど、俺が知ってるキャンプ道具じゃないんだよな。四角い黒い箱の上に鍋乗ってるしな、あれなのか? クッキングヒーター的な感じなのかな?
俺が物珍しく見ていると、アリスちゃんが元気よく料理を運んできてくれた。
まぁなんか可愛い子にお世話されるのも悪くないね! あんまり経験ないしね!
ん? これはシチュー的なものかな? まぁなんかアリスちゃんもおいしそうに食べてるし、大丈夫っしょ。おっ! これはなかなかイケますな!
俺がムシャムシャ食べていると、おっぱいちゃんがニコってしてきた。
やべぇよ、こんな可愛らしい子にニコってされちゃったよ。どうしよう、あとでお金とか請求されないよね?
「お口に合いますか?料理はそれなりに得意なのですが……、自信がその……あまりなくて」
ちょっと自信なく言う姿もなかなか庇護欲がそそられますな。隣にちょこんと座るアリスちゃんも、おいしよーってウキウキしながら食べている。
くっそ可愛いな。
そんなこんなで俺も感想を求められたので答える。
まぁめちゃくちゃ美味しいですけどね。
「はい、すごく美味しいですよ。えっと…」
あ、やべ名前聞いてねぇや、アリスちゃんは呼ばれてたから分かるけども。
「あっ、はい、すいません、自己紹介がまだでしたね。私は魔法使いのリーゼ・バウマンといいます、これでも回復魔法は得意なんですよ」
ペコッと頭を下げて自己紹介をしてくれた。
なるほどね、リーゼちゃんね。礼儀正しくておじさんの好感度もうなぎ上りだね。
「はいはーい! アリスは、アリス・ラクナーっていいます! アリスも魔法が少し使えます!」
隣で座っていたアリスちゃんが、ピョンピョンとジャンプしながらアピールしてくる。
うんうん、アリスちゃんも元気よく挨拶できて良い子だね。
よしよしと、頭を撫でてあげると少し照れている様子のアリスちゃん。
うん、可愛いね。アリスちゃんも魔法が得意いなんだね。
ん……? 魔法? MAHOU? あれかな? この子達は手品が得意なのかな?
悩んでる俺の横でアリスちゃんが、みてみてーと立ち上がりこちらにアピールしてくる。
おや? 手品でも見せてくれるのかな?
「火の精霊さん集まって! エイッ!」
アリスちゃんがエイッと、手の平を近くにあった岩石に向けると、そこから野球ボールくらいの火の玉が飛んで行った。岩石に当たると火の玉は、パンッと花火のように綺麗な光と共に飛び散る。
さ……最近の手品グッズは、すっすごいんだな。なんもないところから火の玉出して飛んでくんだもんな。
うん、これあれだよね、手品じゃないよね。MAHOUって奴だね、魔法。
…
……
………
うぉぉぉおい! 気づいたら知らねぇところな上に、女子になって、そこに魔法って! MAHOUって! どうおじさん処理したらいいんだよ! 情報おおすぎだよぉぉ!
俺が固まっていると、女子達がこちらを見ている。
お……おう、今度は俺の番ってことだな? でぇじょうぶだ、ま、魔法くらい……。
軽く処理容量をオーバーしつつ、なんとか女子達の期待に応えるために頑張る俺。頑張れ俺。
「えーっと、あ……アキラです、アキラ・クラモトです」
たぶんここ日本じゃないから名前が最初でいいよね? アリスちゃんもそうだったし。
「アキラおねえちゃん! 助けてくれてありがとう!」
俺が軽く狼狽えながら答えると、アリスちゃんが抱き着いてきた。
アリスちゃんのぬくもりを感じつつ、自分自身がとんでもないことになってきていると思い始めた。
「アキラさんですね、クラモト?あまり聞かないですね、ご出身はどちらなんですか?」
リーゼちゃんが聞いてきたけど、日本て分かるのかな? てかここ地球なの? 魔法とか俺見たことないよ? とっとりあえず聞いてみよう! もしかしたら外国かもしれないし!
「えっと、に……日本って所です、ここ……もそうですよね?」
不安になりながらも、期待を胸に聞いてみる、聞くのはタダだしね。
「ニホン? すみません、聞いたことがない所ですね。 アエスタースから遠いのですか?」
はいはい、ここはアエスタース? ってところで日本は知らないと。ふむふむ、俺はアエスタースって国は聞いたことがありませんね。おおっと、これ多分日本じゃないっすね。言葉通じるから日本かなって思ったけど、俺の知ってる限り魔法とかないしね!
色々な考えが頭の中を巡っていく。
いやてか、そもそもここって地球なのか? 魔法なんておとぎ話とかゲームとかだぞ?知らないうちに神隠しにでもあったのかな? いや確かにそんな伝承あった気がするけど、ちょっと唐突すぎないかしら?
考え込んでると、アリスちゃんが目をキラキラさせながらこちらを見ている。
ん? どうした? 珍しいものでも見つけたのかい?
「アキラおねえちゃん外国から来たんだ! すごいね! どんな場所なの!」
外国から来たってだけで、こんなに喜んじゃうなんて可愛い子ね。うん、まぁこっちもいろいろ聞きたいし、飯食いながら聞いてみよう。
そう思いながら話を続けた。
…
……
………