28 伝えるのは大事。
「ほらほらっ、エステルちゃんもそんなに怒っちゃだめだよ?」
左腕に抱き着きながらそう言うミケ。色々とふわふわで気持ちいいです。
「ふん! アキラは本当に……見境ないんだから!」
右腕にエステルちゃんが抱き着いていた。怒ってるけどギュって凄くしてくれて嬉しいです。
「手は出してないと……思うよ? ちょっと色々と大変だったじゃん……ね?」
歩き難いが二人とも離れる気配がないのでそのまま歩く。そして言い訳をするおじさん。
フェリド君が元に戻ったのは良かったが、記憶が欠落しており。ここ数日の記憶が曖昧だった。
そんなフェリド君はシュルツさんにおんぶされて居る。隣ではエミリーさんが変わってほしいとうるさかったがフェリド君が断っていた。流石に恥ずかしいのだろう。
あの後事情を聞くにも記憶がない事と、フェリド君自身が動けないくらい消耗していたので。街へ戻ることにした。
街に着くと簡易テントが数個立てられており、街を警備してる人達の為に休憩場所にしているようだった。それの一つを借りてフェリド君を休ませた。
「兄さん……それに皆さん……。ご迷惑をおかけしました……」
フェリド君はシュンとしながら謝る。
「まぁしかし……フェリドの記憶がないとはな……。いったいどうなってんだ? あとそれに……こいつは?」
そう言いながら簡易ベッドで横になっているフェリド君を見た後。そばに居る真っ白なゴーレムに目をやるシュルツさん。
「この子はニルって名付けたんだ。僕の記憶ではここまで真っ白じゃなかったよ兄さん……。それに……壊れていたから直そうと思ってたのに……」
ニルと呼ばれた真っ白なゴーレムは、必死にフェリド君を守ろうとした真っ黒なゴーレムが白くなったものだった。
フェリド君から黒い液体が飛び出した後、ニルも何故だか分からないが黒い色がなくなり真っ白になっていた。
「でもぉ、ニルちゃんは良い子だよ? ずっと近くでフェリド君の事見守ってるし……」
そう言ってエミリーさんはフェリド君に抱き着いた。
「まぁなんか悪い奴じゃないんだろうが……うーん……どうしたもんかね?」
「そやつなら大丈夫じゃ。フェリドの事を主人として見ているようじゃからな」
シュルツさんが頭を抱えていると、ジョイスさん達がテントにやってきて伝える。
ジョイスさんが言うには本来ゴーレムの主人はダンジョンだと思われていたが、国とギルドの調査で人に従う事を前提に作られている事が分かったそうだ。ただし、その方法はまだよく分からないとのこと。
フェリド君……なんか凄い物拾って来たんだね。でもそんな事より……今のうちに謝っておこう……。
俺はフェリド君とエミリーさんの前に立つ。そして……。
「すいませんでしたぁあああ! あれしかないかなって? 思ってやったんですが……。本当にすいませんでした!」
おじさんは本気で土下座をかます。見た目は可憐な女子の土下座は中々ひどかった。
「どどどうしたんですか? アキラさんは僕の事助けてくれたって聞いてますが……?」
オロオロしながらフェリド君はそう言ってくる。
いやね……おじさん君の思い人にかましちゃってるわけだから……。そりゃちょっと心ぐるしいというかなんというか……。
フェリド君に抱き着いているエミリーさんが笑顔で言ってくる。
「アキラちゃん……だいじょうぶっ! わたしお酒で酔っぱらっちゃうとぉ~良くちゅーしちゃってたからぁ……。ここにいる女の子はみんなしたよぉ!」
だからだいじょうぶっ! そう言ってフェリド君にスリスリしてる。
え? みんなって……。てかエミリーさんお酒飲むとチューしちゃう子なんだね……。ぜひ今度おじさんと一緒に飲みましょう! またお願いします! おじさん今は可憐な女の子なもので!
そんな少し混乱した会話の中にシュルツさんも入ってきた。
「ああーフェリド……? そのな……なんか俺のせいで色々と悩ませちまってすまん!」
頭を下げるシュルツさん。色々と思うところがあるのだろう。主に恋愛的な事だが。
街に戻っている時の事を思い出す。フェリド君がどうしてあんな事に巻き込まれたのかみんなで話していると。
「もう! シュルツくんがぁハッキリしないからだよぉ! わたしはぁ……ゆっくり待ってるだけだもん……」
恥ずかしいのかちょっと頬が赤くなるエミリーさん。その横でジト目で見つめるシュルツさん。
「うるせえよ……んなこと言われなくてもわかってるよ……」
そう言うと肩を丸めながらシュルツさんは歩いていたのを思い出す。
うーん? 二人とも好き合ってるんじゃないの? なんか他に相手いるんですかね? ラブなの? ねぇラブラブなの?
俺は土下座をやめて立つと、ユセフさんがずいずいっと出て来た。そしてシュルツさんの背中を結構な力で叩いた。
「おるぁ! シュルツ! 男ならハッキリ言えや! もう見てるこっちがイライラすんだよ」
ニヤニヤしながらユセフさんは喋る。そしてシュルツさんは肩をすくめる。戦ってる時はあんなに頼もしいのにこの人普段駄目なんだなほんと……。
分かったよっ! そう言って覚悟を決めたのか、動き出すシュルツさん。そして……。
「いきなりこんな事言われて困るかも知れんが……。俺は……お前が好きだっ!」
みんなの前で告白をかますシュルツさん。相手の女性が反応する。
「え? え? ちょっと……シュルツなにいってんのよ!」
そこには褐色の肌に金髪が良く似合う小柄な、ハンナちゃんが居た。そしてお顔は真っ赤だった。
あんた……そうゆう趣味だったんか……。ギルマスただの脳筋じゃなかったんだね……ヘンタ……仲間だったんだね。いろいろ残念な見た目可憐な女子( おじさん)は紳士だからね!
「急に変に思うかも知れないが……小さい時から俺の為に色々とやってくれるハンナを見てたらな……。そのな……好きになっちまったんだよ……。悪いか!?」
シュルツさんが照れている。やっぱり恥ずかしいよね。でもね……見てるこっちもなかなか恥ずかしいよ?
ハンナちゃんは顔を赤くしながらシュルツさんを見つめた後に……。
「あたしだってっ……その……シュルツの事好きだよ? でも……シュルツはエミリーが好きだってずっと思ってたから……」
シュルツさんに思いを伝えているハンナちゃん。目には涙を浮かべながら。
そっかぁ……ハンナちゃん嬉しかったんだねぇ。おじさんもなんだか見てると心が温かくなるよ!
そしてシュルツさんはハンナちゃんに歩み寄り、抱きしめた。
「その……なかなか踏ん切りがつかなくてすまなかった……絶対大事にするからな!」
周りのみんなはキャーキャー言っている。主にアリスちゃん姉妹だが。
それを見ていたフェリド君も驚いている。少し考えた後に……。
「エミリーさん……ぼっぼくは……エミリーさんが好きなんです!」
エミリーさんの手を握りながらフェリド君は伝えた。
ぽろぽろ涙を流すエミリーさん。そして思いっきりフェリド君に抱き着く。
「ありがとうっ! わたしもフェリド君の事……ずぅぅぅぅっと好きだったの! フェリド君のことぉ……大事にするからねぇ!」
フェリド君はエミリーさんの大きな胸に抱かれて顔を赤くしていた。変わってほしいと思うおじさんだった。
なんかいろいろあったけど……カップルが急に二組ほど誕生しました。すごく……羨ましいです……。
ジョイスさんとアルベルトさんはそんな孫娘を見つめながら、ちょっと泣いていた。
なんか頷きあってるな……。ジョイスさんはともかく……アルベルトさんも孫馬鹿なのかな……?
テントの中は、すごく幸せな空気に包まれる。それを見たユセフさんが叫ぶ。
「今日はめでてぇな! 色々あったがうまくいったしな……これはあれだな。今日は酒盛りだな! おい、シュルツ! ギルドで飲むぞぉー!」
おっいいね! おじさんも久しぶりにのんじゃおっかな!
なんか色々幸せ見てたらおじさん寂しくなってきちゃったしね……。
ううぅ……羨ましいよぉぉ……。




