26 少年の罪?③
「先生が居てくれて、だいぶ助かりましたよ。俺だけじゃあの数は相手できませんからね……」
シュルツさんは少し悔しそうだ。
「あの程度のゴーレムなら、お主でも十分じゃろうて。しかしのう……ゴーレムが逃げて行くとはな」
ジョイスさんの言葉に周りのみんなも困惑している。ゴーレムがそもそもおじさん知らないよ……。
俺は近くに居たリーゼちゃん達にゴーレムについて聞いてみた。
「そうですねぇ……。そもそもゴーレムはダンジョンなどで見かけるものですからね……。こうやって街を襲ったりとかは、ほとんど聞きませんし……。なによりゴーレムは、標的を見つけたら見失うまで追い続けるはずなんですよ」
なるほどね。ダンジョンの侵入者に反応して動くガードマンみたいものなのか。でもさっきの奴らは途中で逃げたしな……。
悩んでる俺の横にミケが寄り添ってくる。シッポふわふわで気持ちいいな。
シッポに魅了されていると、ミケが話し始めた。
「アキラ君。さっきのゴーレムの子達ね、人の意思で動いてたよ? あの子達の精神的な繋がりがね……ミケには感じられたの」
まぁ確かに、ゴーレムだから操作してる人は居そうだけど。この街襲わせてどうするんだろうね? そんな殺伐とした世界には見えないんだけどな……。
俺はいまいち分からなかったが。それを聞いたジョイスさんが険しい顔になって行く。
「やはりそうじゃったか……。ミケさんが言うんじゃから間違いないじゃろう……。しかし、人の意思で動くゴーレムとはのう……これはまずいのう……」
ミケってやっぱすごいのかな? 幻獣さまらしいしな……。
困惑気味な俺を見たリーゼちゃんが説明してくれた。
ダンジョン内に居るゴーレムは、誰の命令を受ける事なく動いているのが当たり前らしい。そしてゴーレムを操る技術は、まだ実用レベルではないとのこと。それが、先ほど人の意思で動くゴーレムが現れた可能性があり、しかもあの量となると……そりゃ危険か。しかも街襲ってきてるしな。
みんな不安な顔をしていると、シュルツさんが手を一度叩き話し始める。
「みんなが不安になるのは分かる……。しかし、またゴーレムが襲ってくるかもわからん。今のうちに体制を整えたいと思う。午後になれば補給物資運搬の奴らも帰ってくるだろうからな。もう少し手を貸してくれ……」
そう言われみんな不安だったが、動き始める。そのまま警戒を緩めく事なく時間が過ぎて行った。
午後になると、国の兵士達と冒険者達が街に戻ってきたようだ。途中ゴーレムには襲われていないとの事だ。
シュルツさんは事情を説明して、人員を割り当てる。それが終わり、街の入り口で森を警戒していた俺達の所にやってきた。
「みんなありがとな。とりあえずは、戻って来た奴らが居れば街の防衛は大丈夫だろう……俺はこれからフェリドを探しに行ってくるわ。あいつ体力ねぇけど、頭は良いからな……うまく逃げてるだろうしな!」
明るく振る舞っているがシュルツさんも心配なのだろう。でもまぁ……一人じゃなぁ……。
シュルツさんが告げるとクラウス君が立ち上がった。
「シュルツさん……。さっきみんなで話したんですが、僕達のPTもシュルツさんと一緒にフェリド君を探しに行きたいと思います。あのゴーレムなら僕達でも相手が出来ますし、なにより人数が多いほうが見つけやすいと思うんで」
クラウス君達も同行するようだ。それを聞いたエミリーさんも一緒に行くと聞かない。
じゃぁおじさんも行こうかなぁ……。人探しは多いほうが見つけやすそうだしね。遭難しないようにしよう。
そう思い俺も行くと伝えると、ミケとアリスちゃんも行くと言い出した。アリスちゃんは流石にあぶないんじゃないの?
ジョイスさんが心配そうにしていると、アリスちゃんはジョイスさんの前に行き。行ってもいいか聞いている。アリスちゃんは真剣な表情だった。
孫娘の意思に負けたのか、ため息をついた後に許可を出してくれた。ただし絶対無理はしないようにとのお達しだ。
ジョイスさんは街に残り警備してくれるとのこと。ジョイスさん達が居れば街は大丈夫だろう。
少し準備をした後。フェリド君を探すために森の中へみんなで入っていった。
俺はシュルツさん達と一緒に行動している。クラウス君のPTが離れた所に見えていた。
あまり遠くに行き過ぎるのもあれだしな。まぁこっちにはギルマスのシュルツさんいるしね、大丈夫でしょ。
森に入って探して回るが、フェリド君は見つけられなかった。一旦二手に分かれた後にまた合流したが、やはりフェリド君の痕跡はなかったようだ。
次はどの方向を探そうかと思っていたら、カティアちゃんが近くに木から飛び降りて来た。
「カティアちゃんどう? 何か見つかりそう?」
そう聞く俺にカティアちゃんは申し訳なさそうに答える。
「なかなか難しいっスね……。今朝森を散歩してた時は、近くで声が聞こえたから分かったんスけど……。今はなんだか森が騒がしくて分かりにくいっス……。申し訳ないっス……」
いやいや、カティアちゃんは頑張ってるよ? おじさん見てたよ? 一生懸命ジャンプして高いところから探してたもんね。
なかなか手がかりが見つからない中、ミケがどうやら何か見つけたらしい。
「アキラ君……何かあっちの方から良くない気配を感じるよ……。危ないかも知れないから、アリスちゃんはミケの手を放しちゃだめだよ?」
そう言いながらミケの言っていた方向に向かう。少し歩くと何かが歩いて行ったあとが残っていた。この方向にゴーレムが向かっているらしい。
警戒しながら進んで行くと、森の中に小さな広場を見つけた。
「ゴーレムが集まってるっスね……。あれ……? あれフェリド君じゃないっスか?」
カティアちゃんが言った先には、先ほど逃げて行ったゴーレムらしき物達がおり。その真ん中で黒い石板の前に座る少年が見えた。
シュルツさんが飛び出し、少年の近くに居たゴーレム達を薙ぎ払う。
「フェリド大丈夫か! 怪我はしてないか!? フェリドお前……どうしたんだ?」
あまりにも早い動きだったので俺達は少し遅れて付いていった。そこに居たのはフェリド君だったが……少し様子がおかしい。
「あれ? シュルツ兄さんじゃないですか……随分遅かったですね。待ちくたびれちゃいましたよ……。それに……エミリーさんも来てくれたんだ……僕嬉しいなぁ……」
静かに立ち上がりこちらを振り返るフェリド君。俺達が知っているフェリド君とは明らかに変わっていた。
真っ黒な水晶が付いた杖を持ち、体中から黒い煙のような影が出ている。そして額には……イノシシと同じように黒い紋章が浮かび上がっていた。
これって結構やばいんじゃないの? 俺がそう思っているとシュルツさんが叫んでいた。
「お前……どうしちまったんだ! この森はゴーレムが出て危険な上に、街にも襲って来たんだ……。早く街に戻って先生に診てもらおう……大丈夫だ、きっとなんとか俺がする」
シュルツさんが真剣な表情でそう言っている。フェリド君は少し驚いていたが、そのあといつも通りなフェリド君の笑顔をしながら伝えて来た。
「どうしたもこうしたもないよ兄さん。いいでしょ? この杖……。凄く力が沸いてくるんだ……それにね……」
固まるシュルツさんをよそにフェリド君は続ける。
「街をゴーレムに襲わせたのは僕なんだよ兄さん……」
シュルツさん以外のみんなもそれを聞いて固まる。
すごいでしょ? あんなに沢山操れるんだよ。といつもの笑顔で言ってくるフェリド君。
おいおい……まじかよ。フェリド君どうしちまったんだ? いつも通りの笑顔だけど怖い事いってくるんだけど……。
おいおい冗談だろ……。そう言いながら近づこうとしたシュルツさんに、フェリド君を杖を振るう。
その瞬間フェリド君の周りから土のゴーレム達が出来上がっていった。
これは……今までの事はフェリド君が全部やったのか……どうなってんだ?
その状況を見ていたクラウス君達が武器に手をかける。フェリド君は楽しそうに笑っていた。
シュルツさんも険しい表情になり武器を構えた。
「フェリド……俺がお前を正気に戻してやる。俺はお前の……兄貴だからな……」
シュルツさんにそう言われたフェリド君はめんどくさそうに答える。
「兄さんは相変わらずうっとおしいね……。まぁ……せっかくだし遊ぼうか兄さん」
これはもう戦うしかないかな……? うーん……アリスちゃんはなんとか守らないとな……。おじさんこの状況だと役に立てる気がしないよ……。
役立たずなおじさんは、これから始まる戦闘に不安しかなかったのであった。




