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ダンジョンガイドさんの仮想現実生活ログ  作者: まいなす
『第1話 ダンジョンガイドさんは迷った』
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13


「いや、まあ。調子はどうかなと思って」


「愚問ね。ばっちりよ。あんな二人、瞬殺してあげるわ」


「……あのさ。一応、言っとくけどこれ。PKはなしだからな?」


「わかってるわよ。PKは趣味じゃないって言ってるでしょ。でもまあ、勢いでキルしちゃうかもね。うふふっ」


 ドS顔になって笑うシャノ。

 まあ、こいつはそんな悪いやつじゃないからPKすることもないとは思うけど。

 万に一つ、うっかりということもありうる。

 もしもの時は、彼女らの間に入って肉の壁かなんかにならねえとな。

 俺はやれやれと首を振って【ステータス・ドミネーション】をいつでも発動できるようにショートカットセットされていることを確認する。


「オレらも準備できた。始めようぜ」


 しばらくして、メイメイとルイルイが準備完了となる。

 メイメイはチューブトップ型アーマー、ショーパン、足甲ブーツに加え、両手に銀色を基調として赤い装飾が施された手甲を装備している。ルイルイは童貞を殺す服に白ケープに加え、手には身の丈ある白い大錫杖を持っていた。それらの装備は、今まで彼女らが集めてきた素材で彼女ら自身が製造した装備である。レア度は中の下くらいだ。


 ちなみに、シャノの方はランクA相当のスキルで生成した漆黒魔法鎧、さらに魔法文様が燐光しているハルバードはネームド装備で、レア度は上の中くらい。まあ、装備の質で勝敗が決まるわけではないが、それが勝敗を分かつ一つの重要な決定要素になっていることには違いない。


 やはり、メイメイとルイルイには分が悪いかもしれない。普通にやったら九割がた一瞬で負けてしまうだろう。そう。普通にやったら、な。


 俺の視線に気づいたメイメイが、小さくこくんと頷いた。


「えー、こほん。今回はメイメイとルイルイがタッグを組んで、ゲストプレイヤーである暗黒騎士シャノに挑戦する二対一形式。ルールはうちのギルドの喧嘩用ルールを採用するぞ。シャノのために説明しとくと、アイテム使用なし。スキル制限なし。互いに赤ゲージまで体力が減ったらその時点で即刻試合終了。ただし二人いるメイメイとルイルイは両方アウトで試合終了とする。いいか。PKは絶対になしだ。なしだぞ。とくにそこのハルバード娘」


「わかってるわよ? ええ、わかってますとも。うふふふふ」


「…………。まあいい。フィールドはこの裏庭の中だったらどこでもいいけど、ミューさんの自家菜園には損害を与えるなよ。あと、俺とビブリオくんのはちみつ採取場にも近づくな。さて、解説実況および審判はいつも通り俺が取り仕切らせてもらうぜ」


「ふふん。すぐに終わらせてあげるから、解説も実況も審判もいらないわ」


「……さいですか。んじゃま、両者向き合って。コインの代わりに今回は、そうだな。ここに落ちてた石ころを使う。いいか。俺がこの石ころを上に投げるから、『始め』と言ったらバトル開始な。おーけー?」


「ええ、いいわよ」


「こっちも。いつでもいいぜ」


「よし。んじゃ、投げるぞ」


 ひょい、と俺は手に持った石ころを高く放り投げる。それからすぐに『始め』と言った。


「えっ?」


 面食らったのはシャノの方。彼女は俺の放り投げた石ころを目で追ったまま固まっている。おおかた、俺が放り投げた石ころが地面に落ちてから戦闘開始だと勘違いしていたのだろう。でも残念。石ころは何の意味もないブラフ。それをシャノは勝手に自分の脳内で補完してしまった。確かに、PvPするときにコインとかを投げてそれが地面に落ちるのを開始合図にしてる西部劇に出てきそうな人、多いけどね。とくに、王都なんかの都会には。先入観って怖いねー。


「はあああああっ!」


 シャノとは違い、俺の『始め』という合図と同時に体術スキル【震脚】を使って駆けだしていたメイメイ。呆けているシャノの懐に難なく入りこむことに成功した彼女は、拳を振りかぶって体術スキル攻撃【爆裂破砕拳】を発動。彼女の手甲は火属性がエンチャントされて溶けた鉄のように赤くなった。


「くらえぇぇぇっ!」


 それは、メイメイの覚えている攻撃スキルの中で、一番攻撃力のあるものである。不意打ちでは自分が持っている最大火力をブッパするっていうのが鉄則だ。


「くっ」


 金属と金属がぶつかり合って甲高い音が響く。

 我に返ったシャノが慌ててメイメイの手甲をハルバードで受け止めたのだ。しかし、無理な体勢だったので、さすがに衝撃を逃がしきれない。シャノの身体がもちあがり、後方に吹き飛んだ。


「よっしゃぁ!」


 喜ぶメイメイ。しかしながら、爪が甘いぞ。シャノは自分から間合いをとるために、HPをあえて削りながらも、その場で踏ん張らずに吹き飛ばされることを選んだのだ。ここはすぐに追撃すべきだった。ガッツポーズするところじゃない。


 シャノはといえば、うまく地面を転がって受け身をとりつつ、すくっと立ち上がってハルバードを下段に構えなおしていた。場慣れしている。さっきの一瞬のうちの判断もそうだが、おそらく相当の数のPvPを経験してきてるに違いない。なので、もう不意打ちの目はないだろう。完全に寸分の隙も無い臨戦態勢。デフコン1である。


 あちゃー。初撃で相手の体勢を崩し、そのままインファイトでラッシュしまくってHP削りきっちまおう大作戦、あえなく失敗。


「あ、……し、しまったぁっ! がっでむっ!」


 隙のない構えをしているシャノを見て、ようやく先ほどのミスに気づいたメイメイは頭を抱えて絶叫する。そして彼女は申し訳なさそうな顔で俺のほうを見るのだ。

 あー、ダメだって。こっち見ちゃ。

 それじゃ、まるで俺がメイメイたちに、ちょっとした入れ知恵を吹き込んだみたいじゃん?


「ちょっとっ! あんたどういうことよっ!」


 メイメイの表情から何かに気づいたらしいシャノがこっちを睨んで叫ぶ。


「あー、あー。審判に抗議は認めませーん」


「くぅっ! 審判のくせして、ぜんぜん公平じゃないじゃないっ! あとでこれが終わったら、覚えときなさいよっ!」


 公平じゃない、か。

 それをいうならば、三桁近くレベル差があるPvP自体、公平ではない。

 それに、シャノよりもメイメイやルイルイのほうが付き合いがずっと長いしね。

 そっちに肩入れしちゃうのは当たり前ではないだろうか。


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